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世界を変えたいなら一度 ’’武器’’を捨ててしまおう 奥山真司

世に戦略について書かれた本は本屋さんに星の数ほどもありますが、戦略学者によって書かれた本はそこまで多くないのではないでしょうか。「世界を変えたいなら一度 ’’武器’’を捨ててしまおう」は地政学・戦略学者の奥山真司氏による戦略について書かれた本です。著者はこの本以外にも地政学についての著作を多く持たれています。奥山氏はイギリスの戦略学の権威でレーガン政権のブレーンでもあったコリン・グレイ教授に師事し戦略学を学びました。

その中で企業や国家がどのような戦略を持って事業を行っているのかを洞察し、その戦略のたて方が個人の人生の上での戦略に活かせることを発見し、本作を著作されました。

本書は人生をよりよく生きて行くため、仕事をするための戦略について記載された本です。まずヨーロッパ人と日本人を比較し、ヨーロッパ人が戦略にすぐれ、日本人がそうでない理由を解き明かします。

氏によるとヨーロッパの国々は歴史的に周辺の国々との戦いや政治的駆け引きを経て現代まで生き残ってきました。ユダヤ人などはそれの最たるもので生き残るために国から国へと渡り歩き、それぞれの国でいかに富と立場を手にいれるかに腐心しました。一方日本は海に囲まれており、外国からの干渉があまりなく、そこまで外交事に苦労することがなかったことや江戸時代に泰平の時代が続いたことから、いかに生き残るかを考えるのではなく、いかにお上のいうことを忠実にこなすかということに頭を費やすようになりました。ですので、日本では技術的な思考が進み、ヨーロッパ人は戦略的な思考が得意になって行ったのです。

本書のタイトルは「世界を変えたいなら一度 武器を捨ててしまおう」ですが、この武器は技術を指します。どういうことかというと戦略論とはそもそも戦争に勝つために発達した学問なので、学問の中で戦争に関わる事柄を分類しました。戦争において武器とは相手を殺すための道具です。最も具体的で抽象度の低いカテゴリーと言えます。その武器の上に、局地戦を戦うための戦術、戦争の全体像を捉えながらどこに資源を投資するかを考える戦略、そしてそもそも戦争を含めた国の発展・生き残りをかけた様々な手段を包括するカテゴリーとして政策というように様々なカテゴリーが存在します。

企業や国家が行なう事業はどの階層のカテゴリーを意識したものなのか正確に捉える必要があります。つまり局地的な戦い(企業で言うところのある市場でのシェア)に特化した方針で事業(つまり戦術レベルの施策)をおこなっていると、より上の階層から仕掛けられた時にあっという間にひっくり返されてしまう可能性があるのです。世界大戦中日本は零戦などの航空機技術に力を注ぎましたが、技術で勝てないアメリカは頑丈な戦闘機を造り、それを上空から一気に降下させ零戦を叩くという戦術で破りました。
 タイトルの武器を捨てようとは、まず技術(武器)に依存した戦い方をやめて、戦略や政策等上のカテゴリーで見通しを立ててから、もし必要なら下のカテゴリーの技術を磨こうというメッセージなのです。

ビジョンから今を生きる戦略を見いだせる

この本は今後の人生を考える上で非常に役に立ちます。つまりタイミングを選ばずどのように生きて行きたいかを考える上で欠かせない本です。この本から学べる一番大きなことは戦略図について書けるようになることです。戦略図とはこの本であげられている概念について上から順に欠き示して行くことです。丁度ピラミッドのように三角形を書いてその中に何本か横線を引きます。上から人生観・ビジョン、政策、戦略、戦術、武器となります。本当はもっと詳しいですが、それは実際に読まれてみて下さい。

本の中ではそれぞれの概念について詳しく説明されています。人生観・ビジョンはこのように一生を送ろう、このような使命があるなどと人生の活動を考える上で根本になる考え方です。国家の例でいうとこのような国になろうというものです。その基本的な考え方から政策という概念が作られます。その政策から実際にどの戦場に注力し、どのように資源分配を行なうのかを考える戦略、局地戦を生き抜くための戦術、そして実際にそれらを支える武器という概念が必要になります。

