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まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」山形浩生(監修)

小難しい経済学術本であるにも関わらず異例のベストセラーになったトマ・ピケティ「21世紀の資本」を、宝島社が要点をかいつまんで「まんがでわかる」ようにした書籍です。
原著「21世紀の資本」の方は、マクロ経済学の視点で、現在の世界で拡がる格差についてや分配の問題について取り上げ、経済に対する世界の人達の認識を改めさせた、世界に衝撃を与えたベストセラーです。

 原著「21世紀の資本」は、読んだことない、もしくは読んでもさっぱりわからないという方も多いと思います。私もそのうちの1人です。
「まんがでわかる・・・」ものは、アタリハズレが激しく怪しいと思う人も多いと思いますが、ハズレでもいいや、と思いつつ読んでみました。

この『まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」』を読んだ上で原著『21世紀の資本』の内容を推測するに、なぜ「持っている人」と「持っていない人」との間の格差は拡がるばかりなのか、その原理を解き明かそうとしている本だろうと思います。

原著「21世紀の資本」の要点がわかりやすくまとめられている

資本を「持っている人」は、その資本を元手に新たな収入を得ることができ、加速度的に資本を増やすことができます。
資本を「持っていない人」も、その人の努力によって収入を得ることができますが、その増加率は資本を「持っている人」の増加率に
対して低いため、その間の格差は拡がる一方なのだ、というのが説得力のある説明で展開されます。

そうなると「持っていない人」は何をしても無駄、と思ってしまいそうのですが、ピケティはその問題の解決方法もピケティなりに提案していて、その部分も「まんがでわかる」の方の最後のあたりにちょっとだけですが書かれています。

この本は読んでみると、まんがではないテキスト部分も結構多くて意外にしっかりした内容です。
『21世紀の資本』を手っ取り早く知りたい、要点だけを知りたいという方にはおすすめできます。もともと監修をしている山形浩生さんは原著の『21世紀の資本』の翻訳をされた方なので、内容の確かさについてはある程度”折り紙つき”と言えるかも知れません。また、まんが担当の小山鹿梨子さんの絵は、ノーマルな絵を書かれるのでそれほど本書籍の論旨の邪魔をしません。

ChapterごとにあるまとめのテキストやColumnを読めばこの本の大体の要点は汲み取れるので、いっそのことまんが部分は
無くてもいいんじゃないかな、と思うくらいです。
ただマクロ経済学のややこしい説明ばかりでは疲れるので、小山鹿梨子さんの優しい絵は一種の清涼剤になっていて、販促効果意外にもそれなりの効果があると思います。
資本を「持っている人」の成長率に対抗するため、「持っていない人」でも個人として何ができるかということも、ある程度はこの「まんがでわかる・・・」には書いてあります。
教育や技能の向上、つまり個人の努力次第で「持っている人」との間にある確然とした差を狭めることもできる、と書いてありますが、
それでも追いつける、追い越すことはまずできないだろうということも(厳然たる冷たい現実として)指摘されています。教育や技能の向上によって、「持っていない人」が「持っている人」に変わることができるのですが、それもある程度若い人でないと
厳しいという現実が書いてあるように思います。

ピケティはおそらく、教育や技能の向上によって1人の意識を変えるのではなく、みんなの意識を変えることで世の中の
格差をできるだけ解消できるのではないか、と訴えているのだろうと思います。
そういう意味では、原著よりも読者のすそ野を拡げる「まんがでわかる・・・」本が広くみんなに読まれることは、大きな価値があるのではないかと思います。

個人的には、ピケティのような超エリートの学者さんが格差の問題を気にしてくれていることや、それをたくさんの人が読んでくれているとわかったことも大きいと思います。

また、この本の指摘によって政府などの大きな権限を持つ「持っている」側の人の施策も変わっていく、もしくは私達の主張によって変えていくことも可能なのではないかと思えるように、読めました。
決して、全てを政治家や権力者のせいにして自分は何もしないことが解決には繋がらないのだ、ということもわかったように思います。

 それから、ピケティの『21世紀の資本』は特定の国や地域の経済を扱ったものではなく(ピケティはフランス人)、世界各国の膨大な過去のデータを元に理論を展開しています。データが残っている世界の主要国を取り上げているのですが、歴史的にも国としても現在の日本の格差は他と比べたらマシな方なのだということもわかりました。
しかし、そんな日本でも格差はやっぱり拡がるばかりですので、できるだけ格差を解消できるように、私達の意識を変えていく必要があることは日本だろうが他の国だろうが関係なく必要なのだということを感じました。

この本には書いてありませんでしたが、格差が拡がるということは治安も悪くなるわけで、格差が広がり過ぎることは決して
「持っている人」に必ず得するとは限らないことも考えておく必要もあるでしょう。


原著「21世紀の資本」の要点を掴んで起きたい方におすすめ

日本に住んでいても、経済格差が広がっていることを肌身で感じている人も多いのではないかと思います。
なぜこれだけ科学や民主主義が発達しているのにこんな状況になってしまっているのか、不思議で仕方ないと(漠然とですが)私は感じていました。
原著『21世紀の資本』は読む人を選び、普段の庶民の生活とはかけ離れたイメージを持ってしまいがちな気もしますが、意外と私達に身近な話題を扱っている本だと思います。
これまでの「持っている人」の富の一部が「持っていない人」へ流れ落ち、みんなに利益が享受され経済が回る、という考え方は、怪しいとピケティは訴えていて、私達の漠然と持っていたこれまでの経済の常識をくつがえしてくれます。 

本来なら原著の『21世紀の資本』を読むべきだという意見も多いかも知れませんが、読んでも理解できなければ意味がありませんし、ピケティ自身も出来る限り多くの人に読んでもらい、意識を変えてもらうことを望んでいるでしょう。そういう意味で、この『まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」』は読みやすく(場合によっては一晩で読め)、多くの人に手に取る機会を増やす本はありがたい存在だと思います。

一般的な「まんがでわかる・・・」ものは、内容がもの凄く薄かったり、何のために買ったのかわからないような「買って損した」と思えるものが多いかも知れませんが、この本はなかなかの出来です。原著の敷居の高さからすると、この本はよくまとめられていると思います。まんががあるにも関わらず思いのほかリーズナブルですし、「原著『21世紀の資本』を読むのは厳しいが、ある程度要点は掴んでおきたい」と思っている方にはおすすめできます。

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まんがでわかるピケティの「21世紀の資本」 (まんがでわかるシリーズ)

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