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戦場カメラマンの仕事術 渡部陽一

とてもスローなしゃべり方で有名な戦場カメラマンの、渡部陽一さんが書いた本です。
この本は第一部と第二部に分かれています。第一部には、渡部さんが戦場カメラマンになるまでの生い立ちや、実際に活動するようになってからの奮闘ぶりや仕事術、営業術が書かれています。第二部では、今までにお世話になった先輩達4人とのインタビューが掲載されています。取材のノウハウを教わった、ジャーナリストの先輩である山本皓一氏や、駆け出しの頃からお世話になっている新聞社の御三方です。

渡部さんは子供の頃は戦場カメラマンになるつもりはなく、魚釣りや剣道に夢中な活動的な少年だったようです。
カメラに関しては、カメラ好きな父親の影響で写真を撮る事はあったものの、魚釣りや友達、家族等の身近な人や物を撮って遊ぶ程度だったそうです。

戦地で暮らす人々の様子を写真で皆に伝える仕事を選んだきっかけは、大学生の時に授業で知ったムブティ族を見る為にアフリカに行った事。
そこで、恐い思いをした事が原動力となって、それを皆にわかる形で伝える為にカメラという手段を選び、今に至るようです。

20代の頃から活動し始め、本の執筆時点では45歳。駆け出し始めた頃のアルバイト生活での苦労や、撮ってきた写真を取り上げてもらう為の営業の工夫、また、現地の人々や海外の記者達とのコミュニケーションの大切さ。それら長年の経験や、経験に基づく方法を、丁寧な文調で書いています。駆け出しの頃や現在の営業の様子は、第二部に記載されたインタビューからもわかります。

他に、渡部さんが読んで面白かった本の紹介もあります。シャッターチャンスの待機中に、本を読むようになり、取材地に持って行く本も次第に増え、読書好きになったそうです。人に聞いて薦められた本を片っ端から読んでいるようで、かなりの読書家です。

本と一緒に取材先に持っていく日記についても触れています。書き終わったら棚に納めるのではなく、新しい日記帳を貼り合わせていくので相当かさばるものですが、そこには、取材の記録はもちろん、本や映画で印象に残った言葉や、先輩記者達からの助言が書かれています。それらの中から、座右の銘となっている言葉の紹介もあります。

全体としては、戦場カメラマンという立場での経験談やノウハウを書いたものですが、カメラやジャーナリズム、出版といった世界とは違う異業種に勤めていたとしても興味深い内容で、役立ちます。


長年の経験に基づいた、営業術、仕事術を学べる

渡部さんの駆け出しの頃の営業の話や、営業をするにつれて考えるようになったバウムクーヘンに例えた優先順位の話や、海外の記者達から学んだ仕事の姿勢や、写真の選び方の工夫等、少しずつ色々な事を取り入れていって今の渡部さんの活躍がある事に勇気づけられます。

渡部さんは、コミュニケーションをまめにする事の大切さについて何度も書いています。
気軽に家に出入りできるほどの密な連絡を取り続ける事で、信頼関係が生まれ、情報が得られたり、いざという時の危機管理もスムーズにいきます。

「まめさ」の大切さについては、自分にも経験があります。他の事で忙しいときに、仲間との常日頃のコミュニケーションをおろそかにしてしまい、その結果、仕事に対しても不誠実だと思われ、痛い思いをした事があります。
「仕事で返すからいいや」と仕事だけ真面目に取り組んでいても、日頃のコミュニケーションを大事にしないと、いざという時に自分の事を理解しようとしてくれる人がおらず、変に誤解されてしまいます。

さすがに渡部さんのように、相手が家に気軽に来て夜中までいるようなコミュニケーションはできませんが、それでも、何気ない会話でも大切にしていると、いざという時に手助けしてくれたり、うまく伝えきれない事柄をフォローしてくれたりする場合があります。
何気ない会話から相手の事情も知る事で、仕事上での相手の行動や発言に対する理解も深まりやすいです。

また、本を読んでいると、渡部さんのコミュニケーションに対しての積極性がよくわかります。若者でも先輩でも海外の人でも、分け隔てなく話しかけ情報を得る姿勢は、見習える所があります。年上の人との会話は、気を使いますし、「こういう事を聞いても大丈夫かな」と思い、それなら口をつぐんでいた方がましかなと、かしこまってしまい、そのまま沈黙してしまう事もありましたが、意外と突っ込んで丁寧に聞いてみると、面白い話が聞けたり、話がはずむ場合があります。

渡部さんのように密にコミュニケーションを取っていたとしても、過去には失敗もあるようです。ジャングルの中で1ヶ月間、毎日生活を共にし、信頼していた人に、カメラを盗まれてしまった事もあったようです。このように、残念な事に思っていた結果と違う事が起こってしまう事もあります。

それでもへこたれないで、続けようとする姿勢や、もしテレビで有名になった今がなかったとしても、苦労時代のように取材費を稼いでずっと続けていく覚悟があったという言葉に、はっとさせられます。渡部さんの経験から出る言葉は、とても含蓄のあるもので、参考になります。

営業に携わる方や、世界情勢についての知識を得たい人にオススメ

この本は、営業に携わる方に特にオススメです。渡部さんが覚悟を持ってこの道を選び、職業として成り立たせる為、様々な取材の工夫をし、周りの信頼を得て、営業の努力をする様子がよく伝わってきて、勇気付けられます。
自身が伝えたい物事を皆に伝える為の、営業の努力や熱意がひしひしと伝わってきて、刺激になると思います。

戦場カメラマンというフリーランスの仕事について書かれた本なので、これから独立してビジネスを始めようかという方や、フリーで働いている方は、さらに共感できる部分が多いのではないでしょうか。

また、視野を広げる為に、ニュースだけでは知り得ない、戦地で起きている状況の変化について知識を得るのにも役立ちます。
第一部では、現地で出会った海外記者達や現地で暮らす人々の話、防空壕作りを手伝った話、身の危険を感じた話等々、様々な話を通じて戦地の様子がわかります。
第二部のインタビューでは、中東地域で起きている状況の変化により、取材の状況も変わってきているという話があります。

渡部さんが以前テレビで語っていた事によると、自身の独特なゆったりとしたしゃべり方は、正確に丁寧に物事を伝える為なのだそうですが、この本も、渡部さんが普段しゃべるように、語るように書かれています。

その為、難しい問題も、難解さを感じる事なく読め、わかりやすく伝わってきます。
文庫本サイズで出ているので、電車内等でも気軽に読めますし、オススメです。

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戦場カメラマンの仕事術 (光文社新書)

戦場カメラマンの仕事術 (光文社新書)