読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

相手に「伝わる」話し方 池上彰

1950年長野県松本市生まれ。慶應義塾大学卒業後、1973年NHK入局。2005年までの23年間、報道記者といて、様々な事件、災害、消費者問題、教育問題などを担当。1994年から2年間は、「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、現在はフリージャーナリストとして活躍。書著に「わかりやすく伝える技術」「わかりやすさの勉強法」「伝える力」「知らないと恥をかく世界の大問題」などを執筆した池上彰。彼が自身の経験談から綴って、伝えるという力に注目して執筆した「相手に伝わる話し方」という一冊です。

彼は、経歴上30年という長い月日に渡って、「人に情報を伝える」という仕事に従事してきました。うまくいかずに悩んだり苦しんだり、絶望したり、という日々でそれでもたまにはうまくいくこともあって、その時の達成感はやはり格別だそう。そんな伝えるスペシャリストである彼が、人にものを伝えるとき、いつもどんなことに気をつけて伝えているのか。彼の今までの失敗談を織り交ぜてこれ以上ないほどにわかりやすく解説されています。私たちは普段人とコミュニケーションを取るとき、このようにしたらわかりやすく伝えられるということを意識して意思疎通を図ろうとはしません。でも、報道関係の職業の人たちはそうではないということを思い知らされます。


特にキャスターであった池上彰氏は、お茶の間の目の前で、今日あったこと、これから起きそうなことを老若男女にわかりやすく説明しなければなりません。つまりそれは私達が普段持たないような視点に立って、どこをどれくらい説明すれば誤解のないように、かつ完結に、正確に伝えられるかということを考えるということです。それはきっと大変な労力で、壁も多いはずですが、その課題に長年チャレンジしてきた池上彰氏。氏よりもわかりやすい説明をする人は現在いないのではないのでしょうか。

その氏が試行錯誤で身につけた。「話し方、伝え方」の基本。それはやはり常に相手の立場に立ってちゃんと伝わるかどうかということを考えることでしょう。そして注目すべきなのは、こどもに対してもわかるような説明であるべきだという方針です。
氏はこう考えます。子供に誤解を招いてしまうような説明であれば、それは説明する側にこそ問題があると。歴史、宗教、思想などの社会問題に対する説明を子供にもわかるように説明することは非常に困難だと思われます。しかし、伝えるということが仕事である以上、氏はその点について妥協を見せません。

言葉にすることで考えを整理し、常に具体的に伝える

ある時週刊こどもニュースという番組で池上氏はパレスチナ問題について説明しました。その説明を受けた子供たちはパレスチナにユダヤがイスラエル国家を建設して以来の中東戦争の歴史を「それって、子供の喧嘩みたい」と一言。氏はこの時愕然としたそうです。思わず「遠く日本から見ていると、そう思うかもしれないけど、この人達は自分のトチやしんじる宗教を守るために命がけなんだから、そういう言い方は良くないと思うよ」と反論したそうです。思わず反論しながらも、宗教、民族、土地をめぐる争いは、日本の子供にはなかなか理解できないものなのだなと考えさせられたようです。

しかし、考えていくうちに、子供にこのような反応をさせてしまう、説明のほうに問題があるというふうに考えるようになりました。まるで、パレスチナ問題を子供の喧嘩であるかのような印象を与えてしまう説明であったなら、それは、説明が不十分であると思い始めました。氏は深い反省にとらわれ、しばらくは落ち込んでいたといいます。

まだ大人に比べて、経験則も、学も少ない子どもたちに、大人の世界の問題を伝えるということは非常に難しいことです。普通に私達が会話し、伝えあっていることでも、子供にはわからないことだらけでしょう。その人にとって未知のものを伝えるということは、説明を一から組み立てて伝えるということでもあります。その作業はエネルギーも作業も多く非常に手間取ることです。全年齢向けの説明など無理だと諦めてなあなあしまう人もいるでしょう。

しかし氏はそれを妥協しません。伝えるという仕事に従事しているものとしての使命感、氏の仕事に対する熱意や思い。妥協をゆるさなく自分に厳しい氏の性格が現れたその姿勢は、私たちは見習わなければならないでしょう。その氏から生まれた、伝えるテクニックもこの本には記載されています。まず、「優しく伝えるということはどういうことか。無理な話題作りは空振りするということ。手垢のついた表現は何も語っていないのと同じ。会話には人柄がでる。言葉にすることで考えを整理し、常に具体的に伝えるということ」などなど。

私がこの中で一番共感できたのは「手垢のついて表現では何も語ってないのと同じ」ということでした。物事をよく分かっていない人こそ的確な説明ができず、本質でないところを説明することがあります。そうして本質からずれた部分を表現することばかりうまくなって、しかし中身はすっからかんの説明というのはどこの分野にもあるものだなということを実感しました。


わかりやすい説明をすることを求められる営業職におすすめ

物を相手に伝えるということは難しいです。伝えるということに関してオールマイティーと呼べるものはないのかもしれません。というのも、相手や、周りの状況が変わることで伝わる意味というのは変わるからです。その相手や周りの状況というのは無数にあることでしょう。したがって、その状況における正解はあっても、次の異なる状況においては同じものが通用しないのです。

例えば営業職の父親が、仕事を終えて、家に帰ったあと、自分の息子に対してセールストークしていたらおかしいと思うでしょう。また、生徒が校長先生にタメ口で話していると少し変でしょう。
そして小学生に、大人に話すときと同じような話し方では通じないでしょう。

単に伝えると一言にいっても、万事通用するような方法はないのです。
だから伝えるということは面白い。自分の表現したいことが相手に伝われば、やはりとてもうれしいのです。伝えた内容がなかなかきわどいところを攻めていればいるほど嬉しさは倍増することでしょう。

この伝えるということに特化した本は、人間から人間に言葉を伝えるという状況であれば、どの分野にも役立つ内容になるでしょう。特に情報を伝える、さらにいえば相手にとって、未知の情報を伝えるということであれば、非常に役に立つのではないかと思われます。
なので先方に明確かつ、わかりやすい説明をすることを求められる、営業職の人などは一読し、池上氏の方針に触れることで、なにか自分の中にインスピレーションが沸き起こるかもしれませんね。

book.user-re.com

blog.imalive7799.com

相手に「伝わる」話し方 (講談社現代新書)

相手に「伝わる」話し方 (講談社現代新書)