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不発弾 相場英雄

この本は金融小説という形態をとっています。しかし、フィクションとノンフィクションが同居しており、ただの小説ではなく金融本と言える本です。
登場する企業や人物、ストーリーは、金融業界に詳しい作者の取材をベースにして書かれています。そして、本に登場する企業や人物は、すべて名前が伏せられているが、誰をモデルにしているのかは、読者が推察すればわかるようになっています。
現在の日本が抱えている企業の問題点、金融の闇をわかりやすく小説という形態にして解説したような本なのです。

 企業の問題点、金融の闇というのは、通常の生活をしていてはなかなか知ることが出来ません。なぜなら、ニュースは明らかになった事実のみが報道されるためです。明らかにはされていない企業の内情や金融機関の内部事情については、報道されることはほとんどありません。

堅実な経営をしており、企業業績もそれほど悪くないと思える企業や証券会社、金融機関が、ある日突然破綻するニュースがながれることがあります。
テレビのニュースとして流れる出来事は何を示しているのか、多くの場合そこまで知ることはできないため、疑問を感じながらニュースを見ることも多いのではないでしょうか。この本は現在ニュースになる出来事の裏側を解説した本なのです。

では、この本のタイトルである「不発弾」とは何でしょうか?
この「不発弾」は日本の企業や金融機関が抱えていて、いつ爆発するかわからない経済爆弾のことです。太平洋戦争の不発弾は今でも日本の国土に埋まっていますが、この不発弾はいつ爆発するかわからない金融爆弾が日本には埋まっているという意味のタイトルなのです。
どうして日本企業や金融機関は、経済の「不発弾」を抱えることになったのでしょうか。また、どうして地雷や手榴弾ではなく、不発弾なのか、不発弾はいつか爆発するのかどうか、は最後まで読むと読者に理解できるように書かれています。
バブルが崩壊してからの日本企業が抱えている問題、日本企業の一部の企業が隠蔽体質である理由が、しだいに明かされていきます。
しかし、この本には完全な悪人は登場しないのです。
みんながその時々に下す判断に、悪気があるわけではありません。
やむにやまれぬ判断のつもりがいつのまにか大きな爆弾になっていく、その過程には自分の仕事に照らしあわせてみても、心当たりが見つかることも多いようにも思えます。
では、何が間違いだったのか、そんな問いかけも込められている本です。

 小説から日本企業の問題点を知る

2017年は東芝の上場をめぐるニュースが、大きな話題になりました。
不適切な会計処理、会計事務所との不調和、海外企業の買収、などという単語がニュースで飛び交いました。
ホームページの経済解説サイトやニュースサイトでも、東芝に関わるいくつもの謎が取り上げられていました。
買収金額が高すぎるのではないかという疑問や、買収交渉の不自然さを指摘しているサイトもありました。また、いつまでも会計事務所がOKをださない理由は、なんであるのかも取りざたされました。

東芝をめぐるニュースは情報は多く飛び交いましたが、その全貌はわかりにくく靄がかかっているようだ、と思った方も多いのではないでしょうか。
一つ一つのニュースやその裏側は理解したとしても、出来事がおこった理由や背景はよくわからない、そんなことはよくあるものです。
しかし、この本を読むと、明らかになった出来事には、背景におおきな時間の流れ、経済の流れがあるということがわかります。
なぜ、買収に不自然さがあるのか、なぜ、企業は隠蔽しようとするのか、すべての出来事にはおきる理由があることが理解できるようになります。

この本はあくまでも小説であり、東芝という会社名も他の金融機関名も出てきませんが、仮説と考えて読んだ場合にも、とても納得できる説明に驚かされることでしょう。
そして、この本は日々に流されて働くビジネスマンへの教訓も含まれています。
人は現在、仕事上で苦しい立場に置かれていると、現在をなんとかきりぬけて生き延びたいと思うものです。
たとえ根本的な問題が見えていたとしても、自分の立場を守りぬくことが最も大切だと思ってしまいがちなのが人間です。

しかし、この本を読むと責任ある立場であればあるほど、そのような姿勢で仕事をすることには、大きな危険がふくまれているという事実に気がつくことになります。
隠蔽は隠蔽を生み、マイナスはマイナスを生む、小さな出来事であれば当たり前のように理解できる内容が、あまりにも大きな出来事になると人は理解できなくなるという指摘でもあります。
すべての仕事をする人は、隠蔽には大きな危険性があると言うことを認識すべきだと気がつかされる内容になっていました。
折りしも、自動車業界や建築業界、鉄鋼業界などでの品質詐称も、根は同じであるのではないかとも思えます。

初期段階で対処していれば、大きな問題にまで発展しなかったであろう内容が、初期段階での隠蔽や事なかれ主義により、大きな問題にまで発展していく様と金融問題とは、同じ体質から来ているのかもしれないと気づかされました。

金融関係で働くビジネスマンに読んでほしい一冊


毎日のニュースを見ていても、どうもすっきり理解することができない、と悩んでいる方におすすめしたい本です。ニュースとして流れるなにげない企業の動向にも、なにか意味が見えるようになってくるかもしれません。
本質的に経済や金融を理解するためには、どのような視点を持つことが必要なのか、気づかされます。

また、日ごろ企業で働きながら、これでいいのだろうかと日本企業の企業体質に問題を感じている人も、この本を読むことで改善すべき問題点が明確化することでしょう。
企業の危機管理を考える方にも、安直な資産運用にはどんな危険が潜んでいるのかを、知ることができる本になっています。

経済はそれそれがつながっており、海外の金融事情とも関連する大きな流れがあります。そんな流れのなかに企業があり、企業活動があります。
大きな流れを知らないと、それそれの企業がなぜそのような行動をとるのかが理解できないこともあるのです。

そんな経済の大きな流れについても、一人のキーマンの仕事を追いかけるストーリーのなかで、自然と理解することができる本になっています。
しかし、けっして難しい内容が詰目込められた、堅苦しい本ではありません。
金融について何もしらない人でも、理解できるように書かれています。そのため、読んでいくうちに以前は難しいと感じたニュースに出てくる金融用語が、自然に理解できることでしょう。特に、金融関連機関で働くビジネスマンには読んでほしい本です。

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不発弾

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