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ビジネス関連書籍の紹介日記です

売る力 心をつかむ仕事術 鈴木 敏文

セブン-イレブン・ジャパンの創始者である著者の鈴木敏文氏自身のキャリアや仕事に対する考え方、特に販売方法についてのアイデアについてまとめた本になります。冒頭「売る力」とは、何かについて読者に語り掛けるような内容で説明を始め、現代のモノが余った買い手優位の市場においてどのようにモノやサービスを売るかについて基本的な考えを述べていきます。

直接関係のないような有名芸能人の物の考え方からモノやサービスの売り方について述べたり、有名な国内動物園の経営方法など違った面から見た売り方、お腹がいっぱいの人にどのようにして気持ちよく食べさせるか、独自性を出すにはどのようにしたらいいかという根本的な売るための考え方のレクチャーを行っていきます。

 更に、ひとのマネをせずに世の中(買い手)へ大きな衝撃を出すためのアイデアとして予定調和というテーマに触れながら具体例を提示していくスタイルへと話が変わっていきます。ここでかつて自身が所属した大手書籍取次会社で行った具体的な取り組みとその結果やおでん、中食、コーヒーとセブンイレブン自身が企画した販売方法の内側についても具体的な話をしていきます。現状ではできないと思うことでも自分たちのアイデアで打破できる場合もあることなども話に出てきます。

さらに、これらの販売企画の答え(企画の成功)について話題が変わり、競争相手を同業他社に求めない姿勢や大手雑貨販売会社の社長の半生を例にした企画の成功を紹介していきます。そして「モノを売る」とは何かの答えについて筆者の鈴木氏の持論が展開されていくのです。ここでは消費者の心理について、どのような割引の仕方が歓迎されるのか、どんな時に損を感じるのか、どのタイミングで爆発(大ヒット)が起こるのか、セブンイレブンの出店と消費者心理について語られ、避けるべきことなどの注意点についても言及がなされていくのです。

このほか、接客の方法や話題が遡って最初に紹介した国内の動物園の話などにも再度触れながらモノを売るとは何かについても話がされていきます。そして、自身の会社が仕掛けた関西の一部の風習であった節分の「恵方巻」をの全国展開することに成功した事例について、ネットを利用した方法を挙げ、具体的な説明がなされていきます。最後はモノを売る側の心構えについて語られます。

相手へ確実に伝えることの大切さ、店のイメージを損ねるものを置かないという心構え、なぜコカ・コーラやアサヒスーパードライは売り上げ日本一を達成できたかという話の流れを作りつつ、成功した時の心構えについても触れられています。ピンチはチャンスの逆、チャンスはピンチになり得るということについても語られているのです。

話題は戻って、成功するチャンスを掴むにはどのようにふるまうべきか、日常の習慣について触れ、最後に自社の製品の事例を具体例にして、これらを当てはめていくという内容の本になります。様々な分野や様々な人、そして自ら率いるセブンイレブンの具体的な取り組みを通じて「売る力」とは何かを読者に伝えるという本になります。

 

変わらない視点を基盤として持つことでアイデアが生まれる

事業で大きな業績を挙げた方が書いた本のため、各章とも強い説得力があり、実践して得た成果というものも大きく感じられました。

以下具体例を挙げてお話をさせていただきたいと思います。消費者の変化についていくという具体例で10歳年が違うだけでも、モノを買いだめしておく旧世代に対して、必要になったらいつでもコンビニやスーパーで買えばいいという購買行動がまるで違う点について、とにかく広い範囲、老若男女に利用して頂くサービスを提供することに対する警鐘を得た思いでした。

そして、職場についてもわずかながら主な世代を意識したサービスを取り入れようと考え、行動したのです。わたくしとは異なる世代の方々が多く利用するということは以前からリサーチであったり、実感としてありました。しかし、これらの世代の心理について、感覚的に何となくわかっていても実際はどうかということが分からず、その世代に該当する家族や友人の家族、あるいは上司や同僚にも相談し、意見を収集しました。それをベースに普遍的な価値についても本書は言及しており、それも参考にいたしました。それは変わらない視点を基盤として持つことです。

今までとは異なったサービス、奇抜なアイデアも時に重要ですが、基本的なもの見方を大切に新しい企画を進めました。それらを元に企画を行った結果として、誤差の範囲かもしれませんが担当しているセクションは5%ほど売り上げが上がりました。天気であったり、消費行動の変化、または「たまたま」だったのかもしれませんが、マイナスにならなかったのは大きな励ましになりました。

また、継続についても言及されており、どんなに素晴らしいものやサービスだったとしても三日続けば飽きられるということです。今回のささやかな試みは、大成功には至らない程度の成果ではありますが、今までとは違った能動的でない試みによるささやかな成功でした。

しかし、この結果に満足せずすぐにリニューアルの準備を行い、改善点の洗い出しを行っています。その改善点の見つけ方も当たり前のようではありますが「売り手や提供する側」で考えるのではなく、「顧客の目線」で見ている最中です。また、残酷な現実ではありますが、現在の消費者心理についても書かれていました。現在の消費者心理は、あわてて物を買うようなことはせず、しかし新しい価値を常に追い求めているということです。そういった考えもサービスの研鑽の要件にしています。これらのことを書くと、アンケートや売り上げデータというものである程度対策が立つのではないかという考えもありましたが、著者はその点についても鋭く指摘しています。

重要なのは買い手すら目に付かない潜在的なニーズを見つけるということです。ここまで書くと、辛い厳しいという印象を持たれるかもしれません。しかし、筆者は優しくフォローします。それらを見つけるのは、どんな関係のない時、場所、場面、で自身が「おや?」と思うことに気付くことで見つけることができるし、社員にも実践させていると。仕事に関わらず生きる見方も変えるような提案でした。自分も早速実践しています。


サービス業従事者はもちろんのことすべての人におすすめできる一冊

ここまで書くと、サービス業や販売業など、いわゆる三次産業の従事者の方にお勧めしたい本というような流れを感じるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。個人的にはありとあらゆる経済活動を行う方全員にお勧めしたい本です。

売る=三次産業ということではなく、同僚であったり、仕事を行うための業者に対してであったり、上司であったりとどんな分野であっても自分の力や技術、時間を会社に「売っている」わけですし、フリーランスのような方であればなおさらどんなものであっても「売る」ことは必要になります。

顧客に対して「売る」だけでは決してないはずです。そういう意味でもこの本は自分のあらゆるものを売って報酬を得ているすべての分野の方々に読んでいただきたいと思います。この本に出てきた具体的なサービスは近くのセブンイレブンで簡単に目の当たりにできますし、どのあたりをどう工夫したかも、パッケージや売り方、商品の特徴などから包み隠さず教えてくれるはずです。

本を読んだ後、すぐ近くのコンビニに教材があるのです。これは実践できるビジネス書としてとても優秀なものなのではないでしょうか。もちろん経済活動を行っていなくとも、将来従事するであろう学生に対しても勧めることができると思います。教材であるセブンイレブンが学校の近くにあるのはもちろんのこと、就職活動で自分の実績を「売る」ことになる立場から、何らかの形で得るものがあると考えるからです。

「売る」というとつい、店と客という構図が浮かんでしまいがちではありますが、すべての産業、あるいは人間関係において関わってくるフレーズかもしれません。誤解を恐れずに言うならば「売る力」とは「生きる力」、仕事に関わらず人生の考え方にもプラスになる。そういった意味でも顧客と直接かかわらない分野の方々にもお勧めできます。

togetter.com

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売る力 心をつかむ仕事術 (文春新書 939)

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