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ハーバード戦略教室 シンシア・モンゴメリー 野中香方子(訳)

本書は世界NO.1のビジネススクールである、ハーバード・ビジネススクール教授のシンシア・モンゴメリーが著した戦略論の入門書です。

シンシア・モンゴメリーは戦略論の専門家で、ミシガン大学・ノースウェスタン大学などを経て、20年以上に渡ってハーバード大学で教鞭をとってきました。
 近年はハーバード・ビジネススクールのEOPプログラムで戦略論を教えています。EOPとはEntrepreneur(起業家)、Owner(オーナー)、President(経営者)の頭文字をとったものです。年間売上が10億円以上の企業オーナー・経営者だけが入門を許される、エグゼクティブ専門のビジネスプログラムなんですね。

実際の企業のリーダー達を教えるようになって、戦略論に対する見方が変わってきたと著者は言います。ビジネスの現場で誰がどのように戦略を立案しているかについて目を向けるようになったのです。

本書は序章に当たる「シラバス」、そして「第一講」から「最終講」までの8つの講義から構成されています。
「第一講」では戦略とリーダーシップの結びつきの重要性が強調されています。それとともに世界の企業リーダー達がビジネススクールで議論しあう様子が率直に描写されています。
「第ニ講」では最初の課題「異業種参入」についてレクチャーされます。「日用品の巨人」といわれたアメリカのマスコ社がケーススタディとして採り上げられています。
「第三講」は異業種参入に失敗したマスコ社の事例から導かれる教訓を指摘しています。
「第四講」は企業が「良い目標」を持つことの重要性を指摘しています。スウェーデンの家具会社イケアのケーススタディ。
「第五講」では目標を実現するための戦略とリーダーシップの大切さが、ファッションブランドの名門グッチ社の復活の事例とともに紹介されています。
「第六講」は、実際に独自の戦略を策定するメソッドの紹介。すぐれた戦略の特徴などがわかりやすくまとめられています。
「第七講」。戦略は策定しても永遠には続きません。常に自己変革を遂げてきたアップル社とジョブズのケーススタディ。
「最終講」では戦略家(ストラテジスト)とはいかにあるべきかが総括されています。常に現状に甘んじず、選択の責任はすべてを負うというリーダー像が求められています。著者の教室で学んだビジネスリーダー達は、ストラテジストとして情熱をもって真剣に取り組むようになったと断言しているのが印象的です。

戦略とリーダーシップの重要性について学べる

本書において、首尾一貫して強調されているのが、戦略とリーダーシップの結びつきの重要性です。標準的な起業戦略論のテキストではこれほどまでにリーダーシップの必要性は主張されないことも多いので、本書の特徴と言ってよいでしょう。
従来の戦略論は精緻に体系化された経済学を理論的バックボーンとして、データを分析することによって企業をとりまく競争環境を正確に把握することを、その大きな目的としてきました。

しかしその結果、戦略が固定化してしまい、結果の分析だけが重要視されるようになりました。いわゆるMBA病という状態ですね。

本書では、固定化してしまった従来の戦略論を是正するために、リーダーシップを強調しているのです。リーダーシップを持って、自ら判断すること。目標を追求する持続力、責任を持って企業を導いていく力が必要です。

実際に戦略を策定する際は具体的で正確な目標をたてることが重要だと著者は言います。戦略は目標から生じて、目標を支えるものなので、目標は決して曖昧であってはいけないのです。目標が定まっても、それは出発点にすぎません。目標を達成するための価値創造システムが必要になります。ターゲット顧客やデザイン・価格などを目標にあわせて設定していくわけです。

「第六講」においてはすぐれた戦略の特徴として六項目が簡潔に解説されています。「明確で説得力ある目線が土台となっている」、「意味のある測定基準」などです。
 それとともに、ストラテジストが犯しやすい間違いも六項目にまとめられています。実際に経営に当たられている方は、自社の戦略をチェックする時に活用されると役に立つのではないでしょうか。

日本の企業の場合は、ありふれた文言で企業理念や戦略が語られていることも少なくありません。本書を参考にして日本の企業をチェックしてみるものおもしろいですよ。株式投資などをされている方の参考にもなります。

戦略は策定してうまくいったとしても、企業を取り巻く環境は常に変わり続けていくため、戦略に永遠ということはありません。そのために常に変化をとらえ戦略を見つめなおす持続力がストラテジストには求められます。その好例として、アップル社とスティーブ・ジョブズの活動がケーススタディで採り上げられています。i-Phoneなど日本でもアップル社の製品は人気があり、ジョブズのライフスタイルに共感を持つ人も多いようです。そういう人なら興味深く読み進めることができるのではないでしょうか。

若いビジネスマンは必読の書籍

本書は若いビジネスマンにぜひ読んでいただきたい本です。希望通りの企業に就職できても、最初の数年間は細々としたルーティンワークに追われてしまい、言われた通りのことをこなすだけになりがちです。大企業でも中小企業でも変わりはありません。この記事を読まれている方の中にも、そんな状態の人は少なくないかもしれません。

自分が経営者だったら、あるいは上司だったら今の会社の状態をどうしていくだろうという問題意識をもって考えることの好きな人におすすめの書物です。
将来的にその会社に勤め続けるつもりの人でも、転職あるいは起業してランクアップしようと考えているチャレンジングな人にも最適な指南書となるでしょう。

もちろん、経営者、あるいは自営業者であってリーダーとして現実に経営にあたっている人にも実践的な経営のヒントを与えてくれる書物です。戦略のたて方によっては、順風満帆にみえた大企業でも手痛い失敗をすることもあれば、長い停滞の後に回復することもあるというケーススタディを本書を通じて学習することは、実際の経営者にとっては大きな財産となることでしょう。

アメリカのビジネススクールの本だけに巻末には推薦図書が挙げられています。著者のシンシア・モンゴメリー教授もよく参考にするという書物が「業界分析」・「戦略」・「マネジメントとリーダーシップ」などのジャンル別に掲載されているので、本書の内容で興味があるジャンルについて、次に読まれてはいかがでしょう。

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