ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

カジノの文化誌 大川潤・佐伯英隆

この本は2011年に中央公論新社から発行された本です。内容は、大きく3つに分かれています。

ひとつは、カジノとはどういうものかといった観点で書かれています。カジノゲームのルールや遊び方、マナーや、カジノビジネスの収益構造について書かれています。とくにカジノ経営における収益構造については「カジノでの賭博はバクチではあっても、カジノ経営者にとってはバクチではない」と明言しています。

 

そして、具体的な収益構造としては、胴元(カジノ運営側)が賭け金から最初に一定割合を天引きし、残額を勝利者に払い戻す方法があると述べています。これは、客同士が対戦するポーカーがこれに該当し、日本での競売や競輪などもこれに該当すると述べています。

さらに、もうひとつの収益構造としては、ゲームのルールのなかに、あらかじめ胴元の有利さを組み込んでおき、あとは勝利する確率と勝利したときの払い戻し率に差を設け、勝者の利益の一部を胴元が獲得する方法があると述べています。カジノのほとんどのゲームや、日本におけるパチンコがこの方法であると、この本では述べています。

次に、世界のカジノ市場について解説がされています。アメリカやヨーロッパ、アジア各国で、多数のカジノ施設が開業していますが、それぞれのカジノはどのような特徴を持っているのか、あるいはどのような歴史的経緯を経て発展してきたのかなどについて書かれています。ラスベガスにおける100年以上のカジノの歴史においては、カジノ発祥の経緯から、マフィア追放と同時にコンベンションセンターやエンターテインメント施設などが誘致されていった経緯が書かれており、現在の統合型リゾート(IR)へと発展していった様子が記載されています。

そして最後に、日本のパチンコや競馬などのギャンブル市場と、日本国内へのカジノ導入に向けた展望について書かれています。この本が出版された時点では、まだIR推進法は国会で成立していません。2002年になって、やっと自民党内に「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」が発足して、カジノに関する議論が開始されたと、この本では述べられています。

議員連盟の会長が「この当時の日本における外国人観光の実情は、出国者数と外国人入国者数に4倍の開きがあり、日本の観光関連産業と基盤インフラは国際競争力を失いつつあり、欧米での成功例を参考にして、すべての人が楽しめるエンターテインメント施設を作りあげたい」と意気込みを述べたと記載しています。


カジノを通して統合型リゾート(IR)経済効果を知ることができる

私は投資会社で資産運用の仕事をしているため、株式市場におけるホットテーマである「カジノを含む統合型リゾート(IR)」が日本国内にも開業する日が近いという観点で、おおいに知識を得ることができました。

とくに参考となったのは、シンガポールにおけるIR誘致の成功事例です。シンガポール政府は2004年にIRの誘致を決定し、それまでクリーンで禁欲的な街として世界に知られていたシンガポールのイメージを大胆に変革する意思表示を行いました。そして、シンガポール経済を発展させるために、それまでのハイテクや金融だけに頼る経済構造を、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致によって観光産業やエンターテインメント産業などからも経済効果を得る政策へと転換させたのです。

シンガポール政府のこの試みは大成功でした。2010年にシンガポール国内に2つのカジノを含む統合型リゾート(IR)が開業しました。施設名はリゾート・ワールド・セントーサと、マリーナベイ・サンズとなっており、この2つの施設の開業初年の2010年における売上高は約2240億円と推計されています。そして翌年の2011年には売上高がほぼ倍増しており約4400億円に達しているのです。この時点で、アメリカのラスベガスに匹敵する売り上げ規模となっている模様です。
この2つのIRはシンガポール経済に大きな貢献をしており、2010年における国際観光旅行客数の増加は前年比24%増となった模様です。そして、2011年のシンガポール国内への外国人観光客数は1200万人から1300万人へと増加したようです。この当時の日本国内への外国人観光客数は860万人でしたから、IRの効果は絶大であったことを理解することができます。

さらには、2010年4月から11月までの、2つのIR施設からの税収は約350億円にのぼったと、この本には書かれています。また外国人観光客数の増加に伴う観光客による消費支出は1兆2200億円となり、IR開業前と比べて約50%増となった模様です。

私はこれらのシンガポールにおけるIR誘致による経済効果を目の当たりにして、やはりカジノを含む統合型リゾート(IR)が横浜や大阪、長崎などに誘致されれば、これに携わる企業の業績は大幅に向上し、株価は2倍や3倍に達するだろうとの考えを強く持つことができたのでした。そして、実際に日本国内にIRが誘致された場合に、業績が向上していく確率が高い企業の株式に投資することができたのです。このような投資を実行できた要因は、この本を読みIRの経済効果を実感できたからです。

www.yutorism.jp

カジノの文化誌 (中央選書)

カジノの文化誌 (中央選書)