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猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

前書き欄によると、この本の「ネコノミクス」という題名は、著者が好きな猫とエコノミクス(経済学)を掛け合わせた造語です。筆者の猫組長(本名不詳)は元山口系2次団体幹部で、グレーゾーンのファインナンスや国際金融を得意とする経済ヤクザとして活動を行った経験がある人で、漫画家の西原さんとコラボし単行本化に至っています。内容として、全体的なイメージとしては、「裏社会の経済を知る本」と表すことが出来ます。

チャプターは7つに分割されています。第1章では、「暴力団と国際金融」では、銀行間における資金洗浄の過去とそれを防止するSWIFTというシステムの説明、ビットコインの秘匿性を利用した資金洗浄方法を記載しています。第二章では資金洗浄の実態を挙げています。通常は、電子マネー化された現金は金融機関や監視当局の管理下に置かれます。逆に匿名性の高い現金中心社会において、日本円はとりわけ信頼度が高く、国内利用するには資金洗浄の必要性が低くなりますが、アメリカはテロリストやマフィアの資金源を断つアンチマネーロンダリングの流れを汲み、日本にも波及し始めています。

 それに対抗出来る手段として外交官専門パスポートを利用したハンドキャリー手法を例示しています。また、ビットコインなどの仮想通貨を可能にしたブロックチェーンは「国家レベルの資金洗浄手段」とし、銀行を介さない取引システムを主張しており、流通する仮想通貨の90%は資金洗浄と犯罪ビジネスに使われていると主張しています。第三章では、「大物詐欺師たちの素顔」として、森友学園をめぐる国有地払い下げ問題、自身が経験した詐欺手段、世界の三大詐欺のネタとして、金(ゴールド)・石油・ダイヤモンドを挙げ、特に石油詐欺はナイジェリアの政府機関が絡んでいる例もあるとして悪質なものが多いことに触れ、事例を踏まえて紹介しています。

第4章では、「地下社会の愉快な面々」とし、ヤクザという組織は力がある構成員は、仮に自分が100%悪くても立場を一変させられる自信を持ち、現代における人のつながり「共有し合う」のが善とされる時代でも、体を張り合い、どこまでも自分本位に生きていくと体験談や歴史の観点も用いて説いています。第5章では、「麻薬ビジネスと国際マフィア」として、北朝鮮が国策として、覚せい剤ビジネスが国策として行っていること、暴力団全体の収益の内、覚せい剤が40%以上を占めていることを述べています。第6章では「人身売買と臓器移植ビジネス」として中国や南インドの実態を例示しています。籠に入っている鳥のように人間の子供がゲージの中に閉じ込められてオークションにかけられている光景を実際見ています。

需要が高いのは臓器移植用としての価値として高いのは健康体であるということです。性産業向けや労働力提供用で売られるケースもあり、それらのネットワークは欧米が主流と述べています。最後の7章では「暴力団とオイルマネー」として、日本の暴力団が2004年ごろ現物を求めて海外に進出している体験談と共に、個人ブローカーとしての取引について各国を回り学習したことを明かしています。

裏社会から教科書に載らない経済理論を知る

この本を読んで学んだことは、大前提として「表に出ない経済」を知ることが出来たことです。一般的に出回っている経済の教科書には、載らない経済と犯罪の密接な関係を元暴力団幹部の体験談を踏まえて書かれておりとてもリアリティがあります。資本主義の歴史は長く200年ですが、その現在文明における「お金」の存在がどれだけ大きいのかを実感させてくれます。国単位で考えてみると、経済力が大きい国が利権を第一に行動し、社会全体のシステムに影響を与えることが分かりました。

経済学では、市場に任せておけば需要と供給の関係によって価格は自然に調整されるという現象をアダムスミスは「国富論」で「神の見えざる手」と表現していますが、その理論では説明できない数々の事象を説明しているだけでなく、その手段も実にさまざまであることを教えてくれました。例えば、金(カネ)といっても形態によっては価値の格差が生じます。アメリカのドル、日本の円、ビットコインなどの仮想通貨、現物でキャピタルゲインが得られる(ゴールドや石油)などがありますが、現地の国に資金を移動するには正当性が必要になり、監視を受けることになります。資金洗浄(マネーロンダリング)についてはこの本から学びました。現在の送金システムの経緯を見ていけば、国が利権獲得の手段として設計しているという背景を知ることが出来ます。

裏ビジネスの世界では、詐欺は必要悪であるということも思い知らされました。現代においても振り込め詐欺が一向に減らない理由としては、大きな組織内での常套手段として利用されており、手っ取り早く金が手に入りやすいからに他ならないということが分かりました。さらにグローバル化により、送金手段や決算手段を日々進化していく中で、それらを利用した詐欺も生まれているのが実情であり、コンピューターとネットさえあれば簡単に接触する機会があります。詐欺の国際化とは日常的には考えない事象が頻繁に行われていることを読んでいて実感しました。

また、麻薬ビジネスは国絡みのものがあるというのが裏ビジネスの常識というもので、普段は麻薬=犯罪という図式で持っていれば逮捕という程度の知識しかない読者は、それが全て表向きであることを伝えてくれます。日本においては、覚せい剤が合法であった時期があり、昭和26年の「覚せい剤取り締まり規制法」により禁止されてからは、法の規制が緩いもしくは皆無な国に移動し製造販売を行っていて、そのブランドの一つとして北朝鮮がある点に関しては、歯に着せぬ事実であることを教えてくれました。そして一番印象深かったものは、「人身売買」です。

裏ビジネスではたとえ人であっても「家畜」のように扱われる国も今もなお存在することに衝撃を受けました。背景を辿ると、発展途上国や経済格差が大きい国が核であり、ドナー自身が金銭目的で臓器を提供する移植では違法というものの買い手との利害が一致し横行が絶えない実情を思い知らされました。


学校で教えてくれない経済の話であるため若い人におすすめ

この本は、分厚くも高価でもなく手軽に読めるコンパクトさがあります。なので、通勤通学時に持ち運んで読むことが出来ます。読むのをおすすめする人がいるとすれば、若年層の男性と女性です。理由としては、まず毎日のニュースに流れている情報は一般大衆向けのあくまで「常識」に沿った内容であるため、報道機関に都合の悪い情報を報道することはないと考えられます。言い換えると、偏向や偽善を簡単に細工して視聴者をコントロールできます。

それは学校で使用する教科書も同様です。犯罪組織の目的・つながり・事件・国との関わりを率先して教えないのは、教える側に得がないからです。それらの情報は自主的に探し出すしか方法はありません。

しかし、裏ビジネスの実態は基本的な経済や国の構図が理解できていれば、問題ありません。この本を読んで、今まで知らなかったことを知ったうえで世の中の見方が変わることは間違いないと思います。毎日触れることのない「裏」の事情を知るのは結果的に物事の本質を見極めるのに重要な役割を提供してくれます。

それにはいかに早く気付くかが重要になってきます。若い人ほど今後の社会に携わる期間が長いので、毎日当たり前だと思っている日常に疑問を持つこと、そして海外で行われている悲惨な現実を知ることがなによりも大切なことであると考えています。元暴力団幹部でなければ経験したことのないものを教えてくれる希少な本なので、おすすめします。

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猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言