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ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座 ダン・ケネディ

ダイレクトレスポンスマーケティングを学んでいる人であればよくご存知の「ダイレクト出版」から出されている本書は、DRMの権威であり、超一流のマーケターであるダン・ケネディの著作です。もちろん、ダン・ケネディといえば、マーケティングコンサルタントとして、あるいはコピーライティング関連の著作などでよく知られていますが、本書はそういったダン・ケネディの本流の仕事とはまた違った色の作品です。

『世界一シビアな「社長力」養成講座』と銘打たれた本書は、主にスモールビジネスの経営者向けに書かれた本ですが、内容はそこで働く従業員にも、経営者自身にも非常にシビアものです。

内容としては、ほんとんどが従業員を雇い入れること、雇い入れた後にどうマネジメントしていくか、ということが書かれていますが、全篇に貫かれているのは「弱者は去れ」という非常に明快な思想です。

スモールビジネスにおいて人を雇うということは、社会における雇用の創出などという戯言のためではないし、雇い入れるのであれば必ずそれ以上の利益を出さないといけないし、できるのであれば雇わないのが一番だ、というのが著者の立場です。ダン・ケネディにいわせれば、従業員は経営者から時間も金も盗んでいく泥棒であり、実際に成功した経営者の本音はそうであるということを隠そうとしません。そして、「社員がいたからここまでこれた」だとか「最も大事な経営資源は人である」などの甘言は、少なくともスモールビジネスにおいては欺瞞であり、従業員を雇う唯一の目的は「利益」を上げることである、という身もふたもない事実が語られています。従業員を応募する際、有能な人物だけに振るい分ける方法、従業員は監視しろという教え、叩いても凹まないタフな人物を使えという助言等々、実際ビジネスの現場において人を雇ってマネジメントし、そしてコンサルタントとして数多くの現場を経験してきた著者だからこそ書ける実践論が数多く散りばめられています。「弱者は去れ」というのが全篇につらぬかれる思想といいましたが、主に対外的な弱肉強食よりも、敵は内部にいるということが強調されています。従業員を仲間だと考えてはいけない、いつでも経営者側と利害関係が対立する敵に成り得るのだ、という徹底したブレない思想がそこにはあります。本書はスモールビジネスの経営者にはもちろん、採用担当や、あるいは経営の中核を担う従業員が読んでもタメになる本だといえます。もし読んで、このシビアさから逃げ出したくなるようであれば、あなたのビジネスもうまくいかないでしょう。そういう意味では試金石的なビジネス書といえます。

著者のビジネスに対するタフさを学べる

ダン・ケネディの著作は前からよく読んでいましたが、本書では他の著作と違い、仕事に対する厳しさというか、この資本主義の世の中で生きていく厳しさをまざまざと見せつけられた思いがしました。ダン・ケネディ自身が、スモールビジネスの経営者であり、利益が出ない時は死を覚悟しなければいけないという鉄則を忘れないように、デスクには首吊りロープを模した置物を置いて、仕事に励んでいるらしいのです。

今でこそ超一流のマーケターといえるダン・ケネディですが、やはり苦境の時代もあり、支払いの遅れた請求書の束が積み上がり、事務所が立ちいかなくなりそうな頃もあったそうです。そんな苦境の中で、支払いの催促の通知は3ステップぐらいに分かれていて、1回目、2回目、3回目と口調が変化していって、最終的に債務者を支払わざるを得ないように追い込んでいく、ということを発見し、見込み客に表現を変えて3回に渡りセールスレターを送るという3ステップレターの手法を考え付いたとのこと(今ではよく広まっている手法ですね)。私はこのダン・ケネディの有名なエピソードが好きなのですが、こういったところに、苦境をむしろ好機ととらえられるダン・ケネディの、精神的なタフさを感じ取れるかと思います。

 

個人的に、仕事柄会社の経営者にお会いしたり、会食をする機会に恵まれることも多いのですが、本書で言われてることは本当によくわかるなと思いました。失敗していく経営者は、どこかしまりがないのです。従業員に好かれたいとでも思っているのでしょうか、基本的に部下に甘いですし、自分にも甘いという人が多いような気がします。一言でいえば「良い人」です。大企業の中間管理職的なポジションであれば、こういった人の良さがむしろプラスに働く場面もあるかもしれませんが、経営者としては失格です。

対して、成功している経営者はどこか「鬼の顔」を持っているものです。対外的にそれを垣間見せることもありますが、むしろ社外でそういった面を露わにすることは少ないでしょう。なので、成功する人物とそうでない人物のどこに差があるのか世間的には分かりにくいのですが、裏の顔を知ればこれは明らかです。そういった、自分がどこか感じていたけれど、言語化できなかった認識がやはり間違っていなかったのだということが再確認でき、非常に参考になりました。

人に甘くできるというのは、自分にも甘いから。そういった甘さが身を滅ぼすのだということがよく分かります。


経営者はいうまでもなくサラリーマンにもおすすめできる一冊

ダン・ケネディは今では一流のマーケターですが、ゼロから起業して成功した起業家でもあります。本書ではそういった、彼が、成功者として明かす本音を余すところなく書いています。世間的になかなか知り得ることのない、経営者の裏の顔がよくわかる本といえます。学者が書いたような理論が散りばめられているわけではないですし、有名なコンサルタントが書いた、読むだけでビジネスで成功した気にさせてくれるような類の本でもありません。そういった意味では、類書を探すのは難しいでしょう。ここで書かれているのは等身大のダン・ケネディそのもの、表立った舞台ではなく、あくまでも親密な仲間内でしか聞くことのできない彼の本音のものです。読む人間にとって毒にも薬にもなるでしょう。
もちろん、起業家(企業家)向けの本なのですが、経営者の本音を知れるという意味では、いわゆる雇われの身のサラリーマンや、中小企業で経営を担う立場にいる従業員の方にもおすすめができます。

最後に、会社は対内から破綻していくことが多いといわれます。従業員が会社を蝕んでいるケースも多々あるでしょう。そんな場合でも、やはり一番の責任は、経営者にあります。明確なレギュレーションを指定できていなかったり、従業員の管理が甘かったりと、どこかに綻びがあるものです。それをただ単に従業員の怠慢だということで済まさずに、結局はすべて雇う側に問題がある、と本書では最終的に経営者に内省を迫っています。そういった意味で、本書は経営者にとっていちばん厳しい本なのです。自分に喝を入れたい経営者の方に是非おすすめします。

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ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座

ダン・S・ケネディの世界一シビアな「社長力」養成講座