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ビジネス関連書籍の紹介日記です

使える経済書100冊『資本論』から『ブラック・スワン』まで 池田信夫

エコノミストの池田信夫氏が書いたブックガイドです。ビジネスマン向けに、経済関連の良書が次々に紹介されていきます。取り上げられている本の数はおよそ100冊。サブタイトルに「『資本論』から『ブラックスワン』まで」とあるように、古典から現代のベストセラーにいたるまで幅広く紹介されています。

洋書が取り上げられている点もグッド。英語で読む経済書を探しているという人の需要にもこたえてくれます。2010年に発売された本なので少し古いですが、内容的には今でも通用します。ビジネスマンが経済関連の知識を増やしていくためのとっかかりとして、最適の本です。新書ということもあり値段も安く、コストパフォーマンスも最高だといえるでしょう。

 本書は全部で10章から成っています。1章は本の選び方や読み方のコツ、2章はリーマンショック時の金融危機、3章は市場メカニズム、4章はグローバル資本主義、5章はイノベーション、6章は日本型資本主義、7章は自由社会の秩序、8章は歴史、9章は経済学の教科書、10章は古典が、それぞれ大きなテーマとなっています。各章ごとにおよそ10冊の本が取り上げられ、1冊あたり2ページ弱の解説が行われていくというスタイルです。

面白そうな本を探すという目的のためにも役立つ本ですが、それだけでなく紹介されている本の要約書として読める点もポイント。実際にその本を読まなくても、本書を通読するだけでそれぞれの本の要点を掴めるようになっているわけです。

狭い意味での経済だけでなく、経済に関わるさまざまなテーマが扱われている点も本書の長所だといえるでしょう。たとえば4章では社会学者のマックス・ウェーバー関連の本やネグリとハートの大著『帝国』が紹介されますし、7章ではヘーゲルやフーコーといった哲学者関連の本も扱われます。さらに歴史を扱った8章では明治憲法や北一輝についての本まで紹介されていきます。

一方で現代の経済問題への切り込みも忘れ去られることはなく、タレブの『ブラックスワン』、アカロフとシラーの『アニマルスピリット』、スティグリッツの『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』など、数々のベストセラーが紹介されていきます。日本経済への分析もあり、野口悠紀雄の『資本開国論』や山岸俊男の『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』などの良書が取り扱われています。ここで行われた分析はいまだに古びておらず、日本の経済や社会が抱える病を理解する一助となります。またマンキューやマルキールといった経済学やファイナンスの定番書も紹介されており、読者にさまざまな入口を与えてくれます。本書で紹介された本を読んでいけば、相当な経済通、社会通になれることでしょう。

経済、社会、政治、歴史などの体系的知識を身につけられる

私の場合は、大学卒業後、もっと経済の知識をつけたいと思って経済関連の良書を探している時に、この本が多いに役立ちました。気になった本の書名をメモして、書店や図書館で探し、読んでいきました。紹介されている本の半分近くは読んだと思います。おかげで経済、社会、政治、歴史などの体系的知識が身につきました。それらの本もまた他の良書と有機的に結びついていますから、読みたい本はどんどん増えていきます。読了する本の数が増えるほど、読みたい本の数も増えるという循環に入っていくのです。

もっとも役に立ったのは経済学の教科書に関する部分。とくにマンキューの『入門経済学』とマルキールの『ウォール街のランダムウォーカー』を知ることができたのが大きかったと思います。前者はアメリカの経済学者マンキューが書いた定番教科書で、おそろしいまでのわかりやすさを誇る本です。後者は投資分野におけるバイブル的な存在で、こちらもかなり読みやすい本です。勉強をスタートさせた段階でこの2冊を読んだことで、その後の学習がかなり楽になりました。池田氏のブックガイドがなければ、これらの本に出会うのはもっと遅かった可能性が高いと思います。

日本経済に関するブックガイドも有益でした。著者の池田氏は主流派の経済学に近い考え方をするので、彼の推奨する本を読むとスタンダードな知識がたまっていきます。最初にスタンダードな知識を得たことはとてもよかったと思います。

また私は英語力を維持するためによく洋書を読むのですが、このブックガイドでは洋書も何冊か紹介されていて、その点でも助かりました。海外のベストセラーも多く取り扱われているので、それらの本もあえて洋書で読むということもしました。

本の選び方や読み方について書かれた第1章も有益でした。とくに「本は最初から最後までぜんぶ読む必要はない」というメッセージからは影響をうけたと思います。まずは目次や前書き、後書きから読んで本の構造を把握し、すでに知っている個所は飛ばして重要部分だけ読めばいいという指摘です。またつまらない本は途中で読むのをやめるべきであるという指摘もあります。せっかくお金を出して買ったのだから最後まで読まなくてはもったいないという考えは間違いであり、実際はつまらない本を読む時間のほうがもったいないのだと書かれています。私は妙に完璧主義なところがあり、本は最初から最後まで読まないと気がすまないタイプでした。全体を読んだ本じゃないと読了した本としてカウントするのがためらわれたり、つまらない本でも無理して最後まで読みとおそうとがんばったりしていました。
しかし今ではそのような完璧主義から脱却し、より効率的な読書ができるようになったと思います。半分くらい読んだ本であれば、迷わず読了した本としてカウントします。重要なのはその本からなにを読みとったのかということであり、全体を通読したという事実自体にこだわる必要はないわけです。

社会科学のブックガイドを探している方におすすめ


経済や社会科学の勉強を開始するにあたって、良質なブックガイドを探している人におすすめの本です。自分があまり知らない分野を勉強していくのは、最初はとても難しいものです。どこから手をつけていいのかわからないし、どの本が初心者向けなのかを見極めるのも容易ではありません。しかも最初に誤った知識をつけてしまうと、後からでは修正が効きにくく苦労する場合が多いです。その点、著者の池田信夫氏は主流派の経済学者との交流が厚く、その意見や分析は経済学的に見てスタンダードなものが多いです。したがって、彼のブックガイドに従えばそう間違ったことにはなりません。経済学や社会科学の分野で現代のベストセラーまでも含んだブックガイドというものはなかなか存在しないので、本書はかなり貴重な本だといえると思います。

また政治や社会、歴史についてのガイドもあるので、政治学や社会学、歴史学に関心のある人にもおすすめできます。普段は経済分野に接しているという人が、さらに他の領域へ知識を拡張していきたいという時に、とても役に立つでしょう。それぞれのテーマは深い部分で経済と有機的に結びついていますから、勉強はすんなりと進んでいくはずです。

本書の読み方としては、まずは全体を通読してみることをおすすめします。本書自体が優れた経済書でもあるため、それだけでもある程度の体系的な知識が身につきます。ただしどうにも退屈だという部分は飛ばしてしまってもかまいません。これは面白そうだという本が紹介されていたら、目次の部分にチェックマークをつけておきましょう。本書を読み終わったら次はそうしてチェックしておいた書籍へと進み、その分野を深く追求していけば、さらに楽しみが増えていきます。

 

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使える経済書100冊 『資本論』から『ブラック・スワン』まで (生活人新書)

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