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ビジネス関連書籍の紹介日記です

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海

この本の著者の岩崎夏海さんは、1968年生まれの東京都日野市出身の男性です。東京芸術大学建築科を卒業されており、放送作家や小説家として活動されている方です。放送作家時代は秋元康さんの弟子として、「ダウンタウンのごっつええ感じ」「とんねるずのみなさんのおかげです」等の人気番組の制作にも携わっておられました。

また、後にはアイドルグループAKB48のプロデュースにも関わっておられます。現在は、ご自身の叔父さんから引き継いだ児童書出版社「岩崎書店」の社長をされています(創業はご自身のお祖父さん)。

 この本はタイトルの通り、ある女子高生が高校の野球部のマネージャーとして奮闘する話です。高校二年生の川島みなみが、突然とある理由から自身が通う程久保高校で野球部のマネージャーを務めることになります。彼女の目標は「野球部を甲子園に連れて行く」こと。甲子園常連校でもなく、むしろ甲子園を狙えるようなレベルにもないチームでそれを達成することは、当初は無謀にも思えました。このチームは特段弱いわけでもありませんでしたが、甲子園出場に対して、みなみ以外全員否定的です。しかし、ドラッカーの『マネジメント』で提唱されていることを活動に取り入れることで、どんどん目標の実現に近づいていくというストーリーです。

この本のビジネス書としての内容は、そもそも「人をマネージメントする」とは一体どういうことなのか、また、そのためにはどんな資質が必要で、何をすることが大切かということを、物語の流れに乗せてかみ砕いて書いてあります。

この本を読むにあたって、マネージメントに対して何の知識もない状態から読み始めても全く支障はありません。いきなり野球部のマネージメントが始まるわけではなく、主人公は「マネージャー」とはそもそもどういう意味なのかさえも当初よくわかっていません。言葉の意味を調べる段階からスタートするので、一緒に学んでいくことができます。(むしろ変に何の知識もないほうが、先入観なく内容を理解・吸収しやすいと思うので、なんならそのほうが良いかもしれません。)

作中では、色々な性格・立場・役割を持った登場人物が出てくるので、具体的な場面がイメージしやすいです。加えて、やるべきことや知識を学んだ上で、実際にそれらをどうやって行動に取り入れて、どんな行動をするべきなのかもわかりやすく説明してくれます。また、それを実施したことでどのような成果が得られたのかということも、あくまで一つの物語ではありますが書かれており、行動によって期待されることもイメージしやすいです。

これはただ物語がつらつらと続くわけではなく、物語の要所要所で、ドラッカーが提唱する「マネージメント」に関する定義の引用が出てくるので、締まりも出ますし、信頼しやすいと思います。

マネージメントについて物語形式で学ぶことができる


管理職に対するイメージとして、偉そうな態度でプレーヤー(働く人)たちを威圧し、物を言わせないようにする、マネージャーに逆らってはいけない、部下に一方的に指令を出す、またマネージャー側の思い通りにプレーヤーを操る等のイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、本当に人を「マネージメント」するということは全くそういうことではなく、マネージメントとは「人の強みを発揮させることである」「プレーヤーたちに成果をあげさせることである」ということを知ることができます。

まず、マネージャーになるにあたって必要な資質とは、何よりも「真摯さ」にあると記載があります。しかもこれを後天的に身に付けるのは難しく、先天的に生まれ持っていないと、人をマネージメントすることは難しい程重要な要素とのことです。逆に言えば、真摯さがあればまずマネージメントへのファーストステップをクリアしており、この要素さえあれば後の勉強や技術習得次第で、良いマネージャーへの階段を上っていけるのではないかと理解できます。良いマネージャーに必要不可欠なのは、世渡り上手であることや上手く目上の人に取り入ること、小手先の口の上手さなどではなかったのです。

そして、マネージメントするにあたって重要なことは、プレーヤーの状況や困っていることを言いやすい状態を作ること、聞き上手であることが大切だということがわかります。プレーヤーを威圧して何も言わせないようにするのとは正反対です。上手くプレーヤーの話を引き出すことで、各々から見えている状況や課題、必要なこと等を把握することができるのです。また、当人たちの性格や、どういったことが不快で、何に価値を感じるのかということにも気が付くことができます。

次に、マネージメントする際に人の「監視」は重要ではないこともわかります。大切なのは「洞察」です。洞察することで、それぞれの人の性格や傾向、課題等を、当人が口に出す前の段階でも見抜くことができるのです。また、当人が気付いてすらいないことにも、客観的に洞察することで見抜くことができ、対策を練ることができるのです。

本書には、マネジメントする側にとって重要な資質や能力ばかりではなく、マネジメントされる側に対して何を提供しなければいけないのか、どう接したほうが良いかということも書いてあります。プレーヤーには、各々の仕事をしてもらうにあたって働き甲斐を感じてもらわなければならないのですが、それではどうすることで働き甲斐が生まれるのかということも、物語の場面の中で具体的に書いてあります。

物語が職場と上司の部下という関係性で描かれているのとは違って、野球部のマネージャーとプレーヤーという関係性での物語なので、本来のマネージメントの意味がしっくりきやすいと思います。

上記のことを知ることができる点でも本書は役に立ちますし、加えて本来の「マネージメント」という仕事が理解でき、管理職に就くことに対するイメージアップにもつながるかもしれません。


管理職になることに対して否定的な方におすすめ

まず、管理職になることに対して否定的な方にオススメします。管理職に対するイメージがガラリと変わります。世間には色々な職場があり色々な人がいます。これまで尊敬できる上司に出会ったことがなく、あんな人にはなりたくないと思っている方もいるのではないでしょうか。また、マネージャーには偉そうに人を見下しているようなイメージしかないから、あんな風に人に接したくはない等の思いが日々渦巻いている方もいるかもしれません。

しかし、本来のマネージメントの意味を知ることで、今後のキャリアの考え方が変わるかもしれません。マネージメントとは、決して部下を恐怖で縛ったり、独断的な考えに人を巻き込んで、強引に物事を進めていくことを指すのではありません。この本を読むと、マネージャーへの階段を上っていくことも、悪くないかなと思えるのではないでしょうか。正しいマネージメントをすることで、きっと自身の人間的な成長にもつながるはずです。

加えて、真っ直ぐだったり誠実で真面目な性格が、社会ではなんだか裏目に出ているような気がする人にもオススメします。勇気が出ます。その資質は良いマネージャーになる上で何よりもまず必要だと言われるぐらい素晴らしいものです。決して自分を否定してはいけませんし、無理に変えようとしなくても良いのです。上手く上司に気に入られる人ばかり昇進しているという状況を目の当たりにした経験がある方もいるかもしれませんが、真摯な人こそが良いマネージャーになれるのです。この本を読むと、自信を取り戻せると思います。また、こういった性格の方からすれば、「自分が管理職になる」ことに対するハードルが、ある意味下がるかもしれません。

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