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ビジネス書籍ユーザーレビュー

ビジネス関連書籍の紹介日記です

昭和恐慌と経済政策 中村隆英

この本は、東京大学の教授を務めた中村隆英氏が書いた本です。昭和42年に出版した「経済政策の運命」という本が底本となっています。

この本では、第一次世界大戦における日本経済の好景気から、昭和初期に発生した金融恐慌に至るまでの日本政府および日本銀行がとった金融政策を、ときの大蔵大臣である井上準之助を通じて描いています。井上準之助は、為替変動の安定化を目指して金輸出の解禁を断行しますが、それは緊縮財政とワンセットの政策でした。

 ところが、不景気の時期にこれを実施したため、日本経済は未曽有の大不況に突入してしまいます。日本政府は不況から脱出するために高橋是清大蔵大臣が、再び金輸出の再禁止を決断し、金利を低めに誘導して円安誘導を図り、さらには財政出動を行ってようやく日本経済は不況から脱出することができたのでした。

この本を読むと、戦前は世界各国において金本位制が採用されていたことがわかります。そして日本政府では、日清戦争において勝利し、賠償金として約3億6000万円を受け取ることができたことから、これを元手に金本位制を採用したことがわかります。しかし日露戦争においては、日本政府は戦争を遂行する資金を外国の投資家から求めたため、日本円は安くなる一方でした。外債を発行し続け、外債を償還するために、さらに外債を発行する有様でした。日本国内に余剰資金は存在しなかったのです。

ところが、第一次世界大戦においてヨーロッパ各国が戦争に資源を費やしている間に、日本は世界の市場を独占し、輸出で大儲けします。一気に世界有数の債権国に躍り出たのです。そのとき、大正6年に日本政府は金輸出を禁止しました。諸外国が金輸出を禁止したため、日本から金が流出することを恐れたためと言われているようです。

しかし、第一次世界大戦が終了すると今度は不況がやってきて、日本は輸入超過となり自然と金が流出することとなりました。

おまけに、不景気となっても消費者物価が下落しない原因は、金輸出を解禁しないために通貨の流通量が膨張したままであるからだという議論が国内で主流となり、ついに昭和4年に金輸出を解禁し、それが引き金となって大不況へ突入したのでした。この本を読むと、金本位制の弊害を感じ取ることができます。

現在へも通じる戦前の金融政策

この本は金本位制を主題としていますが、全体としては、大正から昭和初期にかけての日本経済と金融政策について描かれています。
私は証券会社の子会社でファンドマネージャーを務めていることもあり、この本を興味深く読むことができました。

そして、日本政府や日本銀行が経済政策に力を入れているときには日本経済は上昇トレンドに乗り、日本政府や日本銀行が緊縮政策をとるようなこととなると日本経済は下落トレンドに一気に陥ってしまうのだと、理解することができました。つまり、これは現代社会においても同じです。

現在の安倍政権は、日本経済をなんとしても軌道に乗せようと、日本銀行の金融政策をフル活用して政策発動を続けています。大規模な金融緩和政策を継続し、為替は円安基調を維持するようにして輸出企業が利益を得られるようにし、さらには緊縮財政に陥らないように消費税増税を延期しました。個別の企業には毎年賃上げを要請しています。

このように、ときの政府が経済政策に力点を置いているときには、私たちファンドマネージャーは、安心して株式に資金を投ずることができるのだと確信を得られたという点で、この本は役に立ちました。この本のおかげで、一時的に株価が下落したときは安心して株を買い増すことができました。

一方、2009年から2012年まで政権を担当した民主党は、経済政策については力点を入れませんでした。さらには、財政均衡に力を入れて消費税の増税を決定しました。つまり緊縮政策です。

ですから、いま振り返れば民主党政権の時代には、日経平均株価が上がらなくて当然であったと認識できます。当時の日本銀行総裁は嫌々ながら金融緩和を実施している様子を隠そうともしませんでした。

そして民主党政権の首脳たちも、景気浮揚のために財政出動をしようとは考えようともしなかったのです。為替も1ドル80円台という超円高水準を税制しようともしませんでした。これでは、株価は上昇しません。

このため、私のようなファンドマネージャーは二度と経済政策に消極的な政権選択をしてはならないと、この本を読んで学ぶことができたのでした。

株式投資をしているや株式投資を検討中の人におすすめ

この本は特に株式投資をしている人、これからしようと思っている人には役立つと思います。また株式投資をしていない人にも役立つ内容も随所にありました。

まず株式投資をしている人にとっては、独自の手法が上手くいかなかったり、結果に満足していなかったりする人がどうして上手くいかないかを見直すために役立つからです。

疑問点を考えもせず、ただ闇雲に突き進むほど無謀なことはないので、ぜひ読んでほしいと思います。

これからしようと思っている人にとっては、どんな投資手法にしようか悩んでいる時、また株式投資で転んだ時にどうやって立ち直るかのバイブル的な本になると思います。自分の手法を模索していく上で欠かせない一冊となるでしょう。

株式投資をしていない人にとってこの本は、すべての物事を感情的にではなく根拠を持って行え、ということを教えてくれる本です。もしも人生でなにかに迷った時や、もう少しで上手くいきそうだなと思った時に、ふとこの本を読んでいただければ、良いアイデアが浮かんでんでくると思うのでぜひ読んでほしいです。

www.goodbyebluethursday.com

昭和恐慌と経済政策 (講談社学術文庫)

昭和恐慌と経済政策 (講談社学術文庫)