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1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか! K.ブランチャード, S.ジョンソン

まず、仕事において何よりも重要な事は、「生産性」を上げパフォーマンスを最大化させる事にあるという前提に立っています。
それは即ち、自身・組織・ともに働く仲間が気持ちよく働ける状況を作り上げる事と同義であるとしたうえで、本書ではそれを「1分間マネジメント」という手法を用いて、体現・体得する事を目的として書かれています。
著者が提唱する「1分間マネジメント」が、最大限の成果をもたらすうえで如何に効果的かつ実践的であるかについて、3つの秘訣「①1分間の目標設定」「②1分間の称賛」「③1分間の叱責」に沿って解説しています。

では、そもそも1分間マネジメントがどういったものかというと「最小限の時間で、部下から最大限の成果を引き出す存在またはその手法」というように本書では定義されています。
つまり、実際に部下に対してマネジメントを実行するために必要な時間は、1分間という必要最小限の時間さえあれば十分だというのです。
但し、それを実行するためには日ごろから意識しなければならない重要な基本姿勢があります。
それは、「自分自身の時間の大半を部下のために投じる」ことと「最終的な意思決定には関与せず、部下が自分自身に対して気持ちよくなるよう援助する」という2点です。

つまり、実際に部下に対して接する際に必要な時間は最小限で十分だが
それを実行するためには常日頃から部下の事を考え、部下がどういう姿勢で仕事に取り組んでいるのかを細かく把握しておく必要があるということです。

加えて、あくまでもマネジャーは実行者ではなく、最終的に部下が自分自身で意思決定をするためのサポートをする役割を全うすべきとも記載されています。
そして、上記を実践していくうえで重要となってくるのが、本書の肝である以下「1分間マネジャーになるための3つの秘訣」になります。

1分間マネジメントの3つの秘訣の詳細
①1分間の目標設定
□ポイント
・自身の目標・責任を明らかにする
・1つずつ、250文字以内で書き起こす
・日々、1分間で目標達成度を振り返る
・行動と目標が合致しているか調べる
□注意点
・部下のヘマにばかり着目しないこと

②1分間の賞賛
□ポイント
・うまくいっているところをみつける
・具体的にフィードバックする
・如何に貢献度が高いかを伝える
・相手に触れる事で、よりわからせる
・注意点
・常に称賛を与えられる状況をつくる

③1分間の叱責
□ポイント
・過ちは即座に叱る
・指摘箇所は具体的に伝える
・どう感じたか、確実に伝える
・部下自身には好意がある事を伝える
□注意点
・ためこまず、即座に叱る
・価値ではなく、「行動」のみを叱る"

部下の能力を最大化させる方法を学べるが課題もある

いわゆるリーダーシップについては書かれた本は巷にあふれているが、本書で述べられている内容はそれらとは一線を画すものであると感じました。

というのも、1分間の目標設定にみる「挑戦」の概念や、1分間の称賛にみる「信頼・勇気」など、どちらかといえばリーダーシップを発揮する際に必要とされる価値観に近いものが、本書ではマネジメントとして語られていたように思います。

個人的には、部下の成果を最大化させるにあたっては、そこにリーダー・マネージャー毎の役割など関係なく組織全体として気持ちよく働けるよう、信頼関係を築いて全力でバックアップしていく事が何よりも重要なのだと解釈しました。

残念なのは、本書にて揶揄されている「放ったらかしのバッサリスタイル」つまり放置スタイルのマネジメントに関する記述を目にしたとき即座に自社の現状とリンクしてしまう程、1分間マネジメントを体現出来ている人間が社内で極めて少ないという事実を突き付けられたことでした。
部下に深い関心を持ち、自身の概念的な役割に固執せず、全員が自社で働く事を気持ちいいと感じて貰えるように、今こそリーダー・マネージャーの垣根を越えた「ハイブリッド型のリーダーシップ」が必要であり自分がその先駆者としてそれを体現出来るよう、本書で学んだ事を日々実行しながら力を蓄えていきたいと強く感じました。
ただ、一方で理想とかけ離れた現実を見据えたうえで、次のような疑問もわきあがってきました。

