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激動予測 「影のCIA」が明かす近未来パワーバランス ジョージ・フリードマン

この本は2009年10月に「100年予測」というタイトルの本を出版したジョージ・フリードマン氏が、続編として2011年に早川書房から出版した本です。
前回出版した「100年予測」では、今後100年間にわたって国際情勢の変動要因がどの点にあるのかを、アメリカの国としての基本的性格や基本的戦略を出発点にして述べていましたが、今回出版した「激動予測」では、今後10年間という短い期間に焦点を当てています。

今後10年間に、どのような事実が発生するのか、あるいはどのような決定が下され、世界の人々にどのような影響をもたらすかについて予測がなされています。

そして、この本においてもアメリカ政府の政策や戦略を出発点に置いています。この本では、今後10年間においてアメリカは、イスラム地域において軍事的な均衡を取り戻すことにエネルギーを費やすと予測しています。現状のイスラム世界においては軍事的な均衡が崩れており、イランがペルシャ湾岸において最強の軍事力を持つ国となってしまい、イスラエルは近隣諸国による制約から解き放たれて自らの力で新たな勢力を築き上げようとし、なおかつパキスタンはアフガニスタンとの戦争で疲弊してしまっているという3つの要素に危惧を抱いていると指摘しています。
その解決策としてアメリカは、長年の同盟国であるイスラエルから静かに距離を置き、さらにはパキスタンの国力強化に努め、イランとは協調するであろうと述べています。イスラム社会において突出して力を持つ国が登場することを防ぐことがアメリカの第一の目的なのです。

また、アメリカはロシアとの対峙にもエネルギーを費やすことになると指摘しています。2000年以降、ロシアは旧ソビエト連邦の国土を実質的に取り戻す取り組みを着々と進めてきています。いまやジョージア(グルジア)の一部を支配下におさめ、ウクライナの一部も軍事占領しています。ロシアは再びヨーロッパでの勢力回復を目指そうとしており、アメリカはロシアという地域大国との対峙にも力を注がねばならないと、この本は指摘しています。
また、この本では、ドイツはEUにおけるヨーロッパ諸国との良好な関係構築よりも、ロシアとの利害関係のほうが一致すると結論づけつつあると指摘しています。それを、アメリカは強く警戒しているとも指摘しています。ドイツはロシアから天然ガスの供給を受けており、ロシアはドイツからの先進的な技術供与を必要としています。このためアメリカは、ドイツとロシアの接近を妨害する工作を積極的に進めるであろうと指摘しているのです。
このように、この本では今後10年間が不確定要素と予測不能要素の多い期間であることを強く示唆しています。

国家は国益を第一に判断していることを認識できる

私はこの本を読んで以来、世界で起こっている外交上の決定や戦争、紛争といった事象の本質については、ニュース報道からは知り得ることは困難だということを学ぶことができました。ニュース報道が、外交上の決定や戦争勃発、紛争勃発を伝えるときに、前提としているものが「平和を考えることが政治家の第一の責務であるため、紛争や戦争が勃発したり、外交上の危機が発生しているときには、どちらかが正義でどちらかが悪なのだ」というものであると気がついたのです。

しかし、この本を読み、正義や悪という判断基準で国際政治は動いていないのだと実感させられました。国際政治の舞台では、常にいずれかの国家が自らの利得を第一の判断基準んとして行動しているのだと認識させられたのです。
そして、国家が自らの利得を第一に考えて行動することを前提にして、国際政治における事象を考えると、ロシアがウクライナに侵攻する理由を理解することができました。ソビエト連邦時代は西側諸国との国境からモスクワまでの距離は1000㎞程度はありましたが、
ソビエト連邦が崩壊し、ウクライナ政府が西側諸国寄りの政権となって以来、ロシアの首都であるモスクワが外敵から軍事的圧力にさらされやすい状態に陥ってしまったのです。そのため、ロシアはクリミアを併合し、ウクライナ東部に侵略しているのです。ロシアは首都モスクワを守るために、できるだけ実質的な国境線を西側へ遠ざけたいと考えているのだと理解することができました。
この認識については、ニュース報道だけを鵜呑みにしていたのでは、とうてい到達することのできない認識だったと思います。この本のおかげで、自分自身の認識力を深めることができました。

そして、私は資産運用の仕事に従事していますが、常に世界中で戦乱は勃発するし、紛争も勃発すると認識するようになったおかげで「決着」というものはないことを前提に、仕事上の行動を取ることができるようになりました。具体的には、紛争には始まりと収束がありますが、ひとつの紛争が終われば、また別の場所で紛争が起きるのです。

つまり、紛争勃発時に株式市場において暴落が発生すれば大量に買い注文を入れ、紛争が終結して株価が天井圏をつけたときには、大量に株式の利益確定売りを出せばよいのだと認識を持つことができるようになったのでした。
そのため、仮にアメリカと北朝鮮との間で戦争が発生しても、私は冷静に対応できると考えています。


マスコミ関係者におすすめしたい一冊

マスコミ関係者におすすめしたいと思います。新聞社やテレビ局の報道内容を見ていると、世界のどこかで紛争勃発危機が発生したり、実際に戦争が発生すると、どちらかの一方が正義や弱者で、どちらか一方が悪であるかのような構図を用いる習性があります。

しかし、国際政治とはそれほど単純化されたものではないことが、この本を読むと理解することができると思います。日本を含めて、それぞれの国が国家を防衛するため、あるいは勢力圏を維持するために軍事行動を起こしたり、外交活動を展開しています。正義のためではないのです。そのことを、どれほどのマスコミ関係者が理解しているのか疑念を抱かざるをえません。

具体的には、北朝鮮が頻繁にミサイルを発射し、核弾頭開発にエネルギーを注いでいます。しかし日本のマスコミは、なぜ北朝鮮が核弾頭の開発にエネルギーを注ぐのかについては的確な報道ができていないと感じます。おそらく北朝鮮は、核兵器を持つことによって、アメリカからの軍事占領を防ぐだけでなく、中国からの独立を維持できると考えていますし、ロシアからの影響も受けずに済むと考えているのだと思います。さらには、韓国による朝鮮半島統一も防ぐことができると考えているのだと思います。
その唯一の解決策が核開発なのだと思います。しかし、そのことさえ解説できないマスコミ関係者が多すぎると思います。北朝鮮がミサイルを発射すると、多くのマスコミは見出しに「なぜ?」とか「無謀な挑発!」といった文言しか書き連ねることしかできません。あまりにも洞察力が低すぎると思えてならないのです。

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