もし、音楽で世界の貧困問題を解決するという人生観・ビジョンを持っているならば、それをもとに政策を考えます。政策は世界的に影響力のあるミュージシャンになるというものになるはずです。すると次のカテゴリーの戦略は世界的なミュージシャンになるためにどの分野に注力するかということになります。クラシックでいくのか、ロックなのか。その下に戦術(まずは国内でトップになる)、武器(この学期の技術を磨く)、のように上位のカテゴリーから今やるべきことまでをかき出すことが出来ます。

これを書いて定期的に修正を繰り返すことで、自分が掲げるビジョンに沿った行動をとれるようにもなるし、自分がいま行なっている活動の意味を知ることができます。逆にこのような考え方を無視して自分や自社が持っている技術がいつまでも通用するという前提に頼って会社の計画や自分の人生計画を立てると環境が大きく変わった時やその技術が必要でなくなった時に方向転換を余儀なくされます。

またこの本で学んだもう一つ大事なことは累積戦略と順次戦略です。順次戦略は前述の戦略図のようにゴールまでの図を書いて着々とプロセスを進めて行く方法です。累積戦略は日々地道に行なって行く行動です。例えば毎日行なう読書や勉強等があげられます。第二次世界大戦時のアメリカで言うと、東南アジアで敵国である日本の船を一隻ずつ地道に沈めて行くという戦略です。いつ効果が現れるかは分かりませんが、いつか閾値を突破し、日本軍は貨物や兵員を十分に運ぶことが出来なくなり、戦うことができなくなります。人生においてはこの二つの戦略で努力を続けて行くことがブレークスルーを起こしやすくすると書かれています。

順次戦略は計画的に事業を進めて行く上での基準となり、累積戦略は精神的な土台や知識の累積による新しいアイディアの創出に役に立ちます。

今後どう生きて行くかを考えて行く上で、戦略図により順次戦略を、また日々少しずつ努力して行く累積戦略を合わせて立てることで、目標の達成率を上げることが出来ます。


社会人だけなく大学生にもおすすめできる一冊

社会人の方全員におすすめ出来ます。また今後人生を考えて行こうという大学生にもおすすめ出来ます。今後の人生をどう生きるか、どのように働いて仕事で結果を出して行くかを考える上でまず読まなければならない本です。

この本は前述の通り、国家や企業が行なってきた地政学や戦略学の概念を個人の人生の歩き方にも応用したものです。自分が進むべき道を決めたい時にもあるいは既に決めた進む道を持っていてその道の進み方を決める時にも大変有用なアドバイスを与えてくれます。
まず、自分が今注力しているのがどの階層の概念なのかを考えましょう。武器レベルなのか、戦術レベルなのか、戦略レベルなのか。自分はギターが好きでずっとギターで生きて行きたいという方は、まずギターは武器レベルの概念であることをしりましょう。その上で人生観・ビジョンから戦略図を書いていきましょう。

その過程で本当に自分が人生で行ないたい高い抽象度の目標が見えてくるはずです。イギリスのボノのように音楽で世界の貧困問題を解決したいとなるかもしれないし、ギターをきわめて新しいジャンルの音楽を作りたいとなるかもしれません。その人生観・ビジョンから政策、戦略、戦術まで落として行って、武器であるギターをどのように磨いて行くか考えれば良いのです

社会人の方も同様にやりがいを持って充実している方なんかも一度、自分の人生観・ビジョンから戦略図を書いて現状の方法のままでいいのか、修正する必要があるのかを考えることができます。また今のままではいけないと不満を持っている方も、現在自分がどのカテゴリーに注力しているのかを確認しましょう。

そして人生の大きな目標を見つけて(スケールの大きさではなく、最終的にどのような人生を送りたいのかということ)、抽象度の低いカテゴリーまでかき出して行きましょう。きっと人生に有意義な気付きを与えてくれるはずです。

www.lifehacker.jp

世界を変えたいなら一度

世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう