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人を動かす デール・カーネギー

貧農に生まれ、怠惰で目的が見いだせない生活を送っていた著者は、夜間学校の講師をしたことをきっかけに、コミュニケーションやビジネス上でのやり取りについて深く思索を深めるようになりました。
そしてそれを一つづつ実践しフィードバックすることによって、自己啓発の草分け的存在として様々な企業家と交流を持つに至るまでの成功者となったのです。

この本は、カーネギー自身がそうやって試行錯誤して編み出した、様々なビジネスコミュニケーションのスキルやその根本にある心構えについて紹介する名著です。

 度々ビジネスセミナーでも引用されたり、昨今の認知行動療法にもその視点が取り入れられるなど、1937年発刊の古典的な本ではありますが、現在に至るまで汎ゆる自己啓発、ビジネスコミュニケーションの在り方に強い影響を持っています。
「この本は読んだこと無いが、名前だけは知っている」「いつか読んでみたいと思っていた」という方も非常に多いのではないでしょうか?

全体に貫かれるコンセプトは「人を直接動かそうと試みるのではなく、自分自身の態度(Attitude)を変えていくことで結果的に周囲に強い影響を及ぼしていくことが出来る。」というものです。そして「自分の願望や目標を相手に押し通す戦略を練る代わりに、先ず相手を受容し、相手にとって重要な存在となることによってそれを達成する」ということがそれを現実化する為の手法として語られています。

これは昨今頻繁に言われるところの「Win-Win」の関係性というテーマに密接で、そのエッセンスが本著では非常に明瞭に解説されています。
また、随所で具体的な偉人のエピソードや本人の実際の体験談が散りばめられることで「こういった考えを持っていたから大きな結果を成し遂げられたのだな」ということが説得力を持って伝わり、また具体的行動として、まず何をしたらよいのかということに関しても知見が得られやすくなっています。

また、各章のタイトルを見る所、その手法は一見すると一笑に付してしまいかねない単純なものに見えますが、シンプル故に重要なテーマを孕んでいます。
なので、読むと逆に「自分はこんな単純で当たり前なこともきちんと出来ていなかったのか」と感じる一幕が沢山あり、そこから良いフィードバックを沢山受けることが期待できそうです。

ビジネス書として有用のみならず、人生哲学の本としても一読する価値がある本だと言うことができそうです。

 

人を変えようとするのではなく自分が変わる


この本の筋立てとしては基本的に以下の文脈が繰り返される構成となっています。
①ビジネス上の失敗談
②何故失敗したか
③どういった心構えがあればよかったか
いずれも、根本にあるのは上記した「相手を変えるのではなく、自分が変わる」というテーマに収斂しており、悪い例を読むことによっていかに日常のコミュニケーションが相手を支配しようとして一方的に行われているかということが明瞭にわかります。

それでは、具体的にどの様な手法でそれを実践したら良いのでしょうか?
以下にその代表例をいくつかご紹介したいと思います。

「盗人にも五分の理を認める」


「盗人にも五分の理を認める」というのは、「当然非難すべき人に対しても非難をせず相手の能力を認める」ということです。
取引先であっても、社内の同僚であっても、一度非難してしまうと、色眼鏡でしかその人を見れなくなってしまいます。一度そうなると「この人は○○だからダメだ」という考えに立脚してしまいます。
カーネギーは「最も非難すべき人であっても、決して非難するな」と主張します。
理由としては、世の中には「非常に望ましくない行動を取るが、非常に良質な能力を持つ人」も沢山いること。批判の嵐の中に身を投ずるとこれが見えなくなってしまい機会損失となってしまうということ。そして批判的な視点が定着してしまうと、これから先もあらゆる所で有用なリソースを逃してしまうことが考えられるからです。

「議論に勝つ唯一の方法として議論を避ける。」


基本的に議論というのは根本的動機として「他者を打ち任せて、自分の意見や計画を呑ませよう」という見地に立っているとカーネギーはいいます。
この本で謳われている根本的な姿勢は「Win-Win」の関係性なので、このような相手を攻撃するような議論はそもそも有用な結果を生むことはないと主張します。
でもそう言われると「なんでもいいなりになってしまうのか?」と考えてしまいがちですね。しかし議論を避け、誠実に相手の主張に耳を傾けることは、相手の「自分の一番の理解者」となることに繋がり、ひいてはその人が自分の要求を一番通してくれる相手になるとカーネギーは自信を持って断言しています。

「思いつかせる」


これは非常に単純なタイトルですが、どのようなことかというと「要求があるとき、それを直接言うのではなく、相手に自分の考えを喋らせ、そこから”あたかも自分が思いついたかのように”させる」ということです。
このように言うとなにか特殊な誘導尋問のような面妖なものを想像してしまいそうです。しかし実際は、まさに「Win-Win的な視点」に立ち、相手との信頼関係を構築し、自分の考えを胸襟を開いて喋りやすい環境を作ってやることによって、相手の言葉の中から自分の要求するものと一致するものを探し出す技法について語られています。"

これから社会に出る就職活動中の方や新入社員の方におすすめ

この本に関しては「当たり前のように思うけれども実践できていない」ビジネスの心構えやコミュニケーションの在り方が語られています。
なので、今から社会に出るというリクルーターの方、「どのように周りと対話していけばいいかわからない」という新入社員の方等に特に役立つ本なのではないでしょうか?また、逆に企業家などの方で部下を抱えている方が、今までのコミュニケーションの在り方等をきちんと総ざらい再点検したい。あるいは部下との関係がうまくいかないが、何故そうなるか理由がわからないといった時にも非常に強力なツールになりうると考えています。

本著では具体的手法だけではなく心構えや哲学的なことも強く語られていて、一見するとそういったものに抵抗が有るという方も多くいるかも知れません。
しかし、著者は「小手先の手法だけでは人の心を掴むことは難しい」といったことも語っています。
なので、「働けているが働くことの向こうにある達成目標がわからない」といった、ビジネスパーソンとしての方向性について悩んでいる方にも、人生哲学の本として非常に有用な効果をもたらすことが期待できるかもしれません。
手元にバイブルのように置いて、定期的に見返しては実践できているか確かめていくような使い方も出来るでしょう。

上記を総合すると、社会人として生きていく上で、あらゆる場面で活躍する本だと考えています。
そして古典的名著でもあるので、年配の方で読んでいる人もとても多く、一度読んで置くことで、上司などとの話のキッカケとなり本著の内容について語り合うことによって良い関係を構築するきっかけになるかもしれません。

president.jp

人を動かす 新装版

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