ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

世界で最もイノベーティブな組織の作り方 山口周

著者は組織開発が専門の世界最大のコンサルティング会社ヘイグループに所属する山口周氏で、イノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成、キャリア開発のスペシャリストです。

日本におけるイノベーションにまつわる議論をすると「日本人には創造性がないからイノベーションに不向き」という誤解が必ずでてきますが、本当に日本人は創造性がなくイノベーションに向いていないのでしょうか。

第一章ではこの疑問に対して、自然科学や長編文学、アニメ、建築・工学分野といったいくつかのカテゴリにおいて、日本人がどれほど創造性が高いかを説明した上で、日本企業からイノベーションが生まれない本質的な理由を、「個人の創造性」の問題ではなく「組織の創造性」の問題だと捉えます。

第二章以降では、著者の所属するヘイグループがフォーチュン社ち共同で行っている「世界で最も賞賛される企業」に関する調査において、「最もイノベーティブな企業」として上位にランクインした企業への組織開発プロジェクトによって得られたデータを参考に、「イノベーションを継続的に起こすことに成功している企業/組織」に共通している特徴を挙げ、その特徴がどのようにしてイノベーションの実現に寄与しているのかをみていきます。「組織風土」に焦点を当てると「人材の多様性」「上下間での風通しのよさ」「失敗に寛容な文化」が特徴になり、「組織構造」に焦点を当てると、「ネットワーク密度」「組織における遊びの存在」「非線形で柔軟なプロセス」が特徴になります。そして、この特徴をイノベーションへ昇華させるために、イノベーティブな企業ではどのようなリーダーシップが求められ、発揮されるのかについて考察していきます。

最後に、ここまでみてきたイノベーティブな企業に共通して見られる特徴を獲得し、実際にイノベーションの発生までさせるために、組織開発・人材開発上の「やるべきこと」と「やるべきではないこと」について人材採用、育成、配置、評価と報酬などの観点でまとめられています。本書は一貫して「イノベーションの生み出し方」というよりも「組織論」と「リーダーシップ論」を問題として扱っています。

結論として筆者は、イノベーションの実現に必要な要素として組織とリーダーシップの二つを最大の要素として挙げており、この二つを適切な状態までもっていくことができればイノベーションは自然と発生するものと考えています。


イノベーションを起こすにはリーダシップが不可欠である

「日本人はイノベーションを起こすのが苦手である」。よく見聞きする言葉をだからなのか、いつしか固定概念として私も認識しているようになりました。しかし、本書はその反証から始まり、実は「日本人」は昔から創造性を発揮している例が多く、世界的にみてもそのレベルはとても高いものだということを知りました。

また、日本からイノベーションが生まれにくいとされている本当の問題は、個人ではなく「組織」「リーダーシップ」にあるのだという見方を知りました。「日本人は苦手」だと極端にいうと人種の問題でありどうすることもできないことのように思えますが、「組織」や「リーダーシップ」という人が手を加えれば変えられるものということを知るだけで、どうにかできる問題までハードが下がってように思います。

私は現在勤める会社でリーダー職にありますが、もっとも参考になった箇所は第四章の「イノベーションを起こせるリーダー、起こせないリーダー」です。本書でも指摘がされていますが、リーダーシップ論は書籍やビジネス雑誌でもよく扱われるテーマであるものの、その主張はどれも「その人ならでは」人格や能力に依拠しているように思え、自分に置き換えたときに活かせるリーダーシップなのか釈然としないことも多いものです。筆者によるとそれらの出張が、文脈からリーダーシップを分離し、どのような文脈でも通用する「普遍的な原理」としてそれを捉えているせいで、リーダーシップというのはチームメンバーの能力レベルや組織の置かれた状況が違ってくれば有効なリーダーシップのあり方も変わるため、「リーダーの属性」として独立する概念ではないということをハッキリ述べています。

その上で、文脈によって求められるリーダーシップのあり方が異なるということは、リーダーシップには複数の側面があり、文脈によってそれらを組み合わせ使い分けることができるリーダーが最も有能だとして、「指示命令」「ビジョン「関係重視」「民主」「率先垂範」「育成」の6つのリーダーシップスタイルを提唱しています。確かに、一般的には「ビジョン型」のリーダーをフューチャーする傾向がありますが、組織の状態によっては必ずしもそれが正しいリーダーシップとは限りません。そのあと、イノベーションを起こすリーダーはどうのようリーダーシップスタイルを発揮しているのかという本書のポイントに繋がっていくのですが、私は自分が身を置く組織の状態と、著者が提唱する6つのリーダーシップスタイルを照らし合わせることで、自分の進むべき方向が見えたように思えました。


すべてのビジネスパーソンにおすすめの書籍

本書は「組織論」と「リーダーシップ論」を切り口にした、日本企業がイノベーションを起こせるようにするにはというテーマの本ですが、イノベーションを起こしたいと考えている企業の一定以上のプレイヤーの方だけでなく、ビジネスをしている方全員におすすめできる本です。

イノベーションという言葉は「革新」「なにか新しいものを生み出す」というような意味合いで使われることが多いですが、もともとは「自分を新たにする」という意味を持っています。イノベーションを起こせる組織を求める人はもちろんですが、組織の中でイノベーションを起こすことを求められている人にも、イノベーションを起こしている企業に共通する組織はどういうことしてしていて、どういうことをしていないのかやその組織のリーダーはどういうリーダーシップをとっているのかということを知ることはとても有用であると思います。

面白いことに、フォーチュン社の調査では「最もイノベーティブな企業」のランキングが上がれば上がるほど、イノベーションを経営課題として掲げている企業は少なるなるようです。

逆に、ランキングが下になればなるほど、イノベーションを経営課題として掲げているようです。イノベーションを起こすことを求められている人の中には、もしかすると上から「イノベーションを起こせ!イノベーションが大切だ!」と言われている人もいるかもしれません。イノベーションは手段であり、目的でありません。そこを見誤らないためにも、本書はいい気づきをたくさん与えてくれます。

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世界で最もイノベーティブな組織の作り方 (光文社新書)

世界で最もイノベーティブな組織の作り方 (光文社新書)