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生き方―人間として一番大切なこと 稲盛和夫

京セラの創業者である稲盛和夫氏の自伝的な著作物です。京セラ創業からKDD(現KDDI)の創業までを自身の心中や当時の考え方を交えて話し、自身の宗教観に基づいた人間としての生き方を語っていくという内容の本になります。

序盤は混迷する時代に必要なものは何かという内容から切り出していきます。生き方を問い直す必要性、魂そのものを磨くことが人生の意味、根本的な原則を持つことが生きる上での指針になり、それは一生懸命働くことで体得することができる、一つのことに対して見方を変えることで人生の見方はまるで違うといった内容です。

 多くのハウツー本やビジネス本で見たことがあるようなフレーズばかりだと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、指針はそういった基本的な考え方に基づいて決まっていくという内容で、中身を詳しく見るとなるほどなという印象を受けるはずです。その流れは、理想の自分を想像し実現していくための具体的な行動について書かれています。求めることでそれを初めて得ることができる、寝ても覚めてもその思いを忘れない、具体的な姿をイメージしているか、その姿を綿密な計画に落とし込め、逃げれば逃げるほどそれは追ってくる、やり通すことの大切さや毎日の工夫や継続が大きな成功を生み出すという話になります。

それらの話をしながら、自身の幼少期の体験や仕事での挫折、会社設立の苦労などを織り交ぜ、それらの困難を打破した行動というのが、先ほどの行動や考え方であったそうです。話は京セラの設立から海外進出に至るまでの半生を語るものになっていきます。技術者出身の稲盛氏は経営のことがほとんど分からないまま、自身の技術を世に問うという目的で京セラを設立します。しかし、経営の教育を受けていないためにどう経営して良いか迷うという所から話が始まります。それを解決したのがこの世の原理原則である「人間として正しいのは何か」というものです。とにかくシンプルな経営指針として、この原理原則を掲げたのです。

それは激動する社会や京セラの活躍する業界の急激な変化に対しても揺るぎないものとして京セラが躍進していく指針となっていきました。あらゆる複雑な経営問題、社会問題、日本とはまるで違う海外の商習慣についてもその指針は生きていくのです。シンプルで普遍的なものが問題を解決する手段になるということを繰り返し語ります。そしてKDDの設立から自身が仏門に入った訳などを語り、最後に生き方について自身の人生観を総括し筆をおくというフィナーレを迎えます。字が大きく読みやすい文体なので、一気に読み進めることができます。

本書と通して生きる上での指針を学べる

生きる上での指針の一つを得た印象です。毎日の継続の重要性や自分が望んだ姿を常に具体的に思い描く、そして計画し実行するという一連の流れは自分の日常生活を変えました。一分でも長く寝る、一分でもゲームやテレビなどの娯楽を楽しむという生活から、自分はどう生きたいのか、どのような姿になりたいのかというのを具体的に考えるようになりました。その想像が行動を変え、完全な夜型の生活から朝型の生活になり、社会人になって学習の習慣も身に付きつつあります。

仕事に対する取り組み方も変わりました。かつて自分は毎日週末のことだけを考え、目の前の仕事を無難にこなすことに心血を注いでいました。結果としてそうなったかは定かではありませんが、今は閑職と呼ばれる部署にいます。仕事がつまらなくて、転職の本などを立ち読みしていた時期もありました。正直今の仕事との関わり方に対して考えるのを忌み嫌っていたのかもしれません。

それが今は、目の前のどんな仕事であろうと何か改善できるものはないか、どのような姿になりたいかを常に意識し取り組めるようになりました。それに、花形部署と呼ばれるところに所属する方達への嫉妬や妬みが少なからずあったのですが、私心を捨てて打ち込むことの大切さを本から学ぶことができました。今の部署であっても自分のプライドや見栄を捨てて企業や社会に対して何ができるかという発想に変わるという自分の心の中で画期的なことが起きました。

心が変われば行動も変わると昔の偉人の方が仰っていましたが、まさに仕事に対する行動も変わり、少しずつですが周囲の態度も変わってきたように思えます。自分の心の持ち方が変わっただけという見方もあるかもしれませんが、自分にとっては仕事の充実度が増したという点で役立った、人生のプラスになったといっても過言ではありませんでした。

たしかに娯楽を楽しんだり、週末を充実させることを考えることは否定しませんし、悪いことではありませんが、自分にとっては仕事の充実を得られたという点で、生活が変わったことは大きかったと断言できます。

ただ、すべてが役に立ったわけではなく、終盤の宗教観に関しては、あまり信心深い方ではないので、やや理解できないというか自分のものにすることはできませんでした(稲盛氏は出家までして仏教に関わっているということを告白しています)。自分の人生がまだ浅いのか、稲盛氏が神にもすがりたいような困難に度々遭われていることから得た教訓であるかは分かりません。この終盤を除いては、仕事や日常生活の考え方や行動に役立ったことは確かです。

仕事に行き詰まっている人におすすめ

これから社会人になる学生におすすめできますが、それ以上に仕事との向き合い方について行き詰っている社会人の方に強くお勧めします。多く出回っているハウツー本やハックのようなテクニック的なことはあまり触れていないので、次の日から劇的に変わるということは、恐らくありません。なので、順調なビジネスマンやバリバリ活躍している社会人の方にはあまり向かないかもしれません。

ただ、この本は人生観や仕事に対する考え方の指針となる基本的な考え方、原則について稲盛氏の社会人のキャリアの開始から晩年近い時期まで言及がなされているので、これから社会人として活躍しようとしている学生に向いているかもしれません。字も比較的大きく、読みやすい文章になっていますから、勉強の合間の息抜きに気軽に読めるかもしれません。また、一番お勧めしたい仕事に行き詰った社会人の方には、きっとこの本が現状を打破するきっかけになってくれるのではないかと考えます。壁に当たったら、一度原点に戻るという考えがあります。

まさに、この本は原点に立ち返るためのテキストと言っても言い過ぎではないと思います。この本を読み、原点に立ち返ることで現状抱えている壁や行き詰まりを打ち破る糸口やきっかけになるに違いありません。ただ、冒頭にお話しした通り、テクニック的なことが書かれているわけではありませんので、一瞬で解決するという訳ではなく、漢方薬のようにじわじわと効いてくる、そんな一冊としてお勧めいたします。

 

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生き方―人間として一番大切なこと

生き方―人間として一番大切なこと