ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

海馬 脳は疲れない 池谷裕二 糸井重里

この「海馬 脳は疲れない」は、2017年3月17日に上場した株式会社「ほぼ日」の代表取締役社長でもあり、コピーライターやエッセイストなど多方面で活躍されている糸井重里さんと、現在は東京大学大学院薬学系研究科教授であり、日本薬理学会の理事などもされている、池谷裕二さんとの共著です。

この本では私たちが毎日考えたり行動したり、あらゆることに対して密接に関わっている「脳」について書かれています。池谷裕二さんが脳についての考えや知識を伝え、糸井重里さんの質問によって脳の世界が広がっていくー。二人が言葉のキャッチボールを重ねていきながら、脳の知識の深いところまで私たちに教えてくれる本です。

本書で描かれていることは、私たちが普段考えている脳のイメージを覆すものが多くあります。例えば「三十歳を過ぎてから頭は良くなる」という事実です。
一般的に脳は年齢を重ねていくにつれ、退化していくというイメージがありますが、実はそうではなく、30歳を超えた頃から別の働きが特化するようになるようです。
別の働きというのは、「つながりを発見する能力」です。

つながりを発見するというのは、10代、20代の時につくって壊すことを繰り返した脳が落ち着くようになり、それまでの中でつくってきた脳の中のネットワークが密になっていくということです。知ったその時は関係がないと思った知識も、ネットワークが密になることによって関係性を見つけ出すことができ、論理的にそのつながりを説明できるようになります。

もっと知れ渡っていてもいいはずの知識なのに、全然知られていないのが不思議です。
他にもこんなことが書いてあります。「生命の危機が脳を働かせる」
脳の中にある扁桃体を働かせるうえで、一番活躍させることができる状況は、生命の危機を感じさせる状況です。部屋の温度を少し寒くして冬に備えているような状況にしたり、お腹が空いたりしている時に脳はよく働くようです。
お腹が空いていると能率が下がってしまうと感じ、脳の能力も落ちてしまうように考えていましたが、そうではないんですね。生き延びることを第一にしているから、より脳が活発に働くんですね。
「誤解を招く=魅力」があるという言葉も出てきます。
この本の中では「海馬」という言葉の捉え方が糸井重里さんと池谷裕二さんでは違い、同じ言葉でも受け取る感覚の違い、広さを「誤解」という言葉であらわしています。そしてその誤解を招くことが多ければ多いほど多面的であり、魅力があると本書では書いています。物事の小さなところを見ていますよね。

脳は使えば使うほど良くなっていく


この本を読んで役に立った場所を3か所紹介します。
まず、「センスは記憶である」という点です。センスを磨きたいと思っている人はこの世界に沢山いると思います。そしてこの本では、センスは記憶によってつくられていくと書かれています。
脳がニンジンを認識しようとした時に、ニンジンに反応した神経細胞は一つだけではなく、複数反応したそうです。つまり、情報を組み合わせて脳はニンジンをニンジンだと捉えているのです。
このことから分かるのは、自分の記憶をもとに判断や認識をしているということです。同じものを見ていても、自分が持っている記憶と他者が持っている記憶は違うものだから、それぞれの方法で認識をしているということです。
憧れている人がいるならば、その人の真似をしてみたり、その人が好きな物を買ってみたりすると学習して記憶に取り入れることができるので、まずは真似から始めるのが重要なんですね。

次に、「天才とは、やりすぎてしまう人」というという点です。脳の話とは少し遠ざかってしまいますが、糸井重里さんが手塚治虫さんと宮崎駿さんを天才の例として挙げていました。
手塚治虫さんと糸井重里さんに共通するのは、信じられないほどの仕事量です。
池谷さんが、新しい技術が生まれると、芸術が変化していくことを、ベートーヴェンなどを引き合いに出して説明します。すると糸井さんが手塚治虫さんのことを思い出し、宮崎駿さんのことを思い出します。

「使い尽くされた脳」という言葉を、手塚治虫さんに対して糸井重里さんは使います。一つのものに対して、どこまでもどこまでも力を入れつづけられる、「強烈な動機の塊のようなもの」が、トップクリエイターの根っこにある力だと、糸井重里さんは言います。
天才になりたいのなら、どこまでも続けることのできるものをただただ続けていくことが大切なことのようです。

最後に「言ってしまったことが未来を決める」という点です。脳は常に安定したい性質があります。そのため一度何かを言葉で定義してしまうと、その言葉の定義で固定化してしまうようです。牛の絵を見て、一度その絵に描いてある動物が牛だと認識してしまうと、脳はなかなか他の見方ができなくなってしまうようです。
なのでなるべく、自分のことを悪く言うような言葉は使わない方がいいようです。たとえ冗談で言ってしまったとしても、その言葉に脳は反応して、認識を固定化させてしまいます。「自分はバカだ」と言ってしまうと、脳は本当に自分のことをバカだと認識してしまうので、言葉には気をつけましょう。

 

もう自分を若くないと思っている人へ

この本をおすすめしたいのは、「30歳を超えていて、もう自分を若くないと思っている人」と、「頭が良くなりたい人」です。

30歳というのは、私たちの中では大きなボーダーラインだと思います。20代までは若者という括りがあり、30代はもう若者ではないというイメージがあると思います。

しかし脳という観点で見ると、30代からもまだまだ脳の働きは活発で、いくらでも成長し伸びていくことができるのがこの本を読むと分かります。

暗記ではなく、方法などを記憶している「経験メモリー」は30歳を超えた頃から「つながりの発見」という脳の働きが爆発的に上がっていくそうです。一つの記憶と別の記憶を組み合わせて、新しいものを発明するようなものなんです。

大人になってもまだまだやれることはたくさんあるみたいです。

「頭が良くなりたい人」におすすめしたい理由は、この本の最初の方に、この本をつくったきっかけが書かれています。

本文の中に、「<よりよく生きたい>という思いが<より頭をよくしたい>という思いを生む」という観点があり、この本をつくったと書かれています。

この本文に描かれている「頭がいい」ということは、私たちが普段イメージしている「頭がいい」とは少し違います。その違いのズレを、本書を読んで埋めることが、私たちがそれぞれより良く生きていくためのヒントを得ることになると思いますし、また自分なりの、頭が良くなることへの道を追求できるようになると思います。

今をより良く生きたい全ての人におすすめできる本です。

dot.asahi.com

海馬―脳は疲れない (新潮文庫)

海馬―脳は疲れない (新潮文庫)