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スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガル著 神崎朗子訳

スタンフォード大学の心理学者ケリー・マクゴニガルが自身の公開講座の内容を基にまとめたものです。マクゴニガル氏は健康心理学と言われる分野の研究をしており、ヨガ、瞑想、統合医療に関する研究を扱う学術専門誌の編集主幹も務めています。心理学的なアプローチを取りながらどのように、あるいはどうしたら健康的な生活を過ごしていくかを研究しています。

この本では心理学的な研究や心理学的な視点を中心に、人はなぜそのような行動を取ってしまうのか、その行動にある心理的側面を示しながら、人間の行動の裏側を解説していきます。現在の自分の状況や自分の行動を改善しようとしてる読者に対して、心理学的な研究例を交えながら心の動きの裏側を知ることで、一人一人が自分と向き合い改善していくアプローチを見つけていくヒントを示しています。

我々の失敗は我々個人の性格の問題ではなく人間の心理として当たり前に起こってしまうものであることを示しながら、その失敗にある行動の裏側にある心理を解説していきます。例えば、ダイエットしようとしている人はなぜ甘いものを我慢できないのか、禁煙を強く心に決めても気が付いたら吸っていることがある、などという身近な例から、その人の見えない心の動きをこれまでの心理学研究をもとに解説していきます。

これらは自分の行動の内面を理解することで自分を変えるヒントになりうるということが分かります。この本のもう一つの重要なテーマはストレスです。ストレスを抱える人やストレスに強くなりたいと願う人にも有効です。ストレスに対する体の反応や心の動きを解説しながら、どうしたらうまくストレスに対処していくことが出来るのか解き明かして行きます。

つまり、マクゴニガル氏が示すいくつかの具体的なアプローチから、考え方を知り、行動を変え、そして自分が変わるという道筋を見出し、心身ともに健康的な生活をしていくヒントが散りばめられた本です。


この本を手に取る人は今うまく行っていないか、これから自分自身をもっと良くしたいと願う人でしょう。そのためには人間としての当たり前の心理を知ることが有効であることを本書は示唆しています。実のところ、うまく行っている人でも自分の心の動きを理解している人は少ないのではないかと思います。我々の心理的な動きは自然の中の生存競争を勝ち残るために必要であった時代から続いていて、現代社会になったからといってその心理を手放した訳ではないと筆者は説明してくれます。一方で、この太古から続く心理を理解し、そこから自分の行動を考えることが「自分を変える」第一歩であることであると示しています。


またストレスの対処について、マクゴニガル氏の専門であるヨガや瞑想を取り入れたアプローチを解説してくれています。重要なポイントは呼吸ですが、なぜ呼吸が重要なのか医学的な知見からも説明を試みています。マクゴニガル氏は瞑想のトレーニングを薦めていますが、瞑想が出来なくてもこの呼吸のテクニックを理解するだけでもストレスに対処する方法として十分役立つはずです。

 

行動の裏側にどのような心理が動いているかを知ることができる


誰しも「自分を変えたい」と思うでしょう。この本を手に取ったのは、やらなければならないことを後回しにしてしまう自分や、不安に苛まれストレスを感じてしまう自分を変える方法があるのだろうか、と思ったからでした。

この本は人の行動にある心理学的な裏側を丁寧に解説しています。古代の生存競争から、あるいは最新の心理学研究から、なぜそのような行動を取ってしまうのかを知ることができます。このことは自分を知る上でとても重要であると思います。人は上手くいかない時自分を責めがちです。「どうしていつもこうなんだろう」とか「何をやっても上手くいかない」などと自分を責める前に、その行動の裏側にどのような心理が動いているかを知り、そこから自分の行動をどう変えたらいいかのヒントを知ることができます。
これは自分の変えたいと思う時に、自分を見つめるという作業が重要であるということを示唆しています。自分の行動を改善したいと願うときに自分を責めても何の役にも立たないでしょう。マクゴニガル氏はそのように自分の行動を冷静に見つめることで、その状況から改善すべき方法を提案してくれます。例えば、何かを止めようと思う時は、どのような時にその行為をしてしまうかを分析することで、止めるためのアプローチをいくつか提案してくれます。

