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100年予測 ジョージ・フリードマン 

この本は2009年10月に早川書房から出版された本です。内容は、今後の100年間について国際情勢の変動要因がどこにあるかを述べたものとなっています。
この本の内容を説明する前に、著者の経歴を述べる必要があります。著者のジョージ・フリードマンは、ホロコーストを生き延びることに成功したユダヤ人の両親のもとで、1949年ハンガリーに生まれ、幼いときにアメリカに渡り、1996年に情報機関「ストラトフオー」を立ち上げ、1999年のコソボ空爆や2001年に発生したニューヨーク同時多発テロ事件について的確な分析や予測を行ったことから、各国政府や軍の機関、ヘッジファンドなどを顧客に抱えていることで知られている人物です。

この本では、まずアメリカという国家の基本的戦略と基本的性格について述べています。現在のアメリカは太平洋や大西洋など世界の制海権を握っており、今後も握り続けることを基本的な戦略に据えていると述べています。理由としては、アメリカ本土の安全保障を万全なものにすることと、国際貿易を支配し続けることを目的としているからです。
そして、この基本的戦略の柱となっているアメリカの海軍力に挑戦しようとする存在に対しては、アメリカは好戦的な姿勢を取るであろうと分析しています。アメリカは建国してからまだ250年に満たない国であり、若い国というものは好戦的であると分析しているのです。

そして、アメリカが基本的戦略を遂行する方法としては、世界に平和をもたらすことではなく、あるいは戦争に完全勝利することでもないと指摘しています。アメリカは、自国にとって強国が出現しそうな地域については、平和を乱そうとします。アメリカが目指すのは、世界の平和ではなく、自らの脅威となる国の出現を阻むために地域の不安定を引き起こすことだと述べているのです。

太平洋においてアメリカの制海権を脅かす可能性がある国家として、中国を挙げています。中国は過去約20年間において経済成長を続け、工業大国として台頭しています。その過程で、大量の消費財をアメリカに輸出し、外貨を稼ぐようになりました。いまや中国は、アメリカ海軍が支配する太平洋を安全に通過できなければ経済成長を維持できることができず、この点について中国政府は脅威を感じていると指摘しています。このため、中国政府は急ピッチで海軍力増強に取り組んでおり、アメリカ海軍による一方的な太平洋支配に挑戦しようとしていると述べています。

この本を読み、太平洋をめぐるアメリカと中国の軋轢の本質を把握することができた次第です。しかしこの本は、21世紀においてはアメリカは広大な太平洋と大西洋の両方の制海権を握り続け、国際政治において強い影響力を持ち続けると結論づけているのです。


アメリカの軍事行動が市場に及ぼす影響を学べる

私は独立系の投資顧問でファンドマネージャーを務めていますが、この本を読んで「アメリカの主導によって、これからも戦争や紛争は絶えず発生するのだ」と確信を抱くことができました。戦争や紛争が発生した直後は、株価が暴落します。リスク回避のために、株式を保有している財団法人や投資顧問、投資信託などが社内の規則に基づいて、いっせいに株式を売却してしまうからです。しかし、暴落したあとは、今度は戦争遂行のための軍需品に対する需要急増や、戦争終結後の復興需要の創出を見込んで株価が大幅に上昇します。

このように、戦争や紛争が発生したときは、株価の値動きには法則が存在するのです。ですから、この本を読んで、これからも戦争や紛争が発生する場合には、株価が大暴落した時点で果敢に大量に株式を購入すれば、高い確率で利益を挙げることができるだろうと考えを持つことができました。

しかも、2017年10月時点では、北朝鮮の核開発問題で、アメリカと北朝鮮との間で戦争勃発の可能性が高まっています。この本を読むまでは「すでに北朝鮮は核兵器を保有している状態であるため、アメリカは北朝鮮を攻撃することは困難だろう」と考え、「アメリカと北朝鮮による激しい言葉の応酬のあとには、結果的にはアメリカと北朝鮮との間で交渉が行われ、なんらかの形で最終合意が交わされて、戦争勃発の可能性は回避されるだろう」と予測を立てていました。

ですから、私は投資顧問のファンドマネージャーとして積極的に株式を買っていたのです。しかし、この本を読んだあとは、アメリカが北朝鮮に対して先制攻撃を実施する可能性が存在すると考えるようになりました。

2017年10月時点では、北朝鮮はアメリカ本土に到達できる弾道ミサイルを開発できていないようであり、アメリカ政府高官が「北朝鮮は6ヶ月以内にはアメリカ本土に到達できる弾道ミサイルを開発するだろう」と公言しています。そのため、6ヶ月以内にアメリカが北朝鮮に対して先制攻撃を行う可能性が高まっていると、判断しています。このため、私は自分の裁量の範囲で、売却できる株式については大半を売却して利益確定することができました。

2017年10月では日経平均株価は上昇を続けていますが、アメリカが北朝鮮を先制攻撃すれば、日経平均株価は2000円から3000円の値幅で下落すると予想できます。この本を読んだことにより、その時点で、あらたに株式を大量に買いたいと判断することができたのです。

金融関連の職業についている方におすすめ

私と同じような資産運用の仕事に就いている方には、この本をお勧めしたいと思います。投資顧問や、生命保険、損害保険、銀行、証券会社などでファンドマネージャーを務めていらっしゃる方にはお勧めできます。

また、商社に勤務して資源開発や資源権益の獲得業務に携わっている方にもお勧めできます。この本を読むと、世界平和は永遠に訪れないと認識させられると思います。このため、世界のどこかで戦争や紛争が発生するたびに、VIX指数と金価格が上昇し、為替では円が買われ、世界中の株式が暴落する現象が発生します。その後、復興需要を見込んで再び世界中の株式が買われていくのだと考えることができると思います。

また、この本は日本政府の中央官庁に勤務する官僚や、政治家、新聞社やテレビ局の記者の方にもお勧めできます。現在、世界の制海権を支配しているアメリカがどのような基本戦略を持ち、どのような行動を取ろうとしているのかを認識することができます。国際政治は力と力の関係ですから、いくら一部の政治家が「いまの日本政府はアメリカの属国ではないか」と批判しても、太平洋の制海権をアメリカ海軍が握っているのですから、日本政府はアメリカ政府の意向を忖度する必要に迫られます。
一方では中国がアメリカに対抗するために海軍力を増強しようとしています。この本を読むことによって、アメリカの海軍力と台頭しようとする中国の海軍力を認識させられると思いますし、政治家や官僚、マスコミは現実を見据えて考えさせられると思うのです。

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100年予測 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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