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コンサルタントの道具箱 G.M.ワインバーグ

「コンサルタントの道具箱」は、ソフトウェア業界で活躍するコンサルタントである筆者が、仕事をする上で役に立つ知恵を16個にまとめたものです。

各知恵には独特の名前が付けられており、読者に親しみやすく、わかりやすく内容が伝わるようになっています。じっくり考えながら読めば、それはあなたにとって貴重な体験となることでしょう。

 この本で述べられている知恵や法則は、幸福に仕事をし、顧客に確かな価値を提供するためのものです。心理学的な説明も交えながら、実際の仕事の場面でどのように考え、どのように行動すべきかがわかるようになっています。ただし、筆者も第一章の「イチゴジャムの法則」で述べている通り、どんな問題にも対応できる万能の法則が網羅されているわけではありません。筆者が特に大切で役に立つと考えた知恵と法則だけが厳選されて並べられています。

第二章以降で、コンサルタントとして顧客の「課題を解決する」場面の仕事を進めるときに役立つ道具たちが紹介されていきます。まずは「知恵の箱」。自分にとって何が正しくて何が正しくないかを見分ける能力のことです。妥協していてはいつまでも仕事は楽しくならない。次に「金の鍵」。自らの関心に正直になり、新しいことへ挑戦していく力のことです。「勇気の棒」は、その際に失敗することを恐れないこと。
 また、「願いの杖」を使って、自らの欲しいものを明確にせよとも筆者は述べています。ここであげられているコンサルティング案件では、顧客と交渉する前から「こんなことをいっても受け入れられない」「こんなことをいったら、相手からどう思われるか」といったことを心配するあまりに、自らにできること、自らが欲している結果にふたをしてしまっているクライアントの姿が描かれています。幸いにして、筆者のアドバイスを受け入れた彼女は、自らの望む結果を先に提示することで、最初に想定していたよりずっと良い報酬と条件を手に入れることができました。

「探偵帽」の章では、ものごとを先入観なく分析することの重要性が説かれています。また、その際に、「顧客の方の」先入観を見抜くコツも書かれています。不幸にしてクライアントが差別的であったり、自分に対して不利な条件を提示してくるような際に、自分への影響を最小限にとどめるための手がかりが、実例とともに紹介されています。
 このほかにも、できないことは物柔らかに、ただし明確に断る「イエス・ノーメダル」の力、自らの信念に正直になるための「ハート」、少し立ち止まって自己分析と将来計画を立てる「鏡」の力、顧客に対して分析をする「望遠鏡」といった、特にこれからの社会で必要になっていく考え方のコツが詰まっています。


伝える力や客観的な分析に必要な法則を学べる

この本の中で書かれている心構え、法則はどれも重要なものです。しかし、特に日本においては、「イエス・ノーメダル」、「探偵帽と虫めがね」、そして「酸素マスク」の考え方が実用的です。できないことはできないとはっきり伝える力、先入観やしきたりにまどわされず客観的に分析する力、そして燃え尽きる前に生き方・考え方をみなおす勇気が、これら3つの道具の章のなかで説明されています。
「イエス・ノーメダル」は、「できること、やりたいことにははっきりとイエスを、できないこと、やりたくないことにははっきりと、ただしものやわらかにノーを言う力」のことを示しています。

この章で筆者は、書きたくない論文を断ろうとして「もう少し時間があれば…」と言葉を濁したところ、「時間を用意したので書いてください」と頼まれて断り切れず、せっかくの夏休みを台無しにした例を引き合いにだしています。もしそこで、「サティアのものやわらかな一蹴」-残念そうに、ただし言い訳はせずはっきりと断ることーができていたならば、夏休みを台無しにすることはなかっただろう、と述べています。「ノーといえない日本人」ともいわれるように、できないことを断り切れず、結果嫌な仕事を無理してやらざるを得ないことも多い人にとっては、共感し生かせる場面が多い道具です。断る際に威圧的に断るのではなく、相手の提案を喜ぶ気持ちは伝える、という点も、この道具の実用性を増しています。

「探偵帽と虫めがね」は、男女差別的な言動をする人、コンサルタントを「よそ者」として馬鹿にした態度をとる顧客、不平等な条件をこっそり飲ませようとしてくるクライアントにどう対処するかが書かれている章です。力でねじ伏せて解決するわけではなく、彼ら彼女らの言動から客観的に状況を分析し、望まない結果を生みそうであれば離れること。また、そういった先入観を持つ人々の説明を真に受けず、真実を見抜く力について説明されています。この力は、グローバル化が進み、様々な価値観を持つ人たちがいるビジネス界に対応して生き残ることに役立つでしょう。

「酸素マスク」は、燃え尽き症候群を防ぐために、人生のバランスをとることを勧める章となっています。筆者が「ほかのすべての道具を使って、自分を健全に保つためのもの」と述べているように、近年、過労死問題、働き方改革が叫ばれている日本では、特に有効活用したい内容ではないでしょうか。「べきである」にふりまわされ、能力の限界を超えて働き続けて心と体を壊したり、他人の要求にこたえようと自らの限界を無視して頑張りすぎることの危険性も指摘している章です。一方で、そういった「燃え尽き」に陥ってしまいそうになっても、そのカオスを生かして人生の方向性を転換させることもできるとものべられています。この章に書かれていることを意識して、柔軟に考えることができるようになれば、困難を逆手にとってより大きな成長も望めるようになるでしょう。


会社に依存せずに自分でビジネスを興したい方は必読

「コンサルタントの」道具箱と書かれていますが、会社に依存せず、自分の足で立ってビジネス界で成功していきたい方にとっては必読書といえます。特に以下の方にはおすすめです。
1.会社や組織のいいなりになって我慢するのではなく、自らのやりたいことを仕事にして幸福に生きていきたい方。
 「仕事=つらいもの、我慢するもの」という考え方ではなく、「仕事=たのしいもの、やりたいこと」にしたいという方にはおすすめです。好きな仕事を請け負うためのコツをこの本から学び取ることができるはずです。
2.誰かから「やらされた」仕事をいやいややるのではなく、自ら能動的に動いて顧客に価値を提供する仕事をしていきたい方。
 この本で述べられている法則や方法論はどれも「課題を解決する」という目的が根底にあります。顧客の課題を解決するという積極的な態度を持っている方、もしくはこれから身に着けていきたい方にはおすすめの本です。
3.将来的に起業を考えていたり、さまざまな分野においてコンサルタント業務を行っていらっしゃる方。

起業を考えている、もしくは実際にコンサルタントとして働いておられる方にももちろんおすすめです。実際のビジネスシーンの様子を通じて各法則が描写されているので、わかりやすく、共感を抱きながら読めることと思います。また、通り一遍のHow to やTipsにとどまらず、根底に流れる考え方、目的、心理学的知見がしっかりとかかれているので、さまざまなシーンでの応用もきくことでしょう。
4,これから就活・転職活動を行おうと考えていらっしゃる方。
 就活、転職活動といったシーンでは、必然的に自分の足で立つことが必要になってきます。その際に必要になってくる、自らの望むものを明確にし、希望通りの職を手に入れるためのスタンスをこの本を通して身に着けることができます。

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コンサルタントの道具箱

コンサルタントの道具箱

  • 作者: ジェラルド・M・ワインバーグ,伊豆原弓
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2003/07/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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