ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 山田真哉

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』は、2005/2/16に光文社新書より発売された文庫本です。

著者は公認会計士・税理士の山田真哉さんです。
著書には、『食い逃げされてもバイトは雇うな』(2007年/光文社新書)、『新装版 世界一やさしい会計の本です』(2009年/日本実業出版社)など、多くのベストセラーがあります。
小説作家としても活動されており、『女子大生会計士の事件簿』のような会計知識を活かした物語も執筆されています。

 この本を通して得られるのは、「大雑把な会計の知識」と「会計への苦手意識の払拭」です。
会計の知識を学ぶ本というと、非常に難しいイメージがありますが、本書は多くの方が挫折することなく読める、読みやすい本という点が口コミで広まりベストセラーとなりました。

「いわゆる会計の入門書ではありません」と紹介されるように、難しい専門用語や、会計のかの字も知らない人間には意味さえ分からない財務諸表はひとつも出てこず、ちょっとしたトリビア集や小話集のように読むことができる本です。

さて、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は、タイトルのように身近な疑問から難しく感じる「会計」の知識を解説してくれる本です。

 

「機会損失」「決算書」といった話に対しては、スーパーマーケットの完売御礼が例として登場。

「キャッシュ・フロー」は、飲み会でよくある割り勘。

「回転率」は、2着で満足度の高い麻雀を例に解説します。
人によっては聞き慣れない「連結経営」に関しては、住宅街にたまにぽつんとある高級レストランがなぜ潰れないのかという疑問から発展することによって解説がされます。

 

この他にも、「ドン・キホーテ」のような実在のお店を引き合いに出し「在庫」と「資金繰り」に関して解説しているので、本当に身近な問題として会計の知識を知ることができます。
小説家としての活動をされている方ということもあり、その読みやすさ、話運びの上手さは折り紙つきです。

この本自体、「リスクアプローチ」という会計の知識に沿って書かれ、その戦略は功を奏しています。
リスクアプローチとは、財務諸表を監査する場合などに、限られた人員や時間でコストをかけて全てを精査するのではなく、特に重要な一部分を効率的に調べていく会計監査の手法です。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は、難しい専門用語や財務諸表、会計の初心者がつまずく数学の公式や歴史的な説明など、「面白くない」部分を削ぎ落とすことでベストセラーとなりました。

その人気は、『潰れないのはさおだけ屋だけじゃなかった』(2005/宝島社/リテール経済研究会三銃士)のような本が出版されるほどでした。

「身近な疑問」から会計の知識をつけることができる

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』の「はじめに」の項では、この本を書くにあたって著者の山田真哉さんが決めた以下の3つのことがルールとして示されています。

◆ 日常の気になる疑問から話をはじめる
◆ 会計の説明も教科書的な順番を取らない
◆ 生活でも役立つような身近な知識も入れる

これらのルールに従って書かれた本書は、会計を専門としていない方でも日常生活に役立つ場面があります。

例えば、「キャッシュ・フロー」という用語は、飲み会でよくある割り勘を例にとって解説されると前述しました。
この解説は、そのまま飲み会の割り勘の場面で使うことができます。

まず、キャッシュ・フローとは、キャッシュ(現金)のフロー(流れ)のことです。
少しだけ(本書でも詳しくかつ分かりやすく説明されている)専門用語を使うと、掛の状態や負債などとは関係のない、現金の動きそのもののことです。

さて、飲み会で割り勘をする場合です。
著者の友人は、その際に必ずと言っていいほど「とりあえず払っておくね」と、クレジットカードを出していたと言います。
これを会計学的に考えると、「フリー・キャッシュ・フロー」(自由に使えるお金の額)が増えるということです。
クレジットカードとは、利息がつかずに、手元の現金を来月の支払いまで借りることができるツールです。
利息がつかないという点においては、クレジットカードを揶揄して使われる「魔法のカード」という言葉は間違っていません。

これも本書で説明されるのですが、金融の世界では、将来手に入るお金よりも、現在手元にあるお金の方が「同額でも価値がある」という考え方がされます。
というのも、現在手元にあるお金は、そのお金を投資に回し運用したりすることで、それを元手として将来の同じ時点で更に多くのお金を生むことができる可能性があるからです。

つまり、クレジットカードで飲み会の「お会計」を一括で払い、「割り勘代」を現金で回収することは、手元の現金を増やし続けることになる……ということです。

本書は、このような話が沢山載っている本ですので、もし「面白い!」と感じたならば、ご一読してみてはいかがでしょうか。
また、このクレジットカードの話の場合は、飲み会でのちょっとした話として、とても使いやすいので話が弾まない上司に誘われた飲み会など、半分フォーマルな場で本当に重宝します。

この他にも、「身近な疑問」から始まりいろいろな会計知識を手に入れることができる本作は、題名にもなっている「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」「50人に1人が無料! は大したことない」といったキャッチーな話が載っています。
クレジットカードの話に関しても、おそらく著者の友人は「クレジットカードのポイントがつくから」くらいで払っていたのでは? というオチまで用意されています。

会計の知識を手に入れられる本書ですが、最も有効に活用できるのは「会社の休憩時間にするちょっとためになりつつも面白い話集」としての利用かもしれません。

 

数字が苦手であるが会計の知識をつけたい方におすすめ

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』は、以下のような方に読んでほしい1冊です。

◆ 専門用語や公式の暗記が苦手な方
◆ 公式や計算、数学が嫌いな方
◆ 「なんとなく」でいいので会計の本質を掴みたい方
◆ 会計を学ぶことに意義を見いだせない方
◆ 会計を学んだはいいが、日常生活での活かし方が分からない方

このような方は、貴重な時間を割いて読んでも後悔することはないと思われます。
反対に、十二分に会計の知識を持っていて本職としての職歴も長い会計士や税理士の方には、基本的なことが多い書籍のため、あまりおすすめできないものとなっています。
ですが、「この考え方はちょっと違うだろう」という少々斜に構えた楽しみ方もできるかもしれません。

会計知識を学ぶモチベーションを保てない新入社員の方や、経済・経営学部の大学生の方は本書を読むことで、「会計を学ぶことで、日常生活でも「得」ができる」ということを教えてくれる1冊となっています。
また、「身近な疑問」がテーマの本書は、日常の買い物やクレジットカード決済を題材としている部分もあるため、一斉を風靡した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(2015/11/28/新潮文庫/岩崎夏海)ではありませんが、「もし専業主婦が山田真哉の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を読んだら」というような効果があるかもしれません。

専業主婦以外にも、最近少々懐が寂しい方が読むことで、長期的な視点で「お金を減らさない」ための会計学的アプローチが書かれていますので、大富豪以外の方にはおすすめできる本と言ってもいいのではないでしょうか。

toyokeizai.net

さおだけ屋はなぜ潰れないのか??身近な疑問からはじめる会計学? (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか??身近な疑問からはじめる会計学? (光文社新書)