欲求を受け流す、強い意志で止めるのではなく少しずつ減らす、別なことをする、などその時の自分を分析することで自分にあったアプローチを見つけることが出来るでしょう。自分の行動、特に自分が嫌になってしまうような行動をする時にどのようなことを考えているかを知ることが自己改善の原点であると理解できました。ただ「辞めよう」「絶対やろう」と意識ばかり強く持っても意味が無い、というのはこれまで「気合い」で自分を変えようとして失敗していた理由をよく表しています。

ストレスについても同様でした。ストレスは心の問題とばかり思っていましたが、ストレスに対応できるかどうかは心拍数に影響を受けるということは目からウロコでした。むしろ体のコントロールが解決法であるということは、そのテクニックを身につけることで対応することが出来るということです。マクゴニガル氏が薦める瞑想やヨガの重要なポイントは呼吸のコントロールです。ストレスを感じたり緊張した場面で呼吸をコントロールするテクニックを身につけることが出来れば、そのような心理状態を緩和することが出来ることが示されています。実際、ヨガ教室に行ったり、瞑想のトレーニングをする時間がなかったとしても呼吸のコントロールを実践することで、少しストレスが和らいだり、緊張が緩む感覚が実際に感じられました。

緊張したり不安に苛まれたら深呼吸する、たったこれだけでも自分の緊張や不安が収まることが実感できます。瞑想であれば自分一人でもできますから、これから少しずつトレーニングを積んでこうと思っています。

このような心の裏側を知ることは、過去の自分を見つめることにもなりました。「失敗をいつまでもクヨクヨ思っていても始まらない」と言いますが、失敗することも人間としては当たり前のことであることであることがマクゴニガル氏によって示されています。失敗の理由が人間心理の特有のことだと理解できれば必要以上にクヨクヨすることはありませんし、今後の対策も立てやすくなります。過去トラウマになるような経験も人間心理の側面から見直すとむしろクヨクヨすることはなく、次はこうしようと前向きな気分になることが実感できました。

 

「グダグダ」したり「クヨクヨ」したりする人におすすめの一冊

この本を読むことで、人間としての心理から自分の特有の思考を理解し、どのように自分の行動を変えていくかが分かるでしょう。それは日常生活のあらゆる場面で応用できるものですし、何より心のゆとりが生まれることでしょう。そして自分の心を落ち着かせるための呼吸のテクニックを身につけることでより一層ストレスに強くなり、かつ健康的な生活を送ることが出来ることでしょう。

本書は公開講座がそうであったように章ごとに1週間ごとの課題が出されますが、ただ最初から最後まで一気に読んでも大丈夫でしょう。そして、読み物としても面白いので心理学研究の現場を垣間見ることも出来る興味深い一冊です。

「自分を変えたい」とは誰しも思うことでしょう。この本には、「手っ取り早く仕事で成功する方法」とか、「確実に恋愛が上手くいく方法」などという夢のようなことは書いていません。しかし、今自分に不満のある人は読んでみる価値があります。自分の内面を冷静に見つめることは、内面を穏やかに心にゆとりを持つことができます。心にゆとりがあると次の行動にエネルギーを割くことができます。それはひょっとしたら仕事で成功するきっかけになるかもしれませんし、恋愛が上手くいくヒントかもしれませんが、行動を変えるきっかけを本書は提案してくれます。

ストレスに関しても同様です。ただ呼吸をコントロールするテクニックを身につけることで、ストレスが和らぐことが実感できます。ストレスが和らげば心に余裕ができます。やはりその余裕は次の行動のエネルギーになるでしょう。

「グダグダ」したり「クヨクヨ」したりする人には特にオススメです。自分を冷静に見直すことは確かに辛いことかもしれませんが、そんな自分が嫌ならばやらなければなりません。この本ではマクゴニカル氏が心理学的な裏側をたくさん提示してくれています。「グダグダ」や「クヨクヨ」の原因がこの中に必ずあると思います。それは人間として当たり前のことだと気がつくことが出来れば必要以上に自分を責めることもなくなるし、自然と前向きになります。そしてそれは、次の自分へのエネルギーに変わっていくことでしょう。

togetter.com

 

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スタンフォードの自分を変える教室 (だいわ文庫)

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