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アドラー流たった1分で伝わる言い方 戸田久実

フロイトやユングと並び、心理学の三大巨頭と称されるアルフレッド・アドラーの心理学を「日常的な会話・コミュニケーション」に役立てて、少しでもより良い人間関係をラクに築いていきたい人のための伝え方の本です。

著者の戸田久実さんは講師歴20年以上の、ベテランコミュニケーション指導者です。毎年5000人以上に指導をしている戸田さんのノウハウを、更にアドラーの心理学を応用してより人に分かってもらうため、伝えるためのコツを織り交ぜた内容になっています。

アルフレッド・アドラーは「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と言っています。人間関係は、人間同士にとって永遠のテーマであると同時に、コミュニケーションなくては成り立たないのです。

この本の最初では、普段何気なく口にしている「頑張ったね」「すごい!」「よくやったね」「上手にできたじゃない」などの、褒め言葉が持つ伝わりにくさを指摘しています。褒める言葉として、間違ってはいません。ですがこれらの言葉には「相手を評価する目線」が含まれています。言われた相手になってみれば、自分はこの人にとって「評価すべき対象」であり「上から見てもいい存在」と、たとえそれが無意識のうちでも感じ取れてしまったとしたら、いい気分ではありません。それに、褒めるというご褒美がなければ動いてくれない関係性になる可能性もあると言います。

しかし先ほどの褒め言葉にアドラーの心理学を反映させると、次のようになります。

「○○さんの今回の結果、私もとてもうれしい」
「ありがとう、○○さんがしてくれたこと、とても助かるよ」
「□□は、○○さんが苦心されてきたところですよね」

先ほどとどこが違うか、簡単に言えば共感の目線と、相手がしたことへ対等な目線をもっているという点です。褒めること、そのものは何も悪くありません。しかし正しい伝え方をしないと、それぞれがもつ違う価値観やこだわりに阻まれて、思うように自分が持つ気持ちも伝わりません。

こうした、日常で起こりうる相手に気持ちを伝えたいとき、自分の気持ちを知ってほしい時に、お互いにとってより良い形で、尚且つ伝わりやすくするためのノウハウを学べるのが、この本の特徴と言えます。
更に最初の部分でアドラーの心理学について解説があるのですが、人間関係やコミュニケーションに特化していながら、分かりやすく記述されているので、体感的にアドラーの心理学のさわりを学ぶのにもとても役立つ1冊だと思います。

 

話の聴き方を学ぶことで話し方も身につく

この本の中で役に立ったのは「この人は信頼できる!」と思われる聴き方についてでした。仕事柄、様々な年齢層の男女に接してお話をお聞きする機会が多いのですが、そうすると中には「苦手だなぁ」と感じてしまう人や「どうコミュニケーションを取れば話してくれるかな」と考え込んでしまう人もいます。話を聞くだけ、ならまだしも、聞いた内容に重要な事柄が含まれていることもしばしばで、話を聞く、というのは私の仕事の中でも大きな意味を持っています。

ところがこの話を聞く、というのは、簡単なようでいて非常に難しく、苦戦することが殆どです。最近は「共感して聞く」ことや「傾聴」という言葉もよく耳にするようになりましたが、具体的なテクニックとなると、どうも外面だけになってしまうのがネックでした。
その点、この本では8つのポイントに分けて、使いやすい言葉を例として挙げてくれます。この言葉を使えばいい、というだけではないと読むだけで分かります。なぜならそのページにたどり着くまで、アドラーの心理学の特徴である「勇気づけ」の理論を読み込んだ上で、こうしたテクニックが披露されるからです。言葉の使い方を変えてみることを提案されるのは良くありますが、どうしてそうすればいいのか、自分が理解していないとバリエーションも増やせません。

8つのポイントのうち、私は「相手の主観に流されないで聞く」という点が、とても役に立ちました。私は「相手がこう話しているから、この通りなんだ」と、相手の話を丸ごとうのみにしてしまうというか、相手が嘘をついたり、都合よく話していると思わない性格です。馬鹿正直、とも言われるので、相手の言葉に疑問を抱かないまま、騙されたこともあります。

でも実際には相手が嘘をついていて、結果として正しいアドバイスや判断をすることが出来なければ、それは自分にも相手にも損になります。なので相手の話を聞きながらも、詰め寄らないように「○○とお話しされたのは、□□さんご自身ですか?」など、確認を取ることを、少しずつ行うようにしました。すると、びっくりするぐらい、相手が自分にとって都合よく話そうとしていることが分かったのです。

こうして実際に行動に映そうと思えたのは、この本の構成にもあります。理論や考え方から説明してくれる本は、自分にとっては納得した上で取り入れられるし、何度でも読み返せる部類に入ります。このアドラーの心理学についても、監修の岩井俊憲さんは「マンガでやさしく分かるアドラー心理学」など多数のベストセラーを持つ方なので、かなり分かりやすいです。


口下手と思っている方におすすめの一冊

この本が特にオススメできるのは、次の3点に当てはまる人です。

・自分のことを人見知りだと感じている人
・自分を表現することが得意ではない人
・嫌われたくなくて、怖くて口をついつぐんでしまう人

会話下手、と言われやすいタイプの人には、おすすめだと思います。たとえ内容を実践できなかったとしても、日常の会話がお互いにとってどんな意味を持っているのか、理解するきっかけになると思います。会話自体への恐怖心や、自分が発する言葉について振り返って考えることが出来るので、実際の会話で訓練する前に脳内シミュレーションを行えます。コミュニケーションは経験だけでなく、学ぶところからでも増やせると思うのです。
人間関係がうまくいかない人、うまくいく人、についてポイントを押さえて書いてあるので、読むと自分に当てはまって落ち込んだこともありました。ですがうまくいく人の方に少しずつでも傾けられるようにしていきたい、と無意識にでも感じることが出来るので、感じ方が読むだけで少しずつ変わるのが分かります。もちろん個人差はあると思いますが、こういう考え方もあるんだ、と知るきっかけになるので、おすすめです。
また、他にはこんな人にもおすすめです。

・気が付くと相手と口げんかになってしまいがちな人
・自分の言いたいことが伝えられず、後悔することが多い人
・他人への指摘がうまくできない人
・話すのが苦手な相手がいる人

人が怒りを感じる時、どう謝ればその人に自分の謝意が伝わるのか。自分が言いたいことを相手に伝える時、大切にすべきことは何か。人に指摘をする、ということは、相手にどんな影響を及ぼすのか。そうした内容を、日常や仕事の場など、場面別に詳しく紹介しています。
どんな人にとっても大切な、人間関係。自分の日頃の行動を振り返るきっかけになる、おすすめの1冊です。

anond.hatelabo.jp

アドラー流 たった1分で伝わる言い方

アドラー流 たった1分で伝わる言い方