ビジネス書籍ユーザーレビュー

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"とびきりやさしい"ビジネス統計入門 坂口孝則

この本は坂口孝則さんという方が書かれた本ですが、坂口さんは大坂大学の経済学部出身で、電機メーカーや自動車メーカーで調達・購買部門で仕事をされていたという経歴の持ち主です。調達・購買部門では統計が必須の武器だったようで、その実務面での経験をもとにこの本を書かれているようです。

数学としての統計とかアカデミックな統計という面よりもあくまでも仕事での実務を重視し、現実にビジネス上で統計を使わざるを得ない、または強力な武器として使いたいと思っている統計の素人の方を対象に書かれた本です。

 冒頭の”<はじめに>”のタイトルが「まったく意味がわからん」という、いきなり驚くようなことから始まります。何が「まったく意味がわからん」のかというと、統計学のことで、大学での統計の講義や社会人になってからの統計の講座を受けた時に著者さんが思った正直な感想らしいです。統計は基礎から理解しように思うととても大変だけれど、ビジネス上の実務で使える程度であればそれほどでもない、という考え方で、とりあえずビジネスで使える統計を手っ取り早くマスターしよう。どんなに勉強したところで、使えなかったら意味ない!という観点で書かれた入門者向けの本です。

著者さんご自身の経験から、統計は基礎や理論は一旦置いといて、割りきって考えてとりあえず使っていこう、というスタンスで書かれている入門本なので、「学問的な厳密性は大胆に放棄する!」ときっぱりと切り捨てるように書かれていて、潔さがあります。自分のことを統計のバカ、素人と呼び、できるだけフランクな文章で書いています。

説明は終始Excelでの操作が前提で、初歩的なExcelの操作方法などは載っていません。Excelで統計を扱う上で効率的に操作できるようにマクロも用意されていますし、操作方法も丁寧に載っています。いまだに多くの職場ではExcelが定番の表計算ソフトなんだろうか、と個人的には思いますが、実務でExcelを使いこなしている人にはこの本は持ってこいなのかも知れません。個人的にはオープンソースや無料のもので平等で自由に使えるソフトでしてもらえたら嬉しかったのですが・・・。

なお、本書内で掲載されているExcelファイルはWebからダウンロード可能です。
章末にはエッセイが載っていて、著者さんが実際に職場などで経験された出来事や人に統計を教える上で使っているエピソードもあります。実際に使っているものなので、けっこう説得力があります。

とにかく仕事で使える統計が学べる


個人的にはExcelはほとんど使わないので、他の表計算ソフト(LibreOfficeやGoogle SpreadSheet)をイメージして読みました。Excelに特化した部分も多くて操作方法なども画面で説明しているので、それはそれで丁寧でExcel初心者ユーザーにはありがたいのかも知れません。ですが、その分中身のテキストが少なくなってしまっているので、Excelに特化させずに書いてもらいたかった、というのが正直な感想です。

Excel部分は適当に置き換えて読めばいいか、と思って読んでいましたが、やっぱり紙幅に無駄が多くなります。この本は他の表計算ソフト使用者ではなく、Excelの初心者・中級者ユーザーが読むべきものだろうと思います。

この本のExcel操作の部分は抜きにして、統計の説明がわかりやすいかどうかを主な関心事として読んてみたのですが、かなり大胆な言い切りをしている点がこの本の特徴だと思います。今まで何冊か他の統計関連の本は読んでいたのですが、ここまで大胆に言い切るのは覚えがないです。例えば”分散”についてだと、文系社員だったら意味がわからず投げ出してしまう、だから、「分散なんて意味がわからなくてもいい!」なんてことがきっぱりと書いてあります・・・。個人的にはそこまで言い切っていいのかと不安になってしまったのですが、これまでの統計本に挫折してきた人にはこれくらい大胆な方がインパクトあるのかな、と思います。とにかく統計をビジネスで使えればいいんだ、というスタンスのこの本ならではだと思います。

著者さんはまえがきでも言っているようにかなりフランクな文章を意識して書いたらしいのですが、確かにそうです。「xxしなきゃなんない」とか、一部には違和感を感じるところもあって余計なことが気になってしまったりするところもあります。ちょっとした言い回しは統計入門の内容とは関係ないので、その点は少し残念なところです。

「ある工場で生産したネジの重量」を例にしたり、会社で働いている人にはイメージがしやすい題材にしていたりするのは、この方の実務の経歴のおかげなんだと思います。他の有名な統計本などを読んでいると、大体どの本も似通ったサンプルを使いまわすことが多いです。それが自分の身の回りとかけ離れた例題が多いので「一体この統計手法はどんな場面で使えばいいんだ?」と感じることが意外に多くあったりします。著者が言うように、「統計は使えなくては意味がない」というのは、同感です。

まだ今のところは、仕事場で実際にこの本に書いてある統計手法を使えているわけではいないのですが、品質管理の考え方として参考にはなりましたし、ちょっと物の見方が変わった意識があります。

統計をこれから勉強したい人やすぐに統計を使いたい人におすすめ


この本は、統計をこれから勉強したい人や仕事場でとりあえず統計を(ざっくりと)使えるようにならないといけなくなってしまった(追い込まれてしまって、急かされているような)人、文系だから統計は苦手でこれまでの統計本に挫折してきた人、あたりが読むと良いと思います。

世の中にたくさん出ている統計入門の本とはちょっと違った切り口で書かれているので、イマイチ他の本では理解できなかったという人は試してもいいかも知れません。
少しクセがあるので、合う合わないはあるとは思いますが・・・。

あくまで入門なので、統計に詳しい人だと買って損した、ということになるかも知れません。あまり統計用語の意味を深読みするタイプとか、統計の基礎を学びたいという方には向いていません。

忘れてはならないのは、Excelユーザーであること。それも、Excelの玄人ではない人がいいでしょう。Excel玄人ならいちいち丁寧な操作方法が画像で載っていても、うざったいと感じるのではないでしょうか。

この本は統計をExcelで扱う具体的な方法が書いてある本なのですが、別の伏線として、「統計の面白さ」や統計による意識や物の見方の転換についても書かれています。これまで統計に詳しく無かった人が最後まで読めば、職場の実務でたとえ使う場面がなかったとしても、職場の商品や道具などが少し変わって見えるかも知れません。

テキストの分量はそれほど多くないですし、イラストもシンプルでわかりやすいです。スラスラと読めます。実際にExcelを動かして統計処理をしてみて、統計の楽しさから入っていきたい、という方にはこの本はおすすめです。

cocodrips.hateblo.jp

"とびきりやさしい"ビジネス統計入門 (B&Tブックス)