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ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

人を動かす人になれ! 永守重信

著者の永守重信氏は、28歳で日本電産株式会社を創業し社長に就任、その後積極的な企業買収を国際的に展開し会社を急成長させてきた人物です。日本のカリスマ経営者の一人として注目されており、多くの企業経営者や管理職に影響を与えています。本書では、永守重信がゼロから企業を立ち上げた時からの実際の経験に基づく言葉によって、人材をどのように採用・育成し動かしていくかが語られます。

 

 序章から最後の10章までどのような本なのかを章別に見ていきましょう。

序章「『一番以外はビリと同じ』と考えろ!」では、人材論の前提となる永守氏の経営哲学が語られます。
1章「『人を動かすのがうまい人』のこのやり方」では部下を持つ人間の心構えが語られます。
2章「指示の出し方ーー何をどう話すか」では、「人望を得るために絶対必要な五つの条件」など指示を出すときの原則や手順が説明されます。
3章「叱り方、褒め方①ーー人を動かすこのノウハウ」では、人のやる気を引き出し行動させる叱り方や褒め方が紹介されます。
4章「可能性を秘めた人間を見抜く、育てる」では、ハングリー精神を持った人材の見分け方などが紹介されます。
5章「女性、中途採用ーー相手によって手法を変えろ!」では女性や中途採用者ならではの人材育成上のノウハウが説明されます。
6章「叱り方、褒め方②ーー”部下”を動かすこのルール」では、「5万円の損害だからこそ、5億円分叱れ」など、効果のある叱り方を中心に語られます。
7章「理屈で人は動かない”だからーー」では、繰り返し指導して社員の意識を変えることの重要性とその方法が説明されます。
8章「リーダーの敵は、妥協である」は、リーダーは企業業績、自分、部下すべてのおいて妥協してはならないと説きます。
9章「組織を動かす人が絶対に知らなければならない『考え方』」では、人材育成で陥りがちな落とし穴と対処法が説明されます。
10章「一回でダメなら、二十回続けよ」では、部下育成は全人格をかけて取り組むべきものであることが語られます。

このように、人材育成や採用など人を動かしていくノウハウがケース別などに分類されて語られています。


真摯に仕事に取り組む姿が人を動かす

本書を読むと、なぜ永守重信氏が起業に成功し、さらに買収した起業を次々と成長させていくことができたかが理解できます。会社を興した時は零細企業ですから、一流大学卒のような学力のたかい人材を雇うことができません。そこで永守重信氏は、学歴が一流でなくてもポテンシャルのある人材を採用し、彼らを徹底的に指導・育成することで人材を育ててきました。とにかく指導・育成への情熱は徹底しています。失敗したり怠けたりする部下は徹底的に何度でも叱り、成果を出した部下やがんばった部下は徹底的に褒めます。

しかも、叱り方や褒め方は、対象の部下の性格や、その部下がやったことに応じてきめ細やかに調節します。こうして社員は、こっぴどく叱られても腐ることなくかえってやる気を増し、褒められても天狗になることなく更に精進します。永守重信氏は世界中を飛び回り、各地の企業でこの人材採用と育成を徹底するこことで、世界的起業グループを作り上げたのです。

本書を読むことで、部下を育てるということは、小手先のテクニックで成し遂げられることではないということを、腹の底から理解することができます。まず自分自身が人間として真摯に仕事に取り組み、その姿を部下に見せる。そして部下と人間同士として真っ正面から向き合うことで、部下の育成が可能となります。仕事で苦楽を共にし、酒の席で本音を語り合うことで、本当の信頼関係が築かれていきます。部下を育て動かすということに対する意識を改革できたことが、本書を読んだことによる大きな収穫でした。

また本書中にある「『求められる人材』ーー五つの究極的条件」は、部下に求める究極の条件であると同時に、自分自身の人材レベルを計る上でも究極的な条件だと思います。以下が永守重信氏による五つの究極的条件です。

リーダーとしてレベルアップしたい人は必読

先ほど述べたとおり本書では、人材マネジメントの小手先のテクニックは書かれていません。そのような本を望む人は、他の学者や(元)コンサルタントが書いたコーチングやモチベーションアップ、人事評価スコアカードなどに関する書籍を読むべきでしょう。

そのような枝葉末節でなく、もっと自分の背骨や内蔵の段階からからリーダーとしての自分をレベルアップさせたい、根本的に改革したいと真剣に望む人々が読むべきなのが本書です。

また、このレビュー記事を読んで、「永守重信氏の日本電産とグループ企業は単なるブラック企業だ。社長が社員を洗脳してモーレツに働かせて業績を拡大しているだけだ」と思われた方もおられるかもしれません。その指摘はある意味当たっていると言えます。しかし、そのように思われた方々にこそ本書を読んでほしいと思います。

たしかに、永守重信氏の「何が何でも一番にならなければならない」という思想は非常に強烈で、「人生と仕事のバランスを取りたい」「仕事では、適切なレベルだけ会社に貢献して適切な報酬がもらえればそれで良い」と考える人にとっては受け入れがたいほど仕事会社至上主義思想です。

しかしながら、企業間競争が激しくなることはあっても甘くなることは絶対にないのが今の世界の現状です。「一番にならなくても良い。会社がつぶれさえしなければそれでよい」と社員が考えている会社はつぶれてしまうのがこれからの世の中です。一番を目指して切磋琢磨する企業だけが存続できるのです。であれば、そのような世界と向き合い、一番を目指しながら顧客サービスを徹底することで、自分が属する企業がたとえ一番になれないとしても、存在価値のある企業として生き残ることが、結局は自分の幸せにつながります。ライフバランスの充実を目指しても、その結果会社の業績が中途半端でつぶれてしまっては、ライフバランスもへったくれもあったものではありません。

真摯に仕事に取り組み充実した会社人生を歩みたいと望む全ての人が読むべき良書です。

toyokeizai.net

「人を動かす人」になれ!―すぐやる、必ずやる、出来るまでやる

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