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世界大恐慌―1929年に何がおこったか 秋元英一

この本は、経済学博士の秋元英一氏が1999年に講談社から出版し、2009年に講談社から文庫化されました。

この本では、1929年10月にアメリカのニューヨーク株式市場で突如として株価大暴落が発生し、これをきっかけとして世界大恐慌が起こったプロセスを記しています。
とくに、どのような経緯で1929年に向けてバブルが発生し、どのような状況においてバブルが崩壊し、どのような政策対応によって大恐慌からの経済回復を果たそうとしたのかが述べられています。

この本によると、アメリカにおける1929年までのバブル経済生成の要因としては、第一次世界大戦が挙げられています。第一次世界大戦までは、イギリスが世界経済の中心に位置していましたが、戦争によってイギリスは大きく疲弊しました。戦争資金を調達するために、アメリカから多額の借金をし、一気に債務国に転落してしまい、世界における支配権を喪失しました。

 そして、戦争に敗北したドイツは膨大な賠償金債務を背負い、フランスもイギリス同様に多大な人的被害を背負い、疲弊しました。そのなかで、第一次世界大戦後はアメリカが世界における大国としての地位を獲得し始めたのです。アメリカ資本は、戦後荒廃したドイツなどヨーロッパ諸国に進出して利益をあげましたし、アメリカ国内は冷蔵庫やバスルームの開発といった技術革新によって個人消費が増大していきました。

このような状況下で、世界各国からアメリカへ資本が流入し、株価が急上昇していったのです。また、この時期から一般の個人消費は、現金購入だけでなく、分割払いによる購入が可能となり、多くの個人が積極的に借金をして消費を続けたのです。
そのような状況下でアメリカ景気は過熱し、アメリカ政府は景気を冷やすために何度も金利を引き上げましたが、ついに1929年10月、株価が大暴落を開始し、バブル経済が崩壊したのでした。

バブル崩壊後、アメリカのフーバー大統領は景気対策を打ち出しますが、規模が小さすぎましたし、対策を打ち出した時期も遅れ気味となりました。経営が苦しくなった金融機関に対してのみ、金額を限定したうえで融資を実行し、農民に対しても融資を実行しました。しかし一方では、財政の健全度を維持しようとして緊縮財政を実行したのです。これでは、アメリカ景気は回復するはずはありませんでした。
このため、アメリカの景気回復は1933年に就任するルーズベルト大統領のニューディール政策を待たなければなりませんでした。ルーズベルト大統領は、1936年に均衡財政から積極財政への転換を決断し、大規模な財政出動を実施しました。大規模な公共事業を実施し、ダムを建設し、道路を建設し、橋を架けたのでした。大規模な財政出動によって、アメリカはようやく大恐慌の危機を乗り切ったのでした。

マクロ経済の景気動向に対する政策対応を学べる

私は証券会社の子会社で、投資信託のファンドマネージャーを務めています。このため、この本を読んだことにより、どのようなプロセスでマクロ経済がバブル化し、どのようなプロセスでバブル経済が崩壊し、政府のどのような政策対応によって、経済恐慌状態を脱して景気回復への道筋を作り上げていくのかを学ぶことができました。

私のファンドマネージャーという仕事は、株価が安いときに大量に株式を購入し、株価が高いときに株式を売却することによって利益を確定し、投資家に対して収益を分配することです。ですから、どのような経済状況下において、株価が割安な状態となるのかを知ることができましたし、実際に大量に株式を購入することができました。

具体的には、2012年6月頃から東京証券取引所に上場している株式を大量に購入しました。この時期に株式を大量に購入した理由は、そのときの日本政府の経済政策がきわめて、経済成長という観点については消極的であったことが挙げられます。
そして、消費税増税による緊縮財政の方向へ、政策の舵を切っていたことも、当時の株価は底値水準であると判断した理由でもありました。緊縮財政を行うということは、国民の消費意欲の低下に直結するからです。そして実際に国民の消費意欲は低迷していました。また、日本銀行による金融政策も、嫌々ながら金融緩和を継続している姿勢がにじみ出ていました。

私は、政府が経済政策について消極的な態度をとる状況は、国民が容認するはずがないとと判断したのです。きたるべき衆議院総選挙で政権政党が交代し、大規模な財政出動が実施されて景気が回復傾向に向かうはずであると判断したのです。私がこのような判断をくだせた理由は、この本を読み、どのような状況下で経済政策が失敗に終わり、どのようなタイミングで政府の経済政策が転換するかを学ぶことができたからです。

実際に、2012年の年末に政権交代が行われ、大規模な財政出動と金融緩和が実施されました。おかげで、私が運用を担当している投資信託では、2015年の前半の時期に、保有していた株式を大量に売却することができました。そして、大幅な利益を獲得することができたのです。

2017年4月現在では、世界のなかで最大の経済規模を誇るアメリカ経済の成長プロセスは長期化しており、景気循環論的に考えても、いつ株価が暴落しても不思議ではありません。アメリカ経済が不調となれば、日本経済も不調となることは容易に想像できます。そのため、現在は次の株価の底値圏をひろうべく、株式の保有割合を大幅に減らして買いタイミングをはかっているところなのです。私がこのような冷静な判断をくだせるようになったのも、この本のおかげです。


金融関係や金融政策の実務したい方におすすめ

この本は、私と同様にファンドマネージャーとして仕事をしたい方、あるいは政治家となって日本国の経済政策を運営したい方、または財務省の役人となりたい方などにお勧めできる本です。

国会議員などの政治家は、日本国の経済成長の舵取りを担う人々です。ですから、どのような経済政策運営をすると、日本経済は収縮してしまい株価が大幅に下落してしまうのかを学んでいただきたいと思います。また、どのような経済政策を発動すれば、日本経済は活気を取り戻して株価も上昇していくのか勉強していただける本だと思います。

財務省の役人になりたい方は、この本を読むことによって、消費増税だけを考えるということは、日本経済を緊縮化させることにつながってしまうということを、ぜひ学んでいただきたいと思います。年金財政などの社会保障財源を増やすためには、消費増税以外の手段が必要なのだということを、この本を読むことによって学んでいただきたいのです。

おそらく、人口減少社会の日本において、消費増税を実施するということは、個人消費支出を減少させ続ける効果しか生まないと思われます。そのため増税をしても、増税した分の税収増を得られないことにつながるのです。この本を読めば、増税しても、税収増につながらないことに気がつくと思うのです。ですから財務省の役人の方には、税収増を達成するための他の方法を検討していただきたいと思うのです。

そして、私と同様にファンドマネージャーを目指したい方へは、株式投資というのは買うタイミングが重要だということです。買うタイミングというのは、政府が経済政策について力を入れていなかったり、緊縮財政に力を入れてしまっている状況のことをいうのだということを、この本から学んでいただきたいと思います。

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世界大恐慌――1929年に何がおこったか (講談社学術文庫)

世界大恐慌――1929年に何がおこったか (講談社学術文庫)