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世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか? ケン・ベイン

著者であるケン・ベインはコロンビア大学の学務担当副学長を務め、本書にてハーバード大学出版局賞を受賞しています。本書の他には「ベストプロフェッサー」という著書で全米ベストセラーを獲得しています。共通するのは教育にかける情熱で、どのように学ぶか? ということとの専門家であり、権威ということでしょう。

本書で書かれている主張は明確です。名門校で学んだ真のエリート(決して単なる学業優秀者ではなく、後にそれぞれの業界で活躍した人)たちへの調査をもとに、「内発的動機付け(外発的動機付けと対照される)」が持つ力がいかに凄いものであるかを語っています。

日本の自己啓発本やビジネス本では、戦略的に学ぶことの重要性が繰り返し叫ばれますが、それよりももっと大切なものがあると言っているのです。
本書では中盤以降、どのようにして内発的動機付けを獲得していけばいいのかが語られますが、まずは前提としてなぜ内発的動機付けがその他のものと比べて優れているかが語られます。

スウェーデンのある研究では、学習者を「表面的な学習者」「深く学ぶ者」「戦略的に学ぶ者」の三つに分類しました。「戦略的に学ぶ者」は最終的には「手際のよい熟練者」になることが多いといいます。しかし、内発的動機で学ぶ「深く学ぶ者」は「適応的熟達者」になるといいます。これは創意工夫に富み、予想できない困難を乗り越える者のことです。

中学や高校時代のことを思い浮かべてみてください。クラスに一人は、毎日遅くまで塾に通う「ガリ勉」くん、「ガリ勉」ちゃんがいたと思います。彼らは親に怒られないためや、いい大学に行って高給の職に就くために勉強をしています。これは本書によれば「表面的な学習者」「戦略的に学ぶ者」に該当します。彼らはその学びそのものを人生において生かしたでしょうか? 戦略によって得た地位に頼るだけの燃え尽き症候群のような生き方をしている者が少なくないとは思いませんか?

内発的動機付けに目覚めない限り、彼らは日本をよくしていく人間や、会社を変える人間にはなりえないのです。

著者は内発的動機の素晴らしさを説きますが、それは一体どのようにして得られるのでしょうか?
著者は言います。
①子ども時代の好奇心を取り戻したこと
②思考力を高める方法を実践し、楽しみながら創造力を手にする方法を学んだ
③成長して、創造力を活かし、何らかの問題に取り組んだり、自分にとって大切な目標を達成したりすること
であると。著者はふんだんな具体例を使って語るので、十分に説得力があります。

内発的な動機付けをして物事に向き合う

本書における私のお気に入りの章は「第4章 失敗との付き合い方」です。
私は小学生の頃、野球選手に憧れ、プロになりたいと願い少年野球のチームに参加しました。ですが、そこで見たのは圧倒的な才能の差でした。
最初から野球センスがよくて、運動能力が高い人間というのがいるのだと身を持って知らされてしまったのです。そして、私にそのことを思い知らせた天才野球少年も野球で有名な高校に入りましたが、公式戦でマウンドに上がることはありませんでした。

私には「才能というのは生まれた時から決まっていて、あとからの努力でどうにかなるものではないのだ」という人生観が備わってしまったように思います。
本書は「努力だけが全て」という主張はしません。
かわりに、「知能は不変と思っている人達よりも、知能は努力によって伸びると考えている人達のほうが問題を粘り強く、うまく解決する」と説きます。
同じような才能を持っている人でも、その人生観・信念によって大きな差がでるということなのです。これには「その通りじゃないか……」と納得させられました。

結局、「才能論」にとらわれる人間は、他者との比較でしか人生を見ていないのです。
自分自身の人生でベストを尽くすことこそが人生であると悟れば、努力すれば以前の自分と比べて能力が伸びるということは火をみるより明らかなことになります。

私は本書がきっかけとなって、自分の学びを振り返ることになりました。
会社勤めをしながら、自分が本当に内発的な動機付けから学びたいことは何だろう? と真剣に考えるようになったのです。

私にとって、それは「書くこと」であり、「創ること」でした。小説が書きたかったのです。仕事から帰宅し、毎晩3時間PCに向かい原稿を書き続けました。以前ならば「どうせ才能がないから」と諦めていたことです。
そして書き上げたものを片っ端から、公募に出し続けています。
最初の一年は一次選考すら通りませんでした。二年目は、数本一次選考を通過して誌上に小さく名前が載るようになりました。

そして三年目の今年、初めて最終選考にまでノミネートされるようになりました。
もちろん、落選して今も応募をし続けている身ですが、「努力を続ければ成長する」という「成長型マインドセット」を身に着けることができたように思います。
もちろん、これからも書き続け、挑戦し続けます。
これだけ小説に熱中しているのだから、会社での評価も下がるのかと思いましたが、逆でした。

それは人生対しての見方が変わることによって、仕事に対しての見方も変わったからなのかもしれません。


したいことが見つからない方や行き詰まりを感じている方におすすめ

まずは、自分自身や自分の人生を創造的に生きたい人にお奨めできます。大学に進んだものの何がしたいかわからずに途方に暮れている若い人、就職活動という人生の岐路の前で何を指針に行動すればいいのかわからない人、会社に入ったものの行き詰まりを感じている人にお奨めです。

ビジネスの局面では、自分自身や、部下に「内発的動機付け」ができるようにしたい人も、本書を読むといいのではないでしょうか。結局のところ、偉い人が書いた自己啓発本にあるような教訓によっては、人は動かないものなのです。本書は、形だけではないマネジメントのヒントとなってくれるでしょう。

また、人事などで本当に会社に必要な人間がどんなタイプの人間であるか考えたい人にも本書はお奨めです。今、就職活動は嘘吐き発表会の体をなしています。表面上だけのよさを取り繕う戦略的なだけの人間が増えているのです。そういう時に必要なのが、その人間が本当に内発的動機で仕事に取り組んでくれる人間であるかの見極めです。本書はその助けとなるでしょう。

最後に読んで欲しいのは、人生の意味を獲得したい人です。結局のところ、内発的動機付けというのは、人生の意味と深く関わってくる問題ではないでしょうか? 本当に心から望むことを仕事として行えるということは、人間の人生にとって最も幸福なことではないでしょうか。よりよく生きたい、人生を変えたい、心から悔いのない人生を送りたいという人にこそ本書を手にとって何度も読んで欲しいと思うのです。

thechange.jp

世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?

世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?

  • 作者: ケン・ベイン,藤井良江
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2014/06/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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