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HARD THINGS ベン・ホロウィッツ

著者のベン・ホロウィッツはシリコンバレーにある、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者であり、ゼネラルパートナーです。

オプスウェア社の共同創業者かつCEOでしたが、2007年にヒューレット・パッカード社に16億ドルで自社売りしました。彼自身のブログは、1000万人近くの人に読まれ、ビジネスマンの間で人気を博しています。

シリコンバレー最強の投資家と呼ばれ、これまで、facebook, エアビーアンドビーなどの、著名な企業家たちにアドバイスを与えてきました。翻訳は滑川海彦氏です。 千葉県生まれ。東京大学法学部卒業後、東京都庁を経て、IT業界の翻訳・著者として知られています。

この本を端的に表すと、起業家のための経営書です。しかし、内容は経営書とは言えない変わった部分があります。ホロウィッツは、本書で、経営の困難さは当然あるが、そこを突破するための明確な正解はないと述べています。つまり、単なる自己啓発本ではなく、失敗からどう立ち直るかについて重点的に書かれたものなのです。大学院を出たばかりのホロウィッツは、当時勢いのあったネットスケープ社に参加します。そのとたんにマイクロソフトがIEを付属販売することで社をつぶされ、AOL社に買収されてしまいます。そこでAOL社を辞めて世界最初のクラウドコンピューティングサービスのLoudCloudを起業しました。ところが次にドットコムバブルがはじけてしまいます。

こうして、ホロウィッツは倒産寸前の状態に落ちります。そこでホロウィッツは賭けにでます。彼は、上場することで資金調達を図り、死にもの狂いの労働の末、なんとか上場に成功します。ところが、彼は再び不幸にさいなまれます。大口顧客が次々と倒産して巨額の貸し倒れが起こってしまうのです。ドットコムバブルはまだ続いている中で、倒産の危機が再び迫ってきます。

このままでいけば私は470人の社員を首にせざるをえなくなってしまいます。投資家の資金がなくなり、顧客がパニック状態になる繰り返しだったと彼は述べています。彼の綱渡り生活は、読んでいるだけでヒヤリとさせられます。

本書の項目にある「人を正しく解雇する方法」「幹部を解雇する準備」「親友を降格させるとき」では、彼の苦悩や葛藤があますことなく伝わってきます。企業のCEOの多くが直面するであろう「困難な問題」が、この本では語られており、ホロウィッツが自らの過去の体験から、赤裸々に語っています。困難を乗り越えるには、強い意志の力だけで可能であるという持論も、彼の体験を読者が追体験することで、納得させられるはずです。また、本書では、彼の家庭環境も述べられており、仕事だけでなく、家庭を第一に重視しなければならないことも述べられています。"


自分で困難を解決していくためのヒントになる

この本は、困っている者に解決策を提示する本ではありません。”自分で解決策を見つけだす”本です。
先ほど述べたように、経営者は多くの困難に直面しますが、それを乗り越える明確な答えはありません。この本では、解決策ではなく、著者の経験を通じて、いかに乗り越えてきたかを参考にするものだと思います。直面する困難も人によって違うものなので、自分で必死に考えるしかありません。但しいくつか参考になる対処方法は存在するという内容を自分で読み取っていくことができます。

明確な答えを求めて、本にすがる人は、多いが、それを直接解決できるのは自分自身であるという事実を、深く認識させてくれた点で、非常に価値のある本だと思います。また、失敗や困難にのり越えられなかったとしても、そこから自分は何を学び取り、何をすべきかを考えさせてくれます。品所にある「何事であれ、表面で判断してはならない」とう記述からも、人でも物事でも、よく知る努力をしない限り、何も知ることはできないということに気づかされます。

まったく努力をしないで、安易な解決策や状況判断をしている人には、独善的な解決方法に陥りがちなので、自分を冷静に見直すきっかけになると思います。「異なるレンズで世界を見る」という叙述では、状況が悪化してあらゆる「事実」が悲惨な結果を招いているときに、自分自身を異なった立場に身を置いてみることは、状況の見方を根本的に変えることができると気づかされます。これによって、今まで視点を自分主体でみて、周りや他者の立場に立ってみることが出来ていなかったと気づかされました。

企業のCEOは一方的になりがちなので、とにかく相手や周囲の立場に立って物事を見る大切さを教えてくれました。「成功するCEOの秘訣」の章では、避けられない困難に直面した際に、最善の手を打つ方法を紹介しています。現実から逃げ出したくなる時こそ、CEOとしての最大の能力の見せ所です。大失敗した後に何をすべきかを本書では指南してくれました。常に死を意識し、毎日が最後の日であるかのように生きていれば、自分の行動が規律されていくことも教えてくれました。

また、本書では、どんなに失敗したとしても、周りの人間はたいして気にしないことも教えてくれます。人は、常に周りを意識しすぎています。SNSのように、承認を満たしつづけることは、人間にとって、当然大事です。しかし、実際は、他者は自分が思うほどに、自分のことを気にしていないということに気づかされました。

これを知ることで、少し気持ちが楽になりました。やっていればよかったと思うことには一切時間を使わないで、すべての時間をこれから自分することに集中すべきだと著者は述べています。誰もそこはきにかけないからです。 


失敗から立ち直れなくなっている方におすすめ

失敗から立ち直れなくなっている方にお勧めします。ホロウィッツは、何度も倒産危機に直面して、彼の強靭な意思のもとで、乗り越えています。

彼ほど運が悪い人間はいるのかというぐらい、数多くの無理難題に直面していくのですが、彼の手腕でどうにか乗り越えていく姿は、本当に勇気づけられます。本書では、従業員や幹部の解雇にページが割かれています。これは非常にアメリカ企業の特徴を表していますが、日本でも年功序列制度や終身雇用制度は崩壊してきています。

ベンチャー企業はいうまでもないですが、昨今はメーカーやマスコミ業界にまで波及してきています。回避困難な状態に陥ったとき、リーダーは何をしなければならないのか、その基本精神や理念を学んでおくのは大切です。緊急事態に陥った時に、事前に備えているか、備えていないかで、気持ちの余裕が変わってきます。余裕があれば、それだけ、結果も変わってくるからです。

ホロウィッツは、独裁者と非難されることもあります。実際、独裁者のような社長や代表を、ワンマン経営や悪質企業だと評するひとが多いです。

しかし、本書はそのようなワンマン精神が会社を救える場合があることを著者の体験を通じて示しています。ただ、単なる独善ではなく、会社を救う目的であって、自分の利己心からそのような行為に走ってはいけないとしています。この本を手に取る多くの人が、そのような状態に陥っている可能性があるので、自分が今何をして、どのような状況に置かれているのかを、客観的に見せてくれます。

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