それは、マネジャーとして「あるべき姿」と、業績評価に紐付く「現実問題」とのバランシングについてです。本書では、部下の意欲を最も刺激するのは「成績についてのフィードバックが得られたとき」でありそのフィードバックが称賛に値するものとなるよう、目標設定の段階から細かくゴールを設定し、常に称賛出来る状況を作り上げる事が重要であると書かれています。

一方で、現実問題として「業績考課」という概念が存在するがゆえに、マネージャーとしての立場上分け隔てなく好評価を付けるわけにもいかずあえて部下のヘマに着目するケースが往々にしてあるとも書かれてあります。

疑問点としては、MBOなどもそうですが、他メンバーとの相対評価である以上、ある程度致し方ない部分ではないかという点でありそういった評価指標が現実問題として存在するなかで、本書で提唱している「1分間マネジャー」を体現し、常に部下がうまくいっているところを探して称賛するような状況を創り出す事は、果たして現実的に可能なのだろうか、というものです。

また、仮に本書のように部下全員が「1分間マネジャー」と呼ぶべき存在となった場合
ヘマに着目せずしてどのように彼らの成績の優劣をつければ良いのだろうかという点も、本書を読んでいて感じた疑問点でした。
それに対する私の個人的な解釈としては、優劣をつけるうえでの視点を変更する事が最も望ましいというものです。

部下を称賛するうえでは、やはり部下が生み出した「成果」に着目すべきでありそれとは対極にあるヘマにばかり着目して評価を落とすような事をしている以上は、部下の意欲を高める事は出来ずましてやパフォーマンスを最大化させる事など到底成し得ないと考えます。

とはいえ、相対評価である以上は何かしらの軸を以て評価の優劣はつけなければならないのでだとすれば、矛先を部下が生み出した「成果」の大小・貢献度合いに向け、当人よりもより大きな成果を生んだメンバーがいた場合は、そこを目指すようフィードバックし次の目標地点として設定すれば良いのではないか、と思いました。

そうすれば、わざわざヘマに着目して揚げ足を取る必要もなく、より大きな成果をうむうえでの目標も明確になるため部下の意欲が低下してしまう事態も免れる可能性が高まることが想定されます。

尚、部下全員が「1分間マネジャー」になった場合、そもそも彼らは評価される側からする側に回る事になるため上述のように、ヘマではなく成果の大小で部下を評価する事を改めて意識していく姿勢が肝要と解釈しました。

すべてのビジネスパーソン必読


現状自分自身のマネジメントスタイルに悩んでいる管理職の方はもちろん、日常業務で後輩の指導やOJTを任される機会がある一メンバーの方など全てのビジネスマンにとっての必読書であると感じました。

私の場合は前者に当てはまるのですが、本書で記載されている1分間マネジメントの3つの秘訣を日常業務へ活用しています。
恥ずかしながら、出来ているつもりで実は「放置型」のマネジメントスタイルであった事に気づいた私は意識的に部下と接触する頻度を増やしました。

これまでは、期初に設定した目標に対して、その進捗を振り返る機会が非常に限られていたためそもそも部下が今どういう状況なのかすら把握出来ていませんでした。
当然ながら、現状を把握出来ていない部下に対して「称賛」も「叱責」もしようがなく、ただ結果だけをみて評価を下す以外に方法がありませんでした。

意識的に1分間MTGを設定することで、お互いに目標に対する進捗度合いを共有する事ができるため、必然的に目標達成に向けてやるべきことと改善していくべきことが明確になっていきます。そうなると、出来ている事と出来ていない事、その理由もはっきりと浮かび上がってくるため、褒めるにしても叱るにしても自身の発言に具体性が増してくるため、自ずと部下の成果達成意欲も上がってくるのです。

マネジメントするうえで何よりも重要なのは「納得感を如何にして得るか」という事だと思います。
そのために必要な1回ごとの時間はごくわずかなので、時間を言い訳にせず真正面から部下に真摯に向き合う事がひいては会社の底上げへと繋がっていくのだと思います。

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1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!

1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか!