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アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門 藤井厳喜

本書「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」の著者である藤井厳喜氏は、国際政治学者、国際問題アナリストとして活躍されています。
藤井氏は早稲田大学を卒業後、クレアモント大学大学院修士課程、ハーバード大学大学院博士課程を取得し、帰国後はラジオのパーソナリティや数々の大学で国際政治や英語の教員もされていました。

現在は、拓殖大学日本文化研究所の客員教授や、自身で設立したシンクタンク「ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ」の代表をつとめています。
最近のおもな著作には「米中激戦!」、「日米対等 トランプで変わる日本の国防・外交・経済」、「若い有権者のための政治入門 18歳から考える日本の未来」などがあります。
本の執筆活動だけにとどまらず、多くのテレビや雑誌にも出演しており、新聞やネットニュースの執筆などにおいても精力的に活動しており、また、愛猫家としての顔も持っています。

「アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門」は、世界中にはびこるアングラマネーの実態について、タックスヘイブンやマフィアの問題を絡めながら詳細に解説している一冊です。
前半はタックスヘイブンの定義や、タックスヘイブンで実際に起きたさまざまな事件について紹介されており、新聞やニュースでは知ることのできない金融犯罪について触れています。
また本書を読むことで、世界全体で見たとき、どのくらいの規模の脱税やマネーロンダリングが行われているのか、そしてどんな手口でそれらが行われているのかがとてもよくわかります。

中盤から後半にかけてはアメリカ、イギリス、イタリア、スイスなど世界各国におけるタックスヘイブンの位置付けや、これまでに起こった金融犯罪の歴史について細かく書かれているため、まるでアングラ経済における世界史を見ているようなイメージです。
歴史と言ってもとっつきにくい感じはなく、平易な言葉で解説されているため読みやすいです。
藤井氏は国際経済、国際政治の専門家でありながらもとてもわかりやすく書いてくれているので、まさに世界経済入門の本としてはぴったりの一冊になっています。
そして、いかにタックスヘイブンが世界経済に害をもたらしているのかということがよくわかると思います。
金融関係の書籍の中でも、アングラ経済を題材にした本は少ないため、裏の世界から経済を考察し、世界経済を取り巻く脱税や裏金の問題に鋭く切り込んだ名著といえるでしょう。


タックス・ヘイブンの実態を学べる

まず、一つ目に、タックスヘイブンを使ったマネーロンダリングや脱税により、中・低所得者層の人々が税負担の肩代わりをさせられている実態を知ることができました。
また、その金額の大きさを知ったときにはあまりの不公平さに疑問を感じるとともに、タックスヘイブンに流れていくお金を阻止すること決して簡単なことではないということもわかり、解決するのはとてもむずかしい問題であると感じました。
たとえ法律を整備しても、抜け穴をさがし脱税しようとする人がいくらでもいて、まさにいたちごっこのような状態で完全になくすことは不可能に近いことだと知り、世の中にはなんてずる賢い人がいるのだろうと感心してしまうくらいです。

二つ目は、これまでイメージしていたタックスヘイブンの定義が本書を読んでがらっと変わりました。
タックスヘイブンと聞くと、カリブ海に浮かぶ島々を思い浮かべる人が多いと思いますが、実際にはアメリカやイギリス、スイス、イタリアなどの国にもタックスヘイブンは存在しており、それらのタックスヘイブンで脱税が行われ、その取りっぱぐれた税金の額もとても無視できるような規模ではないことにおどろきました。
特にアメリカは州ごとに規制が異なるため、州ごとの税率のちがいも興味深かったです。

三つ目は、本書を読んで世界で行われてきた金融犯罪の数々を詳細に知ることができました。
金融犯罪と聞くと小難しい印象を抱く人もいるかもしれませんが、本書はとても簡潔にまとめられているのでとてもわかりやすいです。
マフィアが暗躍する理由や歴史、またその背景もしっかり書かれているので、より深く世界経済の流れを理解することができ、歴史の勉強をしているようで私にとってはとても面白かったです。

最後に、本書ではイタリアのアングラマネーやアングラ経済の大きさ、マフィアの存在、そしてそれらを一掃することのむずかしさを学ぶことができました。
その中でも特に、イタリアのGDPの35%がなんとアングラ経済で支えられていることにとてもおどろきました。
くわえて、イタリアのアングラ経済の恐ろしさや、これらが国家財政を困窮させている原因にもなっていることを知り、日本とのちがいを実感できたところです。
イタリアのマフィアが今もなおなくならないことを考えると、イタリアの経済状態を改善していくのは容易なことではないと思いました。

 ちがった角度から世界経済を学びたい人におすすめ

‘タックスヘイブンから見た世界経済入門’とサブタイトルが付いているとおり、この本は普通の世界経済入門の本とはちょっとちがった角度から世界経済を見ることができます。
特にアメリカやイギリス、スイスなどの金融界における実態についてはどれも興味深いものばかりです。
全体を通して堅苦しくないので、初めて世界経済の本を読む人にもおすすめです。
また、書かれていることはこれまでに本当に起こったノンフィクションの事件なので、飽きずにスラスラ読めるのではないかと思います。

くわえて、本書はタックスヘイブンについてとても詳細に書かれているため、これを読むだけでタックスヘイブンについての知識が十分つくはずです。
タックスヘイブンといえば、少し前にパナマ文書の問題でもトピックとして話題になりましたが、タックスヘイブンについて深く掘り下げて書かれているので、この部分だけでも読んでみるのもいいかもしれません。

また、イタリア経済については新聞やニュースではあまり詳しく取り上げられていることはありませんが、イタリアのマネーロンダリングの温床ともいえるバチカンやマフィアについて細かく書かれているので、イタリアのアングラ経済について知りたい人には特におすすめです。イタリアの経済についてまったく知らない人でも問題なく読めるように解説してくれているため、経済の本を読んだことがない初心者の人にも読んでみてほしい一冊です。

anond.hatelabo.jp

アングラマネー タックスヘイブンから見た世界経済入門 (幻冬舎新書)

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