読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ビジネス書籍紹介日記

ビジネス関連書籍の紹介日記です

歴代日本銀行総裁論 日本金融政策史の研究 吉野俊彦

金融書籍

日本銀行の理事、そして山一証券経済研究所の理事長を歴任した吉野俊彦氏が書いた本です。なお講談社学術文庫版では、近年の日本銀行総裁について日本銀行の理事と野村総合研究所の理事長を歴任した鈴木淑夫氏が捕捉を記載しています。

 この本は、1882年に日本の中央銀行として日本銀行が創設されて以来、初代の吉原総裁から現任の黒田総裁までの歴代総裁を紹介することを基礎においています。そして、歴代総裁によって実施された金融政策を紹介しながら、明治初期から現代までの日本経済の変遷と、それに対して日本銀行がどのような対応をとってきたかを詳細に解説しています。

ただし、鈴木淑夫氏が捕捉として記載しているおよそ過去20年間の総裁については評価を断定するのは早いとして、詳細な記述は避けられています。

この本には、明治時代においては日本政府は資金需要は旺盛であり、陸軍や海軍を増強する必要がありましたし、鉄鋼業や電力、鉄道事業に対する設備投資を大規模に実施する必要があったと書かれています。

ところが、まだ農業が中心産業であった江戸時代から20年程度しか経過していないため、日本政府は税収不足に苦しみ、なおかつ民間においても資本が乏しい状況が続いていたため、政府は資金不足に悩まされました。このため、現代社会では禁断の手法とされていますが、明治時代においては日本政府が発行する国債をそのまま日本銀行が引き受けることによって政府の資金需要を満たす政策が実施されていたと記しています。そして、日露戦争のときには外債を発行し、海外から戦争資金を調達したのです。

また、同じような政策は陸軍が事実上政権を握っていた第二次世界大戦の末期においても実施され、日本政府は際限なく戦時国債を発行し、それを日本銀行が引き受けた結果、国内経済はインフレが進んだと、この本は記しています。経済政策や金融政策のうえではでたらめな運営が行われていたのです。

なお、この時期は事実上日本銀行は主体性を喪失し、大蔵省の下部機関のような存在であったと著者は述べています。
戦後の日本銀行は金融政策運営において主体性を取り戻し、一万田総裁に至っては「法王」の異名さえ持ちましたが、あまりの独立した政策運営について政府側が懸念を示し、その結果、歴代の日本銀行総裁は日本銀行の生え抜きと、大蔵省の出身者が交代で就任するようになったと、著者は述べています。

日本銀行が実施している金融政策の歴史を学べる

私は証券会社の子会社でファンドマネージャーを務めていますので、日本銀行の金融政策については敏感です。そのため、一度日本の金融政策の歴史を学びたいと考え、この本を読んでみました。

この本を読むと、日本銀行が実施している金融政策は、明治時代も現代においても、政策を発動するにあたっての基礎的な判断基準と、金融政策の手法については変化はないことに気がつかされました。

例えば、日露戦争が終了したあとは景気が盛り上がり、一般国民は消費を増やし、住宅購入などに積極的になり、これを受けて民間企業は積極的に銀行からお金を借りて設備投資を増やしました。

その結果、物価や土地の値段が高騰したり、株式市場の株価が高騰しました。この状況を受けて、日本銀行は資産価格や物価の高騰を抑制するために金利を引き上げる対応をとっています。

そして、次第に景気は落ち着きを見せますが、今度は国民の消費意欲や投資意欲が減退してしまい信用バブルが崩壊して今度は不況に陥ってしまいます。
すると日本銀行は、不況対策をするために金利を大幅に引き下げています。金利を引き下げれば、企業は低金利でお金を借りることができますから再び設備投資意欲が出てきます。そのため、景気は回復傾向に向かいました。

私はこの本を読んで、基本的にはいつの時代も、金融政策の運営は同じなのだと気づかされました。景気を拡大させるために低金利政策をとるのは現代社会だけではなく、昔から実施されており、日本銀行の政策は一時期を除いては失敗したことはないことを学びました。

そして、私は株式を運用するファンドマネージャーという立場として、日本銀行が低金利政策をとっている間は、基本的には株式を買うという判断をしていれば間違いないと確信しました。そのおかげで、2013年4月に実施された大規模な量的金融緩和のときには迷うことなく株式を購入し、利益を挙げることができましたし、2014年10月に大規模な追加緩和が実施されたときにも、迷わず株式を買って利益を挙げることができました。

国会議員の先生方におすすめ

与野党を問わず、国会議員の方に読んでいただきたいと思います。つまり、日本経済がどのような状況に陥ると金利を調整する必要があるのかということを、この本を読めば理解できるからです。

そして、いつの時代でも金融政策の手法は同じなのです。国会議員の方は、防衛政策の専門家や、福祉の専門家や、税制の専門家などはいらっしゃるのですが、金融政策を理解されている方は少ないと思います。

このため、国会での審議を見ていると、不景気下における金融緩和政策が間違っていると指摘する政治家がいると、腹立たしく感じることさえあります。国会議員の方には、ぜひ金融政策について理解を深めていただきたいと思います。

そして、新聞記者やテレビ局の記者の人にも、この本を読んでいただきたいと思います。マスコミの記事を読むと、日本銀行が国債を購入しすぎると大変だという論調が多すぎると感じますし、これでは金融政策の本質を踏まえた記事になっていないと感じます。この本を読んで金融政策の歴史を学び、そのうえで記事を書いていただきたいと思います。

歴代日本銀行総裁論 日本金融政策史の研究 (講談社学術文庫)

歴代日本銀行総裁論 日本金融政策史の研究 (講談社学術文庫)