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嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見一郎 古賀史健

アドラー心理学研究者の岸見一郎さんのお話を、ライターの古賀史健さんが読みやすく感情移入しやすい物語仕立てにした著書です。
続編の『幸せになる勇気』とともに、長い人生を精一杯楽しく生きる上での大きなヒントを学べる内容になっています。
或る日、哲人の元に、鬱々とした人生を送っている青年が訪ねてくるところから物語が始まります。

アドラー心理学に造詣が深く、実践しながら生きて来た哲人の話を聞き、青年は「綺麗ごとだ」と怒り狂ったり、「そんな考えは論破してみせる」と息巻いたりしていましたが、哲人と何度も会う内に、心の重しを軽くし、自分の逃げの姿勢に気付かされ、素直な感情や率直な気持ちと向き合うようになり、幸せになる為にどうすればいいか、について真剣に考えるようになります。

トラウマの否定、既存の劣等感や上下関係の解釈の改革、問題の分離など、これまで世の中に広く知られている心理学的な思考を、ばっさりと否定するように見える内容でありながら、その裏には、大きな愛情と、個人が使命を知って命を輝かせて精一杯幸せに生きる為のノウハウがたくさん詰まっています。
実践するのがとても難しく思えるメソッドがたくさんで、上手く行動に移せないことにモヤモヤしたり、これは本当に正しいのか?やっぱり間違っているのではないか?という青年の葛藤は、哲人によってどんどん解消されて行きます。
哲人に対して敵意を丸出しにし、懐疑的で攻撃的な姿勢を隠そうともしなかった青年は、人生が上手く行かない問題点を、他者ではなく自分の中に見出し、きちんと自分に向き合う勇気を持てるようになったことで、哲人に尊敬の念を抱くようになります。
常に冷静沈着で、問題がどこにあるかを正確に見極め、年齢や立場で相手への接し方を変えない平等な心を持つ哲人は、青年を「友人」として扱います。
常識や通例や世間体に飲み込まれそうな一般人が、迷い悩み傷付きながらも、自分や、ひいては周りの人達も巻き込みながら、豊かに幸せに生きて行きたいと決意した時に、必ず役に立つ1冊です。
もし続編の『幸せになる勇気』を先に読んだとしても差し支えはないかも知れませんが、こちらを先に読んでおいた方が、恐らくストーリーや哲人の言葉が頭に入りやすいと思います。
余りに素晴らしい内容だったので、個人的に、この人には絶対に役立つので読んで欲しい、と思った友達には、2冊まとめてプレゼントしていますが、とても喜ばれます。


ありのままの自分を直視することを学べる

37歳という年齢は、本に出て来る青年よりはだいぶ年上で、また哲人よりはだいぶ年下でした。ただ、心情的にはまるっきり青年寄りで、哲人の言葉は正しいのだと分かっていても、“でも”“だって”“そうは言っても”と、言い訳と自己弁護をしたくなることが多かったように思えます。

何度か読み返す内に、「自分の問題の原因があるのに、他のものから探し出そうとしていた。無意識に責任転嫁をすることが普通になっていた」「他の人の問題を、勝手に自分の問題だと思って、一緒に解決しなければと考えていた。境界線がかなり甘く、問題の分離が出来ていなかった」「トラウマを持ち出すことで、現状のまま進歩しなくていい状況を作り出し、好んで変化の無い日常に身を浸していた」「劣等感=コンプレックスだと思っていた。自分を高める努力をする前から投げ出していた」「自分の為よりも他人の喜びの為に動くことが幸せに繋がることを薄々知っていたはずなのに、まずは自分から、と自己中心的な思考に陥って苦しんでいた」という、言葉にするのが恥ずかしいような自分の姿を突き付けられ、落ち込んだり、誤魔化したくなったりしました。
だけど、自分を偽って、ずっと本質的な問題から逃げ出していたら、死ぬまで変わることは出来ないと思い、変わる為に自分の弱さや情けなさや汚さを直視する覚悟を決めました。
一度自分の“負け”を認めると、余計な力が体中から抜け、妙に意固地になったり、何が何でも相手に自分の意見を理解して欲しいと考えたり、苦手な人とは極力関わりたくないという嫌悪感が減っていったりして、明らかに生きるのが楽になりました。
一番大きな収穫は、相手が受け入れてくれようとくれまいと、何かしてあげたいなと思った人が居たら、自分の思うままに行動出来るようになったことでした。

今までは、やってあげたいけど余計なことかな、とか、やったはいいけど迷惑がられたら傷付く、とかを考えてしまい、結局はやらないままのことが多くありました。
自分だけで孤独に耐えて生きていると勘違いしていましたが、そんなことはなく、実際は自分を取り巻く世界は愛に満ちていたということが分かり、心が軽くなりました。

世界中でたった独りぼっちで戦っていると思っていた時は、環境全てに感謝することは少なかったのですが、今は自分を取り囲むたくさんのものに、ありがとうという気持ちを抱けるようになりました。この点でも、本当に読んで良かったと思います。

生き辛さを感じている人は必読

 

自分という存在にがんじがらめになって、生き辛さを感じている方々にとって、必要なことがたくさん書いてありました。

自己否定、自己卑下、自分苛め、自己肯定力の低さを常に持ち続けていると、他人への攻撃性や嫉妬、不幸を願う気持ちが強くなります。
何で自分だけ、とか、あの人がちゃんとしてないから自分が大変、とか、自分だけが損をしている、と思って悶々としている無駄な時間が減らせる考え方を身に着けると、心が穏やかになって、自分を楽しませることが自然に出来るようになり、その結果、周りの人達とも一緒に楽しく過ごすことが出来るようになるのです。

助けや救いを求められてもいないのに勝手に他人の領域に足を踏み入れて引っ掻き回している自覚の無い方が読んでも、今まで他者にばかり向けていた目線を、自分自身に向けてみることが出来るようになると思います。
色々としてあげているのに何故か感謝されずに迷惑がられる、という方は、「私がしてあげたかったからさせて貰っただけ。相手の反応は問題では無い」ということに気付けるのではないでしょうか。

唯一無二の、世界で一番大切な自分という存在は、自分の魂と、そして他の誰かの魂どちらも一緒に輝かせる為にあるということに気が付けば、果てしなく続くように感じられていた孤独感や厭世観や不安感に苦しめられる日々に別れを告げられます。
次々に身に降り掛かって来る問題と戦いながらも、限りある人生を豊かに面白く生きたいと考える方々には、例え一度だけでも読んでおいて損はない内容になっています。

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嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え

嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え