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ビジネス関連書籍の紹介日記です

私の履歴書 経済人 1 日本経済新聞社

日本経済新聞社で連載されている、財界をはじめとする各界著名人のひととなり、幼少期などのエピソードから、下積み、苦労、激動の中を仕事を通じてやりぬいた時期、成功へのあらゆるエピソードをつづっている名物コーナー「私の履歴書」。長年続くコーナーですが、その中でも初期の好評連載の著名人たちのものだけをまとめた1冊です。

「経済人1」とありますが、実はさまざまな分野人物に分かれて、このコーナーをまとめた書籍が出版されているシリーズものです。

本書では、関東エリアの鉄道や宅地開発・百貨店から文化団体などまで広く手掛ける東急グループの創業者五島慶太、プリンスホテルや西武百貨店・西武鉄道など全国に展開する西武の堤康次郎、東大出身で三井物産の社長をつとめた新関八州太郎、松下電器産業(パナソニック)の創業者で経営の神様ともいわれる松下幸之助、伊藤忠商事・丸紅という2つの大手総合商社を創業した初代伊藤忠兵衛に続き伊藤忠財閥を率いた二代目伊藤忠兵衛、東大卒業後逓信省勤務を経て第一生命社長としての大成功をおさめた後東芝再建・そして長く経団連会長を務めてきた石坂泰三、石油系のエンジニアでもあり海事にも強くひとを大切にし世界大戦時にも社員をまもってきた経営スタイルが現代でも高く評価されている出光興産の創業者出光佐三、京都で双子として生まれたのち若いうちから芝居の世界に入り20歳になる前には京都阪井座の座主・その後松竹東京興行主となり現在の松竹の創業者の一人とされる大谷竹次郎、セコムや日本化薬などに続く企業にかかわってきた原安三郎、山種証券の山崎種二、経済官僚でもあり世界的にも広いシェアを誇る東洋製罐の高崎達之助、日興証券の遠山元一、吉田松陰の血筋をくみ大阪・関西財界を代表する繊維産業にかかわってきた杉道助・・・など、日本を代表するばかりか、日本の歴史の中で、まだまだ世に知られることのない働きをしてきた経済人たちを詳しく知ることができる1冊です。

いずれも連載エッセイをまとめたものなので、非常に短編の文章が続き、読みやすい書籍です。

昭和55年6月が初版でちょうど1980年代のバブル期に突入する直前の、経済人がとくにもてはやされ、だれもが彼らのマインドや姿勢、ビジネススタイルにあやかりたい、真似たいと思っていた時期の連載まとめ本ということもあって、とくにきらびやかな成功につながる部分、長く地道な働きを続けた時代からの開花に至るまでの詳細が読みやすい本です。


高度経済成長を支えた経営者達の生き様を垣間見れる

戦前戦中戦後の混乱期を、企業の内部からその活動をしっかりとささえ、企業のかじ取りをし、無事この1980年代まで従業員や投資家、社会で企業サービスを支持する人たちとともに航行してきた経済人が、その人生のもっとも責任もみのりも多い社長や会長という管理のTOPに上り詰めるまで。生い立ちや幼少期から、自らの身辺や国のあらゆる出来事などをまとめて、語りかけるようにつづられたエッセイタイプの文章が多く、まるでそこにその人があらわれて、自らの苦労や体験を伝えてくれるような感覚をおぼえることができます。ということもあり、これまで普通の書籍を読んでも頭に入らない、あまり読書が好きではないといった方でも非常にスムーズに頭に入ります。

日本経済新聞社ということもあり、記者の方も携わって原文をより読みやすく加筆されてから連載記事にされているのか、非常に細かな当時の史実などについては、ほぼ知識が無くても当時の出来事なども頭に広がるようなほど、ちょっとした一言一行にわかりやすさが挟み込まれています。

中でも特に印象的だったのが、パナソニックのお店として全国のありとあらゆる町、過疎地にまで代理店を多数持っている松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助の回。
もともと人を大切にし、松下政経塾をはじめ多くの人を高圧的ではなく指導し良い方向にともに導くこと、解釈や物事へのあたりかたを自然に自らが開けるような指導を行ってきた氏が、「経営的にはあまり成果が上がっていない代理店の話を徹底的に聞く」といったことを続けていた回。黎明期ではなく、既に企業としてはかなりの成功者となっていたときの松下幸之助自身が代理店からのクレームを聞く場面。2日だった予定を3日にまで、多忙な中聞き続ける姿は、通常の企業であればまず考えられないことでしょう。

丁稚奉公から始まって、電球、乾電池などの立て続けのヒット。テレビや家電製品では松下電工やナショナルなしではありえないといわれていたほどのお茶の間への浸透。創業以来の苦労を、全国各地に広がる、多くは家族経営の代理店と共に続けてきた記憶がよみがえったのか、涙する場面などもあり、2000年を過ぎて現在も「経営の神様」「人づくりの神様」などとしてたたえられている氏の本当の姿を知ることができます。

この連載コーナーでは、美談化が多いなどともいわれますが、経営者だけあって実際の苦労部分は本当に多くの方はごく一部しか語っておられません。それでも非常に多くの苦労談が見られることで、自らがビジネスで、あるいは人生で苦難に遭遇したときにいかに切り抜けるべきか、どんな方法があるのかの実例集として読むこともできます。

私は営業などを行わない職種ではありますが、非常にあらゆるめんで参考になる実例集としても読んでいます。

 

とくに経済人をまとめた1冊という事もあり、ビジネスマンにおすすめ

営業先でのトークのネタとしても使え、また経済界の偉人達のエピソードを知ることはビジネスの教養でもあります。前述のように新聞での連載コーナーをまとめたものなのでいずれも短編で読みやすく、語りかけるような口調のものが多くあります。そのため、乗り換えの多い地下鉄通勤など、短い移動時間の間に細切れでも、非常に読みやすくまた頭に残りやすい点も良いと思います。

就職活動や面接、選考合宿などでディベートなどを繰り替えすこともあるかとおもいますが、こうしたときの暗記教養ネタとしても、ただの学校での教育上必要な歴史や文化、専門分野知識以外に、こうしたエピソードは本当におススメできます。

これらの内容を覚えていることで、自らが業務や学業上、想定し得ないほどの困難に立ち向かった時でも、前向きに、彼らの例を思い返しながら、自ら自発的な解決策をとれることもあるでしょう。

また受験生などにもおススメしたい本です。
とくに受験では、何を思いどう判断したかなどのエピソードを、小論文や面接などできかれることがあります。
こうしたときにも単に個人的な体験とその根拠だけではなく、世界の偉人の中で、良く知られながらエピソードとしてはあまり有名ではないあたりを言及することで、教養や読書量などもおのずとはかられます。
こんなときに、伝記としてはあまり見られない経済人をまとめたこうした書籍からの引用は評価が集まりそうです。

経済人以外にもさまざまな業界分野で出版されており、おもわず書店や図書館で立ち読みしてしまいたくなるほど魅力的な文章が多く趣味の読書人にもおススメ。
またあまり歴史の正面には来ない市民たちの歴史の中の暮らしを知りたい人たちにも、こうした経営者が苦労していた時代のエピソードとともに時代を眺めることができる点ではお勧めしたい本です。

toyokeizai.net

私の履歴書〈経済人 1〉 (1980年)

私の履歴書〈経済人 1〉 (1980年)