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マネーの進化史 ニーアル・ファーガソン

この本は、アメリカのハーバード大学で歴史学の教授を務めるニーアル・ファーガソン氏が書いた本です。マネーがどのような経緯で生まれ、貨幣として発達し、歴史的にどのような経緯をたどって膨張してきたかを解き明かす内容となっています。

この本では、まず貴金属の価値から述べています。もともと人類は、狩猟によって魚や動物を獲得し、自らの生命をつないできました。あるいは物々交換によって、自分が欲しいものを入手し、生活をしてきました。このため、この時点での人類は、自らの資産を蓄える手段は持ちませんでしたし、他の物品と交換する手段には制約がありました。

しかし、貴金属の発見によって、人類の経済社会は一変することになったと著者は述べています。貴金属の発見によって、人類は貨幣を鋳造することが可能となりました。

貨幣は、物品を取引するときの仲介手段であり、勘定の単位ともなり、計算が容易となります。そして貴金属で作られた貨幣ならば、価値は一定不変であり、長期間にわたって通用しますし、遠く離れた土地でも使えます。あるいは資産を蓄える手段ともなります。

貨幣の誕生が、経済社会の発達に大きく寄与したことは疑いがないと述べています。それと同時に、貴金属を産出する土地をめぐって戦争が発生した歴史を述べてもいます。なぜなら貨幣を用いた貿易などの取引量が増えれば増えるほど、貨幣が不足するからです。このため、貴金属を算出する土地を目指して軍事侵攻を行う国家があとを絶たなかった事実を指摘しています。

しかし、次第に貴金属の産出量は限られ、さらに、貴金属の価値は一定不変ではないことが世界中で認識されるようになったと述べています。経済規模が拡大するにつれて、貴金属の量だけでは経済活動を支えることが困難となったことから、各国の銀行は紙幣を発行するようになったと述べています。また、銀行業が発達したことも、経済の拡大と、マネーの流通量増大に大きく寄与していると述べています。

そして、現代に至るまで、さまざまな信用創造がなされており、歴史的にはバブル経済が発生したあと破裂して経済が収縮し、再び別の形で信用創造手段が見いだされてバブル経済が発生しては、再び破裂して経済が収縮することの繰り返しであると著者は述べています。バブル崩壊の解決方法は、新たな信用創造によるマネー膨張なのです。


金融の歴史から今日の金融市場を学べる

私は証券会社の子会社である運用会社で、ファンドマネージャーを務めていますので、この本を読んでマネーの歴史と、マネーが膨張してきた経緯と理由を学ぶことができました。基本的には、不景気になるたびに貨幣を増やしたり(現在でいう金融緩和)、新たな金融手段や金融技術を開発したことによって信用創造を実施したことが、マネーの流通量が膨張した要因なのだと学ぶことができました。

そして、古代メソポタミア文明の時代にすでに「ローン」という仕組みが存在したことに驚きました。さすがに、この時代には信用取引は存在しませんが、貸し借りが制度化されていたことを知り、大変驚きました。それに、13世紀のイタリアの都市国家においては、利子をつけて資金を貸し出す行為が行われていたことや、1400年代にはメディチ家が商取引の手段として為替手形を利用していたり、現金化の手段として手形を割り引く行為がされていたことを学ぶことができました。

また、17世紀の初頭には、のちにイギリスの中央銀行となるイングランド銀行が発足し、しだいに独占的な貨幣の発行権限を持つに至ったり、銀行のなかの銀行という位置づけとなっていくプロセスを学ぶことができたことは大きな収穫でした。
この本を読むと、歴史の進展とともに、貨幣(マネー)の流通量が増大していくことが理解できました。その要因は、経済活動の活発化であったり、世界的な貿易量の拡大であったり、深刻な不況、ときには戦争にともなう大規模な資金調達であることを学ぶことができました。中世のイタリア都市国家から現代にいたるまで、政治や経済が苦境に陥ったときは「信用の拡大」が一貫した解決手法なのだと学んだのです。

そして、私はこの本を読んだことにより、ファンドマネージャーとしての判断力に磨きをかけることができました。具体的には、2015年の8月にチャイナショックという名の株価暴落が発生しましたが、私は中国政府が必ず景気対策を打ち、中国の中央銀行が金融緩和を実施するだろうと判断することができました。そして、私は2015年9月には果敢に暴落した株式を次々に買いを入れて、同年12月には大幅な利益を得ることができたのでした。

金融政策の作成・解説に携わる人に読んでほしい

この本は、ぜひ与野党を問わずすべての政治家に読んでいただきたいと思います。また、新聞社やテレビ局の記者の方たちにも読んでいただきたいと思います。
金融が、国政運営の中軸に位置するのだということが、この本を読んで理解いただけると思います。歴史的にマネーは膨張し続けるという前提認識に立つと、現代社会において「財政再建」や「プライマリーバランス」が重視されることには疑問を抱いてしまいます。
この本を読めば、財政再建やプライマリーバランスを重視するよりも、日本経済を拡大することに注力することが的確な政治判断だと思いますし、国政運営としては重要ではないかと思います。

新聞社やテレビ局の方からは、国家財政を一般家庭の家計簿の管理と同等に認識している雰囲気を感じるのですが、それは大いに違うと思います。政府の経済政策や金融政策、それに税制変更を実施することによって経済活動を活発化させて、税収を増やすことができるのです。それによって、国家財政を健全化させることができるのです。ですから、この本を読んでいただき、第一に注力すべきは経済活動を活発化させてマネーの流通量を増大させることが重要だと思った次第です。

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マネーの進化